初版発行日 1996年12月25日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編
私の評価
謎を呼ぶ二年前の遭難事故。海とヨットを愛する六人に何が起きたのか!?十津川警部、最大の賭け!!
あらすじ
西新宿のホテルの一室で毒殺事件が発生し、その一週間後、「日本のエーゲ海」と呼ばれる岡山県牛窓の展望台で一台の車から男の死体が発見された。岡山県警から捜査協力の要請を受けた十津川警部は、二つの事件の被害者が、パルテノンⅠ号というヨットを共同所有するメンバーであることを突きとめた。だが、そのヨットは二年前に伊豆沖で沈没、その直後、他のメンバー四人は失踪していた!二年前の遭難事故を洗い直す十津川の前に、意外な事実が判明し、事態は急展開を告げる…。
小説の目次
- パルテノン
- エーゲ海
- 海とゴムボート
- 接点
- 対決姿勢
- 残党の軌跡
- 解決への道
冒頭の文
夏の盛りの八月十七日。東京西新宿のホテルRで、1206号室の泊り客が、死体で、発見された。
小説に登場した舞台
- 岡山駅(岡山県岡山市北区)
- 牛窓(岡山県瀬戸内市)
- 牛窓ヨットハーバー(岡山県瀬戸内市)
- 真鶴駅(神奈川県・真鶴町)
- 真鶴岬(神奈川県・真鶴町)
- 真鶴ベイマリーナ(神奈川県・真鶴町)
- 八丈島(東京都・八丈町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 田口:
警視庁の検死官。 - 森田:
岡山県警捜査一課の警部。 - 半田:
岡山県警捜査一課の警部。
事件関係者
- 三好功:
35歳。調査コンサルタント。大阪市福島区に在住。牛窓の生まれ。かつて不動産詐欺を働き逮捕されたことがある。5年前に伊東沖で沈没したヨット「パルテノンⅠ号」のクルー。西新宿のホテルRで死体となって発見された。 - 柳沼完治:
35歳。西新宿にある外食チェーン「のりしげ」の支店長。上北沢のマンションに在住。5年前に伊東沖で沈没したヨット「パルテノンⅠ号」のキャプテン。牛窓の展望台近くに停めてあった車の中で死体となって発見された。 - 浅井浩:
35歳。サラリーマン。埼玉県熊谷市に在住。5年前に伊東沖で沈没したヨット「パルテノンⅠ号」のクルー。 - 矢野和美:
元バレーボールの選手。5年前に伊東沖で沈没したヨット「パルテノンⅠ号」のクルー。 - 野村俊夫:
42歳。野村製菓の社長だったが、会社が倒産し、現在は行方不明。5年前に伊東沖で沈没したヨット「パルテノンⅠ号」のクルー。 - 安部卓郎:
2年前までK銀行栄支店に勤務する行員だった。5年前に伊東沖で沈没したヨット「パルテノンⅠ号」のクルー。 - 松村豊:
元S組の組員。5年前に伊東沖で沈没したヨット「パルテノンⅠ号」のクルー。 - 石田健作:
65歳。代議士。元国務大臣。財団法人「あけぼのの会」の理事長。 - 高城勝巳:
57歳。石田健作の第一秘書。 - 相原敬:
35歳。石田健作の第二秘書。調布市内のマンションに在住。 - 舞子:
29歳。新宿歌舞伎町にあるクラブAのホステス。本名は藤原亜木子。大久保のマンションに在住。 - 久保川進:
名古屋の大学院生。
その他の登場人物
- 柴田みゆき:
26歳。三好功の事務所の社員。 - 柳沼昌江:
柳沼完治の妻。別居中。 - 水田あい子:
30歳。新宿にあるクラブのホステス。以前、松村豊と付き合っていた。 - 羽山:
弁護士。 - 加東:
ヨット制作会社「マリン・プロ」の社長。 - 江口マキ:
30歳。スーパー経営者。
感想
本作は、”日本のエーゲ海”と言われる牛窓が事件の舞台の一つになった作品であった。
牛窓の美しい景観が描かれたし、この他にも真鶴や八丈島沖の海が登場したが、実際の事件そのものは、政治家がからむガチガチな硬派な内容だった。
十津川警部シリーズファンの方なら、この政治家が登場した時点で、誰が黒幕なのか、すぐにわかっただろう。実際、黒幕は想像とおりなのだが、問題は、証拠をつかみ逮捕まで踏み切れるのか?が焦点になった。
こうした美しい海がタイトルに含まれているのだから、政治家の社会派的な内容ではなく、もう少し、爽やかな登場人物たちにしてほしかったというのが本音である。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。
岡山県の牛窓は、日本のエーゲ海といわれている。高台から見下ろす瀬戸内の海は、確かに素晴らしい。最近は、ヨットハーバーも作られ、ヨットの白い帆が点々としている光景は、日本離れしているといってもいい。町の方も、オリーブの樹を植えたり、高台に、オリンポスの名前をつけたり、涙ぐましい努力をしている。しかし、ここは、あくまでも日本の町であり、日本の景色である。そのギャップが面白くて、この作品を書く気になった。
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