初版発行日 2006年11月30日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編
【POINT】
失われた記憶を辿り、十津川警部、信州上田へ馳せる!
失われた記憶を辿り、十津川警部、信州上田へ馳せる!
あらすじ
実業家の中山憲之は、謎めいた脅迫電話に悩まされていた。3人の女性から次々と「責任を取って欲しい」という内容の電話がかかってくるのだが、中山には全く見に覚えがない。そんな矢先、脅迫電話をかけていたと思しき女性の1人が死体となって発見された。十津川警部が捜査に乗り出すが、中山も謎を追い、長野県の別所温泉に向かう。十津川と中山がそれぞれ事件を調べると恐るべき陰謀が明らかになり……。
小説の目次
- カウンセラー
- 慰謝料
- 二人目の死
- 別所温泉
- 声優
- 想像の中で
- 追い詰める
小説に登場した舞台
- 上田駅(長野県上田市)
- 別所温泉(長野県上田市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 小暮:
アメリカ帰りのカウンセラー。 - 中山憲之:
50歳。中山食品の社長。突然、3人の女性から非難の電話が掛かってくるようになり、悪い夢を見るようになる。昨年2月の記憶も失われている。 - 相川由紀子:
45歳。中山のことを木村と呼ぶ女性。 - 三浦治美:
中山のことを後藤と呼ぶ女性。 - 池永加代:
23歳。中山のことを金子と呼ぶ女性。 - 高木真紀:
25歳。芸能プロダクションに所属している声優。 - 滝川敏夫:
35歳。歌舞伎町のクラブ「センチュリー」のマネージャー。 - 池谷俊光:
中山の大学時代の先輩。警備保障グッズ会社「セーフティー池谷」の社長。 - 小早川:
政治家。 - 本山夫妻:
別所温泉にある桜旅館の主人と女将。
その他の登場人物
- 神木:
週刊トゥデイの編集長。 - 小西:
週刊トゥデイの記者。 - 吉田:
週刊トゥデイの記者。 - 井上:
私立探偵。 - 早川:
催眠術師。 - 桜井:
別所温泉にある桜旅館の仲居。 - 田沼:
神奈川県警捜査一課の警部。 - 山内:
高木真紀が所属していたNプロダクションの社長。 - 野口はるみ:
Nプロダクション所属の声優。 - 冬木:
Nプロダクションのマネージャー - 立花かおる:
Nプロダクション所属の声優。 - 池谷文子:
池谷俊光の妻。 - 新井和子:
池谷家のお手伝いをしていた女性。
印象に残った名言、名表現
■既視感を覚える風景に出会ったときの感覚。誰しも一度は経験したことがある。
何年前に来たのか分からない。何のために、この温泉に、来たのかも分からないのに、何回も、同じ通り、同じ景色のところを通ると、そのたびに、この別所温泉に来たことがあるという確信が、深くなっていくのである。
その確信のようなもの、ここに来たことがあるという記憶は、同じ別所温泉の中でも、ある通りでは、強くなり、ある通りでは、淡くなっていく。
総評
本作「幻覚」は、作品タイトルそのものが、事件の鍵になっている。
物語の実質上の”主役”となる中山憲之。ある一時期の記憶を失っていることで、事件が起こる。事件が起こったことで、記憶を失っているとも言える。記憶を失ったことで事件の背景が見えなくなったとも言えるのである。
その答えが、信州上田の別所温泉にある。ここに中山憲之が訪れ、十津川警部たちも来たことで、失われた記憶の中身がわかる。この記憶の中身こそが事件の全容である。
その中身を自分の目で確かめてほしい。
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