初版発行日 2006年9月10日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編
私の評価
真夜中を走る列車から、男と女が消えた……。北の街新潟に殺人犯と1千万円を追え!
あらすじ
新宿のパチンコ店社長が殺され、従業員三宅修が現金五百万円とともに消えた。彼は二三時九分発新潟行き快速「ムーンライトえちご」で郷里の長岡に向かったと考えられた。一方、同じ夜行列車から、企業資金一千万円を貯めて帰郷する江見はるかも姿を消していた……。真夜中を走る列車から失踪した二人の男女。彼らの行方を追う十津川警部は、不審な女性五人組の影を掴むが!?やがて、震災の傷跡が残る北国の街に浮かぶ上がった、事件と欲望の構図とは?
小説の目次
- 新宿歌舞伎町
- 失踪
- 泳ぐヒゴイ
- 協力せよ
- ある集団
- 新潟中央郵便局
- 終わりよければ
冒頭の文
「退職金の前借りだって?」急に、社長の金子は、不機嫌になった。
小説に登場した舞台
- 新宿駅(東京都新宿区)
- 快速ムーンライトえちご
- 新潟駅(新潟県新潟市中央区)
- 長岡市街(新潟県長岡市)
- 蓬平温泉(新潟県長岡市)
- 和泉屋(新潟県長岡市)
- 長岡駅(新潟県長岡市)
- 新潟中央郵便局(新潟県新潟市中央区)
- 万代橋(新潟県新潟市中央区)
- 新潟市歴史博物館 本館(新潟県新潟市中央区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川警部:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 青木:
鑑識。 - 中村:
検屍官。 - 鈴木:
長岡警察署の警部。 - 小暮:
新潟県警の警部。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の元部下。
新宿歌舞伎町パチンコ店「ラッキー」
- 三宅修:
28歳。歌舞伎町のパチンコ店「ラッキー」の従業員。長岡市出身。 - 金子:
歌舞伎町のパチンコ店「ラッキー」の社長。 - 山田:
歌舞伎町のパチンコ店「ラッキー」の店長。 - 及川博司:
歌舞伎町のパチンコ店「ラッキー」の従業員。 - 小林由美子:
60歳。歌舞伎町のパチンコ店「ラッキー」の景品交換所の従業員。
事件関係者
- 江見はるか:
東京の大学を卒業して新潟へ帰郷する女性。学生時代、新宿歌舞伎町のクラブ「ルージュ」のホステスをしていた。 - 江見文子:
江見はるかの母親。新潟市内に在住。 - 加藤みどり:
三宅修の同級生。長岡の鯉養殖業者の娘。 - 秋山香織:
26歳。東京世田谷に在住。フリーター。 - 高山真美:
秋山香織の高校時代の同級生。フリーター。横浜市旭区のマンションに在住。 - 森田久美子:
秋山香織の高校時代の同級生。フリーター。東京中野にあるマンションに在住。 - 岩井洋介:
秋山香織の高校時代の同級生。フリーター。 - 榊原俊:
秋山香織の高校時代の同級生。都内にある広告会社の社員。成城に在住。 - 森田博司:
森田久美子の兄。新宿歌舞伎町のクラブ「ルージュ」のマネージャー。
その他の登場人物
- 三宅修平:
三宅修の父親。長岡の仮設住宅に住む。 - 三宅聡子:
三宅修の母親。長岡の仮設住宅に住む。 - 田中由美:
江見はるかの大学時代からの親友。東京の自動車販売店に勤務。 - 日高まゆみ:
加藤みどりの高校時代の親友。長岡市内で主婦をしている。 - 佐藤:
三宅修の高校時代の親友。長岡市内でサラリーマンをしている。 - 松沼:
秋山香織が通っていたR高校の職員。 - 山内:
新潟中央郵便局の局長。
印象に残った名言、名表現
■新潟中越地震の傷跡。
三宅は、長岡の、仮設住宅に入っている両親の顔を思い浮かべた。
父も母も、今年で六十五歳になる。長岡の街で、小さな食堂をやっていた。ちょくちょく顔を出してくれる、お得意さんが、それなりについていて、両親は元気に働いていた。それが、あの中越地震で、一挙に、その生活が、崩れてしまったのだ。
感想
あくまでも、2021年現在からの視点であるが、夜行快速「ムーンライトえちご」が、とにかく懐かしい。もちろん、ムーンライトえちごは、現在廃止になってしまっているし、そもそも、ほかのムーンライトは、すべて廃止になってしまった。
だから、あの時代の空気感が描かれている、ムーンライトが登場するだけで、わたしは、なんだか嬉しくなってしまうのだ。
本作は、そんなムーンライトえちごに乗って新潟に向かう、一人の男と、一人の女の事件である。それぞれの事件は、直接的には関係していないが、間接的につながっている。この2つの事件を、十津川警部たちは、同時に捜査し、二人の行方を追っていくという構図である。
殺人を犯し逃げている三宅修、東京でお金をためて新潟へ向かう江見はるか、娘の失踪を探す江見文子、江見文子の依頼をうけた橋本豊、事件を追う十津川警部。
それぞれの視点で物語が進んでいくのは、緊迫感があって、良かったと思う。
ただ、物語の中盤に大きな動きがないので、中だるみしてまった印象がある。中盤にもう少し、動きがあれば、最初から最後まで、緊迫感が漂っていたと思う。個人的には、そこが少し残念であった。
最後に、西村京太郎先生の、「著者のことば」を紹介しておく。
一日の乗降客の数が、日本一といわれる新宿駅の重要性が増したためか、この駅を始発駅とする列車が、増えている。東武浅草駅から出ている日光行や、鬼怒川温泉行の東武の特急が、新宿駅から出ていたり、今回の夜行快速えちごが、真夜中に、新宿駅から出ているのは、その現れだろう。
昔、北へ行く列車、特に夜行列車は、たいてい上野から出ていたのに、新宿から、それも真也に出発するというのも、時代の流れかも知れない。日本一の歓楽街新宿と、北の新潟が、夜を間に入れて、結びつくのだ。誰もが、考えるのは、犯罪であり、犯人だろう。私も、自然に、北へ逃げる犯人の姿を想像した。
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