初版発行日 2015年5月17日
発行出版社 双葉社
スタイル 長編
私の評価
昭和20年八月十五日に、厚木基地から飛び立った銀河11型機が、事件の引き金になった!?十津川警部がせまる70年前の真実!
あらすじ
カメラマンの柳下久仁子が自宅マンションで殺害された。被害者は、浜名湖にまつわる終戦の日の出来事を取材しており、部屋からは野中誠太郎という人物の名刺が発見される。十津川と亀井は、当時の資料を持っているという野中に会いに浜松に向かった。そこで、終戦の日に起きたさまざまな出来事や秘話をきき、十津川警部が70年の時を経て、隠されていた真実を暴く!
小説の目次
- 爆撃機銀河を知っていますか?
- ある飛行隊長の話
- 狙撃
- 8・15の記憶
- 臥薪嘗胆
- 引き揚げ
- 終章再び
冒頭の文
甲州街道の代田橋あたりから、少し奥に入った、目立たないところに、五階建ての小さな古いマンションがある。名前はコーポ代田橋である。
小説に登場した舞台
- 浜松駅(静岡県浜松市)
- 浜名湖(静岡県浜松市)
- 舘山寺温泉(静岡県浜松市)
- 掛川駅(静岡県掛川市)
- 御前埼(静岡県御前崎市)
- 甲府駅(山梨県甲府市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 柳下久仁子:
35歳。カメラマン。自宅マンションで死体となって発見される。 - 野中誠太郎:
90歳。静岡県浜松市に在住。柳下久仁子に手紙を書いた男。 - 藤堂勝:
御前埼にある藤堂家の当主。 - 酒井大:
酒井中尉の兄の孫。北海道でサラリーマンをしている。 - 小菅良:
甲府市内で食堂を営む。小菅敬の弟の孫。 - 三田恭次:
三田慎太郎の親戚の孫。長野で両親とりんご園を営む。 - 大川孝:
91歳。銀河11型機引き揚げ委員会の委員長。
その他の登場人物
- 木村満:
カメラマン。柳下久仁子の友人。 - 野中恵美:
野中誠太郎の孫。 - 三浦:
科研の技官。 - 吉田:
T出版の編集者。 - 小田:
O大学の准教授。
印象に残った名言、名表現
■終戦記念日と、実際の終戦日は違う。
「八月十五日は、ご存知のとおり、日本では終戦の日ということになっておりますが、実際に戦争が終わったのは九月二日ですから」
感想
西村京太郎先生は、戦前の生まれである。太平洋戦争を経験している。
だから、太平洋戦争に対する思い入れはもちろん、その実感が強いのだと思う。この部分について、戦後に生まれた世代には、肌感覚で理解できない部分である。
実際に経験した者と、経験したことがない者には、大きな差があり、隔たりがあると思うのだ。
本作は、昭和20年8月に起こったことに、フォーカスが当てられた作品である。
昭和20年8月15日の玉音放送の後も、戦争を続けようとする者たちがいた。彼らは厚木基地から爆撃機で飛び立っていったが、一部は浜名湖に墜落してしまった者たちもいた。だが、墜落したはずの爆撃機は、まだ湖から発見もされず、引き揚げられていないのだ。
これは事実か否か?この裏にひそむ謎を、十津川警部と亀井刑事が解き明かしていく、ストーリーである。
中身は少々、マニアックすぎる感じがするが、太平洋戦争の日本について、重厚的な事実を知りたい、という方ならば、興味深く、読みすすめていくことができるだろう。逆に、興味がない人にとっては、苦行とも言える内容である。
ちなみに、本作と同じく太平洋戦争の終戦時の日本にフォーカスを当てた作品として、2015年に刊行された「八月十四日夜の殺人」がある。
いささか難解でマニアックな本作「浜名湖 愛と歴史」に比べると、「八月十四日夜の殺人」のほうが、読みやすく、わかりやすい内容になっていると思う。
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