初版発行日 2016年10月20日
発行出版社 祥伝社
スタイル 短編集
私の評価
四つの難事件に十津川が挑む傑作推理集!
あらすじ
1.一期一会の証言
ついに自分にも認知症が出たのか。彦根城で観光ガイドを務める今泉明子(71)は、不安を抱いた。男女五人を案内したはずが、女性の一人が行方不明に。しかし、グループは最初から四人だったと言うのだ。翌日、明子の前に消えた女性が現われ、あれは悪戯だったと言う。一週間後、東京月島の冷凍倉庫でその女性の他殺体が発見。捜査に当たった十津川警部が絞り込んだ容疑者には完璧なアリバイが!犯人逮捕に必要な明子の記憶は、信頼できるのか?
2.百円貯金で殺人を
全国の郵便局をめぐり百円の預金通帳を作る“局メグ”が趣味の金子真由美が湯河原で殺害された。直後に姿を消した同居女性に容疑は向けられるが、行方は知れなかった。一方、十津川警部の妻・直子は事件に注目した。被害者が死の直前に訪れたのが、友人家族がやっている郵便局だったのだ。その局では二年前、強盗事件が発生していた。心配した直子は湯河原を訪ねるが、友人は何かに怯えていた。殺人は、解決済みの強盗事件と関係が?
3.だまし合い
人材派遣会社の社長・山際卓郎は、恋人で恩人でもある銀座のクラブのママ・結城あやの傲慢で恩着せがましい態度に我慢ならなくなり、自殺にみせかけた殺害計画を立てる。計画通り、あやに毒入りのワインを渡し、自分はアリバイ作りのために大阪に出張した。山際は大阪で仕事をしながら、あやが死んだという知らせを待っていたが、いつまで経っても知らせが来ず……。
4.姨捨駅の証人
鉄道ファンに人気の信州・姨捨駅で、休暇中の亀井刑事が奇妙な服装の男を目撃して驚愕する。東京・麹町ミスキャンパス殺人事件の容疑者中西がアリバイを証明する存在として挙げた男と瓜二つだったのだ。だが、男は見つからず、中西は送検された。冤罪なのか?十津川警部は大々的な男捜しを開始するが…!?
小説に登場した舞台
1.一期一会の証言
- 彦根城(滋賀県彦根市)
- 米原駅(滋賀県米原市)
2.百円貯金で殺人を
- 湯河原駅前通り商店街(神奈川県・湯河原町)
- 湯河原温泉 ふきや(神奈川県・湯河原町)
3.だまし合い
- 東京駅(東京都千代田区)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
4.姨捨駅の証人
- 特急「スーパーあずさ5号」
- 新宿駅(東京都新宿区)
- 大月駅(山梨県大月市)
- 松本駅(長野県松本市)
- 姨捨駅(長野県千曲市)
- 霞が関駅(東京都千代田区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 仙台駅(宮城県仙台市)
登場人物
1.一期一会の証言
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 今泉明子:
71歳。彦根城の観光ボランティア。 - 中島由美:
30歳。都内の銀行に勤務。月島の冷凍倉庫の中で死体となって発見された。 - 近藤正志:
32歳。RK不動産の営業部長。中島由美の婚約者。 - 河野みどり:
30歳。女優。中島由美の大学時代の同級生。 - 岩本恵:
25歳。中島由美の大学の後輩。京都在住。 - 小杉勝:
30歳。中島由美の大学時代の同級生。大阪在住。
2.百円貯金で殺人を
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 花井:
小田原警察署湯河原交番の巡査長。 - 及川:
神奈川県警の警部。 - 二宮:
神奈川県警の刑事。 - 金子真由美:
24歳。世田谷区世田谷のマンションに在住。湯河原駅近くに停めてあった軽自動車の中で死体となって発見された。 - 戸田加奈:
金子真由美とルームシェアしていた女性。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 森田:
湯河原駅前郵便局の局長。 - 森田美弥子:
森田の娘。十津川直子の友人。 - 五十嵐勇:
31歳。2年前、湯河原で強盗事件を起こして服役していたが出所した。 - 宇田川五郎:
保守党の代議士。元警察庁の幹部。 - 川村高志:
35歳。高円寺駅前にある喫茶店「ポストカード」のオーナー。 - 川村友紀:
30歳。川村高志の妻。
3.だまし合い
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 山際卓郎:
39歳。都内の人材派遣会社の社長。 - 結城あや:
銀座にあるクラブのママ。六本木のマンションに在住。 - 久保田肇:
大阪の人材派遣会社の社長。 - 木村:
久保田の人材派遣会社の渉外部長。 - 島崎正雄:
大阪の経営コンサルタント。 - 五十嵐勉:
芸能人。結城あやの部屋で毒入りワインを飲んで死亡した。 - 小川:
五十嵐勉のマネージャー。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。
4.姨捨駅の証人
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 木下めぐみ:
22歳。S大学に通う女子大生。麹町のマンションに在住。自宅で死体となって発見された。 - 片桐玲子:
木下めぐみの大学の同級生。 - 中西昭:
39歳。S大学の准教授。木下めぐみの恋人。六本木のマンションに在住。 - 岡野和義:
30歳。元劇団員。江東区に在住。奥多摩で死体となって発見された。 - 竹下:
弁護士。 - 河原崎英介:
代議士。中西昭を守る会の代表。 - 高野茂:
仙台の料亭「仙台 かき一番」の従業員。
感想
本作は、4つの作品を収録した短編集である。
「一期一会の証人」では、71歳の老女の記憶力がカギを握るスピーディーな展開だった。「百円貯金で殺人を」では、十津川警部の妻・直子の名探偵ぶりが光った作品である。
「だまし合い」は、策士策に溺れるという格言通りの結果になり、最後のどんでん返しが見事。「姨捨駅の証人」は二転三転するストーリー展開で、最後までどうなるかわからない緊張感が秀逸だった。
いずれ劣らぬ良作揃いの短編集だったと思う。
コメント