初版発行日 2001年12月25日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編
事件の裏に垣間みえる”心の闇”。十津川警部シリーズ史上、もっとも狂気的な犯人のひとり!
あらすじ
東京月島の40階建て超高層マンションに、若い女性の全裸死体が宙吊りにされた。ひと月後には、汐留の600メートルを超す新テレビ塔にも死体が!捜査が難航する中、元兵庫県警の酒井が十津川警部を訪ねた。三十年前、余部鉄橋と神戸のマンションに、やはり若い女性の死体が次々と吊るされ、容疑者の自殺で捜査は終了したというのだ。一方、女子大生の田中真理は、図書館で知り合った設計士の高原から「僕の友達が、人を殺している」と告白される。後日、高原の同僚が絞殺された……。三十年の時間を隔てた怪奇殺人を結ぶ糸は何なのか?十津川は人の心の闇に迫り、意外な結末を迎える!
小説の目次
- 三十年
- 友情
- 左手の謎
- ヘイトサイト
- 第三の惨劇
- 対決
- 真犯人
小説に登場した舞台
- 月島(東京都中央区)
- 北千住(東京都足立区)
- 登戸(神奈川県川崎市多摩区)
- 丹沢(神奈川県相模原市緑区、愛甲郡清川村、足柄上郡山北町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 木村ゆき:
NTプロ所属の女性タレント。月島で建設中のマンション工事現場に遺体で見つかる。 - 孔美花:
北千住近くの河川敷にあったクレーン車に死体で吊るされていた女性。中国・福建省出身。 - 酒井修:
神戸市内の警備会社で働いている。去年の3月まで兵庫県警の捜査一課にいた。 - 五十嵐健:
30年前の連続殺人事件の容疑者。警察に追い詰められて自殺した。 - 田中真理:
大学生。 - 高原要:
30歳。中丸建設の設計事務所で働いている設計士。 - 立花めぐみ:
田中真理の同級生で親友。 - 井上勇:
立花めぐみの親戚。中丸建設につとめている。 - 林田ユカ:
新人歌手。 - 辻村綾:
20歳。シンガーソングライター。 - 野田憲:
登戸に住む30歳の男。
その他の登場人物
- 鈴木清:
月島の建設現場で働くガードマン。 - 井上:
月島の建設現場で働くガードマン。 - 三浦:
月島の殺害現場に取材に来たテレビカメラマン。 - 瀧本:
新宿でスナックを経営している男。 - 相原広司:
日本の建築家の第一人者。新東京タワーの設計を担う。 - 皆川均:
新東京タワーの現場監督。 - 野川:
林田ユカが所属している太平プロのマネージャー。 - 伊藤透:
孔美花に会いに来ていた客。28歳。群馬県高崎市の生まれ。 - 上原明:
67歳。建築評論家。 - 前田恵子:
辻村綾のマネージャー。 - 石田:
ヘイトサイト運営の責任者。 - 野田浩子:
野田憲の母親。 - 中村:
東京都清瀬市で心理相談所を開いている医師。
個人的メモ
- 残忍な手口と異常なまでの自己顕示欲。まさに”狂気”
- 究極の愛と究極の憎しみがここにある。
- 王道のどんでん返し。
総評
「もしかしたら…」
本書の序盤でわたしが感じた直感。読みすすめるうちにこれが自信に変わり、終盤で確信に変わっていった。そして、本書をすべて読み終わったとき、これはミステリーの花形”どんでん返し”の物語であると実感した。
やっとこさボスを倒したと思ったら、新たにラスボスが現れるゲームやコミックと同じである。これこそが王道なのだと思う。
本作は、表紙の「著者のことば」に綴られた西村京太郎先生のことばにすべてがこめられている。
「時代は、ますます残酷になり、愛が傷つけられるようになった。それは、何故なのだろうか。時代のせいだろうか。それとも、人間は、もともと残酷なもので、狂気を誰もが持っており、愛とか善意とかは、最初から傷つくものと、決まっているのだろうか。
才気あふれる人間が、ある時間、狂気につかまったら、どれほど残酷になれるものなのか。十津川はその犯人と向い合った時、どう戦ったらいいのか。それを書いてみたいと思った。」
このことばに本作のどんでん返しの構造、犯人の異常な性質がすべて込められている。その中身はここで明かすことはできないが、自分の目で確かめてほしい。
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