初版発行日 2009年9月25日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編
【POINT】
小説「吉備 古代の呪い」を発表した郷土史家の死。十津川警部<桃太郎伝説>を読み解く!
小説「吉備 古代の呪い」を発表した郷土史家の死。十津川警部<桃太郎伝説>を読み解く!
あらすじ
岡山県総社市に住む郷土史家・吉野文彦が東京のホテルで服毒死した。日本古代史研究会に招待されての上京であったが、会の代表者・佐伯は吉野と面識はなく、招待状も出していないという。吉野は<桃太郎・温羅伝説>を題材にした小説「吉備 古代の呪い」を発表し、好評を博していたが……
小説の目次
- 大王の時代
- 吉備・桃太郎伝説
- 権謀の時代
- 吉備マンスリー
- 出版
- 二人の佐伯賢生
- 現代の殺人
冒頭の文
その男は、四谷にある、Rホテルの一室、一五二三室で、死んでいた。
小説に登場した舞台
- 岡山駅(岡山県岡山市北区)
- 吉備津神社(岡山県岡山市北区)
- 吉備津彦神社(岡山県岡山市北区)
- 鬼ノ城跡(岡山県総社市)
- 総社駅(岡山県総社市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 吉野文彦:
50歳。郷土史研究家。四谷のRホテルの一室で服毒死していた。 - 吉野多恵子:
吉野文彦の妹。 - 佐伯賢生:
60歳。日本古代史研究会代表。新東京出版の社長。 - 前田俊夫:
吉備マンスリーの編集長。岡山市内の資産家。 - 五十嵐保:
吉備マンスリーの会長。72歳。元政治家。日本古代史研究会の参与。 - 北川茂樹:
元日本古代史研究会の会員。60歳。 - 佐伯明生:
佐伯賢生の弟。山形県の県会議員。 - 佐伯綾子:
- 55歳。佐伯賢生の妻。
- 佐伯美由紀:
佐伯明生の妻。
その他の登場人物
- 沢田:
岡山県警の警部。 - 斎藤晃:
東京都内の高校教師。国語を教えている。元日本古代史研究会の会員。45歳。 - 安藤:
和歌山県警の警部。
印象に残った名言、名表現
■部下の意見を貪欲に受け入れる十津川警部の姿勢。
「何でも、思ったことをいってくれ。いってくれたほうがいいんだ。うまく答えられれば、私の考えが、少しは、的を得ていることになるからね。」
総評
本作は、歴史小説を作中に組みこんだ、一風変わったミステリー小説である。
十津川警部シリーズでは、本作と同じように歴史小説が含まれた作品がいくつかある。例えば、忠臣蔵の歴史小説を組み入れた「三河恋歌」、鎌倉幕府3代の盛衰の歴史小説を組み入れた「修善寺 わが愛と死」があげられる。
これらに共通して言えるのは、作中に登場する歴史小説が、本編と同じくらい読み応えがあり、面白い作品になっていることである。
日本各地の地理や歴史に精通し、歴史小説家としても非凡な文才をもつ、西村京太郎先生だからこそできる芸当であろう。
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