初版発行日 2015年3月10日
発行出版社 集英社
スタイル 長編
私の評価
太平洋戦争時の伊勢市をあつかった歴史組込型ミステリー!
あらすじ
第二次世界大戦中、野々村は学徒動員で伊勢神宮を守る任務につく。終戦後、十五歳で東京に転居し考古学を研究してきた。遷宮で沸く伊勢へ七十年ぶりに帰郷し、同級生と再会。空襲で行方不明になったままの友人・加藤明が話題になる。野々村は、加藤の最後の姿を語り始めるが……。悲惨な戦争に翻弄された青春の封印が解かれた時、殺人の悲劇が!
小説の目次
- 近鉄特急「しまかぜ」
- 伊勢再訪
- 悔恨
- 脅迫
- 殺人事件
- 遠い風景
- 告白
冒頭の文
野々村雅雄は、新幹線を名古屋駅で降りると、賢島行きの近鉄特急「しまかぜ」に乗り換えるために、長い通路を、近鉄線のホームに向かって、歩いていった。
小説に登場した舞台
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 近鉄特急「しまかぜ」
- 宇治山田駅(三重県伊勢市)
- 伊勢神宮(三重県伊勢市)
- おかげ横丁(三重県伊勢市)
- 大津神社(三重県伊勢市)
- 赤福本店(三重県伊勢市)
- 金剛證寺(三重県伊勢市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 野々村雅雄:
85歳。日本古代史の研究家。三重県伊勢市生まれ。東京世田谷に一人で住む。妻は20年前に他界している。 - 野々村翔:
15歳。野々村雅雄の孫。高校1年生。鉄道マニア。 - 木島新太郎:
85歳。野々村雅雄の旧友。太平洋戦争の時代、同じ学校で過ごした。伊勢市に在住。 - 阿部孝夫:
85歳。野々村雅雄の旧友。太平洋戦争の時代、同じ学校で過ごした。伊勢市に在住。 - 加藤正平:
伊勢市郷土史家。太平洋戦争の時に失踪した加藤明の弟。
その他の登場人物
- 高野正志:
伊勢市旧制中学校・校長の息子。大学の臨時講師として日本の古代史を教えている。 - 長谷川秀夫:
T大学の講師。日本古代史が専門。三重県伊勢市生まれ。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 荒川あかね:
十津川直子の友人。 - 荒川孝:
荒川あかねの夫。同人雑誌の発行責任者。
印象に残った名言、名表現
(1)忘れられない日々。
あれから、七十年も経った今でも、竹槍を使っての、厳しい訓練や、校長の怒鳴り声、三宅少尉の命令口調を、野々村は、思い出してしまうのである。
(2)日本の根本。
日本は神国、神の国であり、その根本は二千七百年前、天照大御神が、この日本を創ったのであり、その天照大御神を祀るのが、伊勢神宮であると、教えられてきた。
ここには、日本国の根本がある。日本精神の根本がある。
感想
本作は、歴史に焦点をあてた作品である。今回のテーマは、太平洋戦争。
西村京太郎先生は、太平洋戦争を経験されているので、とくに、この太平洋戦争を描いた作品には、思い入れがあるのだと思う。
十津川警部シリーズにおいても、太平洋戦争をテーマにした作品が刊行されており、1945年8月15日前後の政府の内側を描いた「八月十四日の殺人」や、玉音放送後の厚木基地や浜松を描いた「浜名湖 愛と歴史」などがある。
本作は、戦時中、昭和20年の伊勢市が舞台になっている。この当時、15歳だった少年たちから見た戦争とは、いったいどのようなものだったのか?その片鱗を垣間見ることができる。
ただし、やはりこうした歴史モノと、十津川警部シリーズのミステリーは、どうしても完全に融合するのが難しいと思ってしまう。歴史をテーマにするあまり、どうしても、ミステリーとしては弱くなってしまうからだ。
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