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十津川警部「会津 友の墓標」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

会津 友の墓標小説

初版発行日 2008年1月20日
発行出版社 双葉社
スタイル 長編

私の評価 4.0

POINT】
十津川警部の大学時代の友人が殺された。容疑者は会津若松市内に住む、大学時代の友人だった!真実はどこにあるのか??十津川警部、白虎隊魂を胸に会津を疾る!!
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あらすじ

早春の荒川河川敷に放置されていた車のトランクから十津川の友人・佐伯隆太の遺体が発見された。捜査に着手した十津川警部は生前に受け取った佐伯からの手紙を手掛かりに、亀井刑事とともに会津若松に向かった。

小説の目次

  1. 友の手紙
  2. 雪の会津若松
  3. 理想の女性像
  4. 幻の原稿
  5. 原稿2
  6. 動機の問題
  7. 愛と死と

冒頭の文

大学の同級生、佐伯隆太から、十津川は、手紙を受け取った。

小説に登場した舞台

  • 郡山駅(福島県郡山市)
  • 会津若松駅(福島県会津若松市)
  • 満田屋(福島県会津若松市)
  • 天台宗清龍寺(福島県・会津美里町)
  • 萬松山天寧寺(福島県会津若松市)
  • 飯盛山(福島県会津若松市)
  • 白虎隊士十九士の墓(福島県会津若松市)
  • 白虎隊記念館(福島県会津若松市)
  • 会津若松市役所(福島県会津若松市)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川警部:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 佐伯隆太:
    40歳。K出版の編集者。十津川警部の大学時代の同級生。ヨット部の仲間だった。荒川の河川敷で死体となって発見される。
  • 小堺良二:
    K出版の出版部長。
  • 折戸修平:
    40歳。十津川警部の大学時代の同級生。都内の建設会社を辞めて故郷の会津若松へUターン。会津若松市役所の職員。
  • 折戸千加:
    折戸修平の母親。3月に天寧寺の境内にある林で喉を短刀で突いて自殺した。
  • 長瀬綾:
    40歳。折戸修平が高校時代に恋をした女性。高校卒業後、いわき市の海産物問屋の社長と結婚し、子供二人と幸せに暮らしている。
  • 長瀬奈緒:
    32歳。長瀬綾の妹。会津若松市長の秘書をしている。20代の時に結婚したが夫がすぐに病死し、今は独身。
  • 金田徳太郎:
    消費者金融「葵企画」の社長。
  • 新井:
    福島県の県議会議員。
  • 小島:
    60歳。会津若松市長。

その他の登場人物

  • 佐伯友里:
    佐伯隆太の妻。
  • 小山:
    会津若松署生活安全課の刑事。
  • 田中:
    福島県警捜査一課の警部。
  • 小野田:
    会津若松市内にあるAWクリーンKK社の社長。
  • 加藤:
    AWクリーンKK社の主任。

印象に残った名言、名表現

(1)日新館の教え。

「日新館では、弱い者をいじめてはなりませぬとか、嘘を言うてはなりませぬといった、最低限の倫理を教えていますが、最後は、ならぬものはならぬになるんです。そこが、わたしは好きですね」

(2)白虎隊の若き侍に感動する十津川と亀井。

一つ一つ、墓石を見ていくと、その、どの墓にも、没年十六歳とか、あるいは十七歳と書かれている。若いサムライたちである。

十津川も亀井も、その若さに感動した。忘れていた「健気」という言葉が浮かんでくる。

感想

本作は、完全なかたちで、事件が解決しない。これは、明らかに、あえてそうしているのだ。この事件の真相というものを、逆に、読者に問いかける、そういう意図があるのだと思う。

今回の事件は、十津川警部の大学時代の友人・佐伯隆太が、殺されてしまう。容疑者は早々に浮上する。殺された友人が会いに行った会津若松の人物である。その人物もまた、十津川警部の大学時代の同級生・折戸修平だったのだ。

そして、事件の真相は、2つの側面から描かれる。佐伯隆太側からみた事実と、折戸修平側からみた事実である。

佐伯隆太側からみた事実は、計算高く世知辛い、俗物的な女性が描かれる。これは、現代のミーハーで量産型の女性像を描いたものだと思う。

一方、折戸修平側からみた事実は、健気で潔い、美しい女性が描かれる。これは、白虎隊の女性像を描いたものだと思う。

当然、2つの事実は相反する。これは、作中にあった折戸修平の言葉が、象徴している。

「事実ということが、彼には、わかっていない。事実が、書かれていても、それは、本当ではないことがある。これは、あくまでも、彼の事実で、私の事実ではない。私は私の事実の上に生きているのだ」

どちらが、真実の姿なのか?

それは、最後まで、明らかにされない。その答えを、読者自身が考えてほしいという、西村京太郎先生からの、メッセージなのだと、わたしは受け取った。

最後にひとつ。

「ならぬものはならぬのです」という有名なフレーズに代表される、会津藩の日新館で唱えられていた7つの教え。

この7つの教えが、本作のベースにある。

  1. 年長者の言うことに背いてはなりませぬ。
  2. 年長者には御辞儀をしなければなりませぬ。
  3. 虚言を言うてはなりませぬ。
  4. 卑怯な振舞をしてはなりませぬ。
  5. 弱い者をいじめてはなりませぬ。
  6. 戸外で物を食べてはなりませぬ。
  7. 戸外で婦人と言葉を交へてはなりませぬ

そして最後には、ならぬものはならぬのですという、覚悟の言葉で、終わるのだった。

この教えは、現代の会津人に、受け継がれているのか?あるいは、廃れてしまったのか。

本作を読んで、改めて考え直してみたくなった。

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