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九州特急「ソニックにちりん」殺人事件/感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

ソニックにちりん殺人事件小説
初版発行日 1999年9月9日
発行出版社 光文社
スタイル  長編
【Point】事件の背後に浮かび上がる政治闘争!水面下で繰り広げられる政治工作にゾクゾクすること間違いなし。東京と九州をまたぐスケールの大きな物語!

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あらすじ

官僚出身の元首相秘書が突如疾走した。その春から運行を開始した特急「ソニックにちりん」と阿蘇の風景系写真が自宅から見つかったが、彼が九州へ旅行した形跡はない。事件の可能性があると見た十津川警部と亀井刑事は現地へ飛んだ。しかし巨大な政治的圧力が捜査の前に立ちはだかり…社会派ミステリーの傑作。

小説の目次

  1. 重要人物
  2. ソニックレディ
  3. 上京
  4. 新たな展開
  5. 苦境
  6. 突破口
  7. 決戦のとき
  8. 再び「ソニックにちりん」

小説に登場した舞台

  • 福岡空港(福岡市博多区)
  • JR博多駅(福岡市博多区)
  • 中洲(福岡市博多区)
  • 特急列車「ソニックにちりん」(博多駅から大分駅まで)
  • JR大分駅(大分県大分市)
  • 内牧温泉(熊本県阿蘇市)
  • 十三駅周辺(大阪市淀川区)
  • 花巻空港(岩手県花巻市)
  • 奥湯河原(神奈川県・湯河原町)

※銀座や四谷など東京は除外。

個人的な推しポイント

  • 冒頭の描写が秀逸。
  • 政治闘争における情報戦が緻密に描かれている。
  • 「金」に対する人の欲深さ。己の欲望のためなら人をも殺める犯人の傲慢さが描かれている。
  • 発端となった「5枚の写真」から徐々に事件の全容が明らかになってくる論理的な推理が秀逸。
  • 最後の最後に「えっ?」と思わせる”ちょっとした意外な結末”がある。最後まで飽きさせない。
  • 北は岩手の花巻温泉、南は九州の大分や阿蘇。十津川警部の捜査とともに旅情が味わえる。
本作の重要な謎は「佐久間要の自宅にあった5枚の写真は何を意味していたのか?」
今回の『九州特急「ソニックにちりん」殺人事件』で登場した重要なアイテムは「写真」

総評

 特急列車には旅情をかきたてるものがある。

東京や大阪など大都会を走るものであっても、地方を走るものであっても、特急列車に乗ると「あぁ旅をしているんだなぁ」という実感がわくのである。

 これは多分、特急列車というものが、その地方独自の色を持っているからだろう。

例えば、北海道を走る「特急オホーツク」、新宿-鬼怒川温泉間を走る「特急きぬがわ」、高知を走る「特急しまんと」など、その地方の名称を記した特急列車が多い。

また、JR特急と私鉄特急を含め、列車のデザインが豊富で、各地方ごとに異なっている。今回の題材になったソニックにちりんの883系セルリアンブルーの車体は他の特急では見られない奇抜なデザインと言えるであろう。

こうした特急列車のローカル性がさまざまなドラマを生み出していく。

さて、物語の冒頭。わたしは次の文章で早くも心が奪われてしまった。

「真夜中に、シェパードのシローが吠えた。 正確にいえば、九月十日の午前二時五分である。 そして、飼い主の佐久間要が、消えてしまった。」

真夜中の静寂の中で一匹の犬が吠える。何かが始まったことの狼煙だ。

それはまるで静寂の池に一滴の水滴がピチャンと落ちて、水面に波紋を広げていく姿に似ている。この犬の遠吠えが一つの合図になって事件が始まっていくのである。

良作は冒頭が素晴らしい。本物の作家は1行目に魂を注ぐ。

今作の冒頭は職人芸ともいえる西村京太郎の文才がいかんなく発揮されていた。

冒頭のシェパードの遠吠えを合図に佐久間要が失踪し、佐久間の部屋から5枚の写真が見つかる。これらの写真の真意を確かめるために十津川警部と亀井刑事は九州に飛ぶ。博多からソニックにちりんに乗ってみる。

ここから舞台は九州へと移り、大分、阿蘇、内牧温泉、中洲に足を伸ばし、写真がソニックレディを写したものであることがわかる。

この後、東京へと戻った十津川警部は、ニュースでソニックレディ矢吹みほの死を知る、と物語は急展開を示す。さらに、殺された矢吹みほの母親・矢吹宏子の誘拐事件も発生し、事件はさらに混迷を深めていく。

佐久間要の部屋にあった5枚の写真は誰がどんな意図をもって送りつけたのか?

佐久間みほはなぜ殺されなければならなかったのか?

佐久間宏子を誰が誘拐したのか?

事件の背後に見える巨大な政治権力に動きを制限されながら、十津川警部たちは事件の根本的な謎に挑んでいく。

ここから先の展開はぜひ本書を手にとって読み進めてもらいたい。

十津川警部の論理的な推理に舌を巻き、最後の最後、”ちょっとした以外な結末”に微笑するであろう。

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の刑事。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

熊本県警

  • 伊知地:熊本県警の刑事。

事件関係者

  • 佐久間要:
    次期総裁選候補の政治家。30歳のとき、大分の税務署長を2年間勤めていた。
  • 佐久間ひろみ:
    佐久間要の娘。去年の10月からフランスに留学している。
  • 矢吹みほ:
    20歳。大分市出身。現在は福岡市内のマンションでひとり暮らし。去年の3月からソニックレディとして働いている。
  • 矢吹宏子:
    矢吹みほの母親。中洲にあるスナック「ヒロコ」のママ。20年前、大分市で小料理屋を営んでいた。
  • 滝川定男:
    48歳。大阪市福島区の生まれ。借金1千万円を背負い、逃げるように大阪を出る。
  • 五十嵐敏明/三宅直樹:
    本名は三上。ペンネームは五十嵐。政治評論の有名な書き手として世間では五十嵐敏明の名で知られている。政官界に幅広い人脈をもち、佐久間要を次期首相候補として擁立した人物。政治グループ「二十一世紀を考える会」の代表。
  • 畑恵介:
    「二十一世紀を考える会」のメンバー。
  • 三輪利夫:
    佐久間要のマネージメント担当。スケジュールや講演会作り、資金を取り仕切っている。
  • 木田深雪:
    銀座のクラブのママ。矢吹宏子の旧友。
  • 辻俊介:
    木田深雪が営む銀座のクラブのマネージャー。
  • 深田昭夫:
    43歳の弁護士。四谷に事務所をかまえている。S大法科出身。
  • 中西武:
    深田の事務所で働く弁護士。29歳。
  • 氷見克也:
    55歳の弁護士。深田昭夫と同じS大法科出身。
  • 畠中五郎:
    30歳。傷害の前科がある男。
  • 内藤ひろ子:
    かつて畠中五郎と交際していた女性。

その他の登場人物

  • 金井浩一:
    佐久間要の隣家に住む浪人生。
  • 吉田貴一郎:
    佐久間要の運転手
  • 原田里子:
    佐久間要のお手伝い。
  • 山下:
    大分駅で勤務している助役。
  • 田中由紀:
    矢吹みほと同僚で同じマンションに住むソニックレディ。
  • 平山:
    練馬にあるS病院の外科部長。
  • 大沢:
    写真週刊誌の編集長。
  • 橋本:
    私立探偵。かつて十津川警部のもとで働いていた。
  • 生田レナ:
    ソニックレディ。

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