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十津川警部捜査行「東海特急殺しのダイヤ」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

東海特急殺しのダイヤ小説

初版発行日 2009年5月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 短編集

私の評価 4.0

POINT】
愛する女性にかけられた疑惑。そのアリバイはわたしが証明できる……。ミステリー短編集!
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あらすじ

1.愛と死の飯田線

被害者は寝巻姿のまま、背後から十カ所以上刺されて殺されていた。現場の状況から犯人は女性ではないかとも思われた。捜査の過程で浮かび上がってきたのは二人のOLだった。しかし、その二人には鉄壁のアリバイがあった。だが、他に容疑者は見つからない。十津川警部は、二人のアリバイを崩そうと、執拗な捜査を続けた…。

2.見知らぬ時刻表

亀井刑事は、非番の日に妻と息子をつれて後楽園に訪れた。帰りに訪れた水道橋の喫茶店で、息子の健一が数字が羅列されたメモを見つける。それは時刻表が書かれたメモだったことがわかる。その後、沼津駅近くのラブホテルで銀座のホステス殺害事件の知らせを受ける。亀井刑事が見つけた時刻表メモが示す意味とは?

3.幻の特急を見た

池袋駅近くのマンションに住む宝石商の山本勇一郎の惨殺体が発見された。殺された山本は妻と別居中で、同じマンションで若くて美男子の個人秘書・星野和郎と一緒に暮らしていた。犯人は妻の明子か、秘書の星野とにらんだ十津川は、捜査を開始する。幻の特急「ひばり」が、アリバイのカギを握る!

4.イベント列車を狙え

元エリート商社マンで、現在は小さな運送会社に勤務する井村透は、自分を騙して1千万円を借金を作り逃げだした元恋人の森口ゆかりを恨んでいた。ある日、謎の女からか電話があり、ゆかりは整形して顔を変え、名前も「原口みや子」と変えているという。また同じ女から電話があり、ゆかりが男とイベント列車「伊勢路」に乗るという話を聞いたため、井村は同じ列車に乗る。が、井村は殺人犯に仕立て上げられてしまう……。

5.恨みの浜松防風林

短編集「恨みの三保羽衣伝説」に収録。下記を参照↓↓

→「恨みの三保羽衣伝説

小説に登場した舞台

1.愛と死の飯田線

  • 松本駅(長野県松本市)
  • 諏訪湖(長野県岡谷市&諏訪市&下諏訪町)
  • 辰野駅(長野県・辰野町)
  • 宮木駅(長野県・辰野町)
  • 伊那市駅(長野県伊那市)
  • 天竜峡駅(長野県飯田市)
  • 天竜峡(長野県飯田市)
  • 本長篠駅(愛知県新城市)
  • 豊川駅(愛知県豊川市)
  • 豊橋駅(愛知県豊橋市)
  • 京都駅(京都府京都市下京区)
  • 清水寺(京都府京都市東山区)
  • 金閣寺(京都府京都市北区)
  • 京都御所(京都府京都市上京区)
  • 南禅寺(京都府京都市左京区)
  • 警視庁本部庁舎(東京都千代田区)

2.見知らぬ時刻表

  • 後楽園(東京都文京区)
  • 静岡駅(静岡県静岡市葵区)

3.幻の特急を見た

  • 東京駅(東京都千代田区)
  • 富士川橋梁(静岡県富士市)
  • 三島駅(静岡県三島市)
  • 富士川駅(静岡県富士市)

4.イベント列車を狙え

  • 品川駅(東京都港区)
  • イベント列車「伊勢路」
  • 熱海駅(静岡県熱海市)
  • 亀山駅(三重県亀山市)
  • 新中野駅(東京都中野区)
  • 強羅(神奈川県・箱根町)

5.恨みの浜松防風林

短編集「恨みの三保羽衣伝説」に収録。下記を参照↓↓

→「恨みの三保羽衣伝説

登場人物

1.愛と死の飯田線

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 久我:
    28歳。東京に本社のある工作機器メーカーに勤務。中野のマンションに在住。
  • 若宮夕子:
    太陽興産の部長秘書。経堂のアパートに在住。久我が諏訪湖のペンション「ピッコロ」で出会った女性。
  • 小林みどり:
    太陽興産の会計課に勤務。久我が諏訪湖のペンション「ピッコロ」で出会った女性。
  • 真田:
    愛知県警の刑事。
  • 青柳恒夫:
    新宿にあるサラ金会社の社長。新宿にあるソープランド「さくら」のオーナー。名古屋のホテルで死体となって発見された。
  • 新井由紀:
    新宿にあるソープランド「さくら」のホステス。元太陽興産の社員。先月、自殺した。
  • 羽田岩男:
    36歳。新宿にあるソープランド「さくら」の支配人。世田谷区太子堂の自宅マンションで死体となって発見された。

2.見知らぬ時刻表

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 亀井健一:
    亀井刑事の息子。
  • 亀井君子:
    亀井刑事の妻。
  • 名取かおる:
    25歳。銀座にあるクラブ「かえで」のホステス。練馬区石神井のマンションに在住。沼津駅近くのラブホテルで死体となって発見された。
  • 加藤:
    40歳。M商事本社の部長。名取かおるの常連客だった。世田谷区成城に在住。
  • 幸子:
    加藤の妻。
  • 二宮:
    M商事大阪支社業務部の社員。
  • 横井:
    28歳。車のセールスマン。
  • 岡本:
    作家。加藤の大学時代の友人。

3.幻の特急を見た

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 成田:
    警視庁初動捜査班の警部。
  • 山本勇一郎:
    62歳。宝石商。池袋のマンションに在住。自宅で死体となって発見された。
  • 井上:
    山本勇一郎の専属運転手。
  • 山本明子:
    山本勇一郎の妻。別居中で新宿のマンションに在住。
  • 星野和郎:
    山本勇一郎の個人秘書。山本勇一郎と同じマンションで暮らしていた。
  • 久保寺君子:
    山本明子の友人。
  • 佐々木:
    国鉄の運転局長。

4.イベント列車を狙え

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 清水新一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。
  • 井村透:
    小さな運送会社に勤務。元商社マン。森口ゆかりに騙されて商社を退職した。
  • 森口ゆかり:
    井村透と交際していた女性。井村の名義で1千万円を借りて逃げた。
  • 原口みや子:
    六本木の高級クラブのホステス。中野のマンションに在住。イベント列車「伊勢路」で刺殺された。
  • 井上修一郎:
    新宿西口にあるK工業の社員。原口みや子の友人。大田区久が原のマンションに在住。
  • 和田:
    三重県警の刑事。
  • 山下:
    イベント列車「伊勢路」の車掌。
  • 伊東:
    サラリーマン。イベント列車「伊勢路」の乗客。
  • 大久保:
    週刊Sの記者。
  • 佐々木淳:
    経営コンサルタント。麹町のマンションに在住。

5.恨みの浜松防風林

短編集「恨みの三保羽衣伝説」に収録。下記を参照↓↓

→「恨みの三保羽衣伝説

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印象に残った名言、名表現

(1)男は好きな女の前では雄弁になる。

男というのは、好きになった女の前では自分のことをわかってもらいたくて、急にお喋りになるものらしい。

(2)男は愛が高まると口数が減る。

久我は胸の中で、夕子に対する愛が高まっていくのを感じていた。そのために、かえって口数が少なくなってしまっていたのである。

感想

本作は、4作品の短編集であるが、タイトル通り、東海道沿線の舞台の作品が多く、また、時刻表トリックを使った作品も多かった。

いずれも劣らぬ4作品であるが、1つおすすめを挙げるとすればやはり、「愛と死の飯田線」であろう。

この作品は、自分と愛し合っていたと勘違いし、一人で盛り上がっていた男・久我の、哀れな思考が描かれている。

まずは、久我の勘違いが盛り上がってくるところからスタートする。

久我は胸の中で、夕子に対する愛が高まっていくのを感じていた。そのために、かえって口数が少なくなってしまっていたのである。

久我はまた一歩、彼女との間が近づいたような気がして、嬉しかった。

女はいつだって冷静で、久我を利用するために、愛想を振りまいていただけなのにである。

だが、彼女の周りで殺人事件が起き、十津川警部が彼女が容疑者であることを聞くと、久我の中でも疑惑が広がっていく。

久我は、次第に疑惑が広がってくるのを感じた。

久我の胸に、冷たいものが走り抜けた。風が吹き抜けたと、いってもいい。

捜査を進めた十津川警部に、彼女が犯人だと確信していると言われ、さらに、久我は騙されていたと告げられる。

明らかに久我自身の気持ちがぐらついているからである。

久我はどこかで、まだ夕子の言葉を信じたいと、思っていた。あの夕子が、自分を欺すはずがない。そう思いたいのだ。

疑惑が頂点に達したところで、彼女に会い、彼女と一夜をともにする。ぐらついていた久我の心は、肉体関係を経て、逆に強固になるのである。

久我は、夕子が自分のものになったと思った。

今、夕子を愛していることだけは、間違いない。

だが、久我はこの後、現実を知る。自分ひとりで勘違いして、勝手に盛り上がっていただけにすぎないことを知るのだ。

男のバカさ加減と、女の冷静さ。この対比が実に面白かった。

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