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十津川警部「殺しはトロッコ列車で」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

殺しはトロッコ列車で小説

初版発行日 2012年5月20日
発行出版社 双葉社
スタイル 長編

POINT】
京都、東京、静岡で起きた1つの殺人未遂事件と、2つの殺人事件。警視庁、京都府警、静岡県警は合同捜査を開始したが、犯人像も被害者の共通点も見つからない。焦燥する十津川警部!一瞬も目が離せないノンストップアクション!
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あらすじ

京都の休日を嵯峨野トロッコ列車観光で楽しんでいた女優の衣川愛理は列車内で奇妙な脅迫行為に遭い、嵯峨野警察署に届け出た。数日後、非常勤講師の野中和江が東京の江戸川土手で殺害される事件が発生。捜査が難航するなか、西伊豆で同様の手口の殺人事件が起きる。警視庁・京都府警・静岡県警の合同捜査が始まった。

なぜ、25歳の独身女性だけが、次々と狙われるのか?

小説の目次

  1. 京都保津
  2. 殺しの方程式
  3. 動機を探る
  4. 電話
  5. 七月十日
  6. 二十五年前の一日
  7. 最後の事件

冒頭の文

衣川愛理は二十五歳。最近になって、人気が出てきた新人女優である。

小説に登場した舞台

  • トロッコ嵯峨駅(京都府京都市右京区)
  • 保津峡(京都府京都市西京区)
  • トロッコ保津峡駅(京都府京都市西京区)
  • トロッコ亀岡駅(京都府亀岡市)
  • 江戸川(東京都江戸川区)
  • 堂ヶ島(静岡県・西伊豆町)
  • らんの里堂ヶ島(静岡県・西伊豆町)
  • 寝台特急カシオペア
  • 羽田空港(東京都大田区)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

警察関係者

  • 木村:
    京都府警の警部。
  • 浜口:
    静岡県警捜査一課の警部。
  • 宮沢恵:
    25歳。世田谷警察署の巡査長。
  • 牧原:
    世田谷警察署の警部。

事件関係者

  • 衣川愛理:
    25歳。新人女優。トロッコ列車で奇妙な脅迫を受ける。
  • 野中和江:
    25歳。S大学院の非常勤講師。独身。江戸川の河原で銃殺される。
  • 松田留美:
    25歳。電鉄の女性社員。独身。らんの里堂ヶ島で銃殺される。
  • 三浦由美子:
    30歳。25年前、ニューヨークで発生した爆破事件で死亡した女性。
  • Kブラッドリー:
    80歳。ニューヨークのデパートのオーナー。
  • Nヒロミ・ブラッドリー:
    25歳。Kブラッドリーの養子。現在、腎臓病を患っている。
  • 新田由圭里:
    55歳。N大学の農学部卒業。長野県N村のラン研究所の副所長。25年前、ニューヨークで発生した爆破事件に遭遇した女性。
  • 新田春美:
    高木由圭里の娘。三浦半島にあるK大学の植物研究所に在籍。

その他の登場人物

  • 杉原美由紀:
    女優。
  • 青木:
    衣川愛理と杉原美由紀のマネージャー。
  • 南さつき:
    28歳。K電鉄の女性社員。松田留美の同僚。
  • 榎本真紀子:
    22歳。K電鉄の女性社員。松田留美の同僚。
  • 三国綾子:
    25歳。世田谷区経堂に在住。
  • 吉川美由紀:
    25歳。新橋の会社の経理。
  • 林由美:
    25歳。母が営む世田谷の喫茶店を手伝っている。
  • 小山樹里:
    25歳。OL。
  • 内村かえで:
    25歳。ピアノ教師。
  • 榊原:
    四谷にある音研究所の所長。
  • 島村俊夫:
    M村ラン研究所の所長代理。

印象に残った名言、名表現

(1)京都の町の素晴らしさ。

京都という町そのものが、東京生まれ東京育ちの愛理にとっては、素晴らしい風景なのだ。特に嵐山は渡月橋もあるし、二宮神社もある。風の吹き抜ける竹林もあるし、その間を走る人力車が、客を待っている光景も、愛理の目には、新鮮に映る。

(2)トロッコ列車の景観。

嵐山トンネルを抜けると、途端に、保津峡の渓谷が、目に飛び込んできた。目の下に保津川が流れ、周辺の山々は、まさに青葉一色である。秋になれば、恐らく紅葉で、この周辺は、真っ赤に染まるのだろう。

(3)刑事たちの昼食。

近くの食堂から、出前を頼んで、ひとまず、食事を、一緒にすることになった。それぞれ、注文を出し、十津川はカツ丼を頼み、亀井はチャーハンを頼んだ。木村警部は、いつも頼むという天ぷらそばセットを、注文した。

(4)行き詰まったら、ときには飛躍も必要。

「たしかに、自分でも、独断的で、リアリティがないことは、よく、わかっています。しかし、今回の事件は、東京も、京都も、奇妙で、まともに、捜査をしていくだけでは、どうしても、壁に、ぶつかってしまいます。そこで、今回の事件には、飛躍が、必要ではないかと考えて、馬鹿げているかもしれませんが、勝手に、想像をたくましくしているのです」

感想

西村京太郎先生の十津川警部シリーズは、1973年の「赤い帆船」から始まった。そこから、半世紀近くも活躍している。ここまで長く第一線で活躍した刑事シリーズは、他にないと思う。

この十津川警部シリーズは、時代によって作風が変わったと、私は感じている。1970年代、80年代、90年代は、スピード感があり、切れ味も鋭く、一瞬たりとも目が離せない、ミステリーとアクションに主眼が置かれていた、と感じる。ひとつひとつの地文や会話のセンテンスも、短く、読みやすさを意識した作風だった。

2000年代以降から、少し趣が変わったように感じる。日本各地の歴史や、その当時話題になっている社会問題を深堀りする作品が多くなった、と思う。歴史や社会問題を扱うので、当然、その背景を説明する文章が必要であり、地文や会話のセンテンスが長くなる傾向にある。

これまでさまざまなミステリー作品を出し尽くし、読者向けの作品はやり切ったたので、2000年代以降は、自分が興味のある歴史や社会問題を取り上げたいと、自分が好きなことをやりたいと、先生が考えたのかもしれいと、思っている。

本作は、2012年に刊行された作品である。

この作品は、70年代、80年代、90年代の十津川警部シリーズを、彷彿とさせる作品だった。最初からいきなり引き込まれ、次々と事件が起きる。スピード感があり切れ味も鋭い。派手なアクションもある。最後の最後まで何が起こるかわからない。読者は常にドキドキし、次の展開を固唾を呑んで見守るのだ。

もちろん、トラベルミステリーとしての旅情も忘れていない。今回は、風光明媚な、嵯峨野観光鉄道・トロッコ列車が舞台だった。

スピード感、切れ味鋭いミステリー、旅情。かつての西村京太郎先生の作風を、存分に楽しめる、極上のミステリー作品を、ぜひ堪能してほしい。

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