初版発行日 2006年3月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 短編集
発見された二人の被害者の所持品は、なぜか行方不明になって、捜査願いが出ている男のものだった。犯人はその行方不明になっている男なのか、それとも……。桂川の河原、鞍馬寺への道……凍てつく古都で奇妙な連続殺人事件が!
あらすじ
1.冬の殺人(京都)
短編集「十津川警部 みちのくで苦悩する」に収録。下記を参照↓↓
2.雪の石塀小路に死ぬ(京都)
短編集「東京-旭川殺人ルート」に収録。下記を参照↓↓
→「東京-旭川殺人ルート」
3.琵琶湖周遊殺人事件(滋賀)
休暇で故郷の長浜に帰郷した田中刑事。琵琶湖岸をサイクリング中に、何者かに射撃された。幸い命に別条はないものの、その後も執拗に攻撃を仕掛けてくる。田中刑事への個人的な恨みから、捜査を行ったが容疑者が浮上しない。琵琶湖岸で連続して起こった自転車事故に注目した十津川は、真犯人を暴く!
4.列車プラス・ワンの殺人(大阪)
都内の小学校の砂場で一人の男の死体が見つかる。男の名前は仁村要。N自動車のトップセールスマンだった。被害者の人間関係を洗った結果、明石に住む元N自動車のセールスマンが浮上した。だが、事件当日、大阪で同窓会を開いており、完璧なアリバイがあった。捜査が暗礁に乗り上げたところ、十津川警部は、摂津にある意外なルートがあることを知る!
5.振り子電車殺人事件(南紀白浜)
小説に登場した舞台
1.冬の殺人(京都)
短編集「十津川警部 みちのくで苦悩する」に収録。下記を参照↓↓
2.雪の石塀小路に死ぬ(京都)
短編集「東京-旭川殺人ルート」に収録。下記を参照↓↓
→「東京-旭川殺人ルート」
3.琵琶湖周遊殺人事件(滋賀)
- 米原駅(滋賀県米原市)
- 琵琶湖(滋賀県)
- 長浜(滋賀県長浜市)
4.列車プラス・ワンの殺人(大阪)
- 明石(兵庫県明石市)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 摂津(大阪府摂津市)
- 羽田空港(東京都大田区)
5.振り子電車殺人事件(南紀白浜)
- 白浜駅(和歌山県・白浜町)
- 新宮(和歌山県新宮市)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 天王寺駅(大阪府大阪市天王寺区)
- 特急くろしお
- 上野公園(東京都台東区)
- 上野駅(東京都台東区)
登場人物
1.冬の殺人(京都)
短編集「十津川警部 みちのくで苦悩する」に収録。下記を参照↓↓
2.雪の石塀小路に死ぬ(京都)
短編集「東京-旭川殺人ルート」に収録。下記を参照↓↓
→「東京-旭川殺人ルート」
3.琵琶湖周遊殺人事件(滋賀)
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。琵琶湖をサイクリング中に射撃され負傷する。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 高木:
滋賀県警の警部。 - 川村徹:
長浜に住む小学校3年生の男の子。 - 沼田:
滋賀県警捜査四課の警部。 - 久保恵一:
42歳。N組の若頭。
4.列車プラス・ワンの殺人(大阪)
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 鈴木文一:
小学校の用務員。 - 三島:
小学校の教師。 - 仁村要:
29歳。N自動車のセールスマン。小学校の校庭の砂場で死体で発見される。 - 久保:
N自動車の営業所の所長。 - 三宅:
N自動車のセールスマン。 - 服部和雄:
30歳。明石のマンションに在住。以前、N自動車のセールスマンをしていた。 - 平田まゆみ:
25歳。服部和雄の恋人。5月に自殺した。 - 田中有一郎:
大阪で菓子店を営む。服部和雄の高校時代の同級生。 - 小坂:
摂津にある貨物ターミナルの責任者。 - 斉藤:
W運送明石営業所の所長。 - 安藤:
W運送東京営業所の所長。 - 河原信:
W運送東京営業所の運転手。
5.振り子電車殺人事件(南紀白浜)
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 井上:
白浜駅前の食堂の主人。 - 長谷川:
和歌山県警の警部。 - 田口:
和歌山県警の刑事。 - 崎田徹:
八重洲にある新中央興業の会計課長。白浜駅前の食堂で死亡する。 - 河原勇三:
52歳。八重洲にある新中央興業の社長。元弁護士。 - 池田章子:
27歳。八重洲にある新中央興業の会計課の社員。崎田徹と交際していた。 - 永江幸夫:
35歳。河原勇三の個人秘書兼ボディーガード。 - 三浦:
大阪府警の刑事。
印象に残った名言、名表現
(1)自転車で琵琶湖岸を走る田中刑事。
大きな身体の田中が、自転車に乗った姿は、なかなか、ユーモラスである。
(2)夏の琵琶湖岸サイクリングを楽しむ。
降り注ぐ陽は、真夏のそれで暑いが、湖面を吹いてくる風が、心地よかった。疲れてくると、自転車を止め、魔法瓶から、冷たい紅茶を、のどに流し込む。
(3)天王寺駅は和歌山への玄関口。
この天王寺駅が、南紀への玄関だということが、よくわかる。規模は違うが、上野が、東北、上越への玄関だというのと、よく逃ている。
感想
本作は、京都、滋賀、大阪、和歌山が舞台となった短編集である。
作品タイトルは、「古都に殺意の風が吹く」なので、京都に力点を置いていることがわかる。京都は日本一の観光地であり、インパクトが強い。だから京都を連想させるタイトルにするのもうなずける。また、西村京太郎先生は、京都に住んでいたこともあり、思い入れが強いのだろう。
京都以外が舞台になった「琵琶湖周遊殺人事件」(滋賀)、「列車プラス・ワンの殺人」(大阪)、「振り子電車殺人事件」(和歌山)の3作も、なかなかの秀作である。
とくに、田中刑事が琵琶湖岸をサイクリングするシーンから始まる「琵琶湖周遊殺人事件」(滋賀)は、とくに秀逸だ。普段、なかなか表舞台に立たない田中刑事の優しい人となりが垣間見える、機長な作品でもあるからだ。
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