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十津川警部「アキバ戦争」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

アキバ戦争小説

初版発行日 2008年5月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編

POINT】
メイド喫茶、フィギュア、ラーメン缶、電気街。2000年代半ばの秋葉原を舞台に起こる誘拐事件!オタクたちが大活躍!
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あらすじ

「おかえりなさいませ、ご主人様」秋葉原のメイド喫茶を訪れた日本画家・衣川円明いかわえんめいは、亡くなった娘・あすかによく似たメイドと出会う。彼女の名前は県明日香あがたあすか。名前まで一緒だ。「故郷の山形に帰る前に、自分をモデルにしてほしい」という明日香の頼みに、日本画の最高峰と称されながら個展を開くことも絵を売ることもほとんどなかった孤高の画家は、娘のかわりに彼女の夢をかなえようと、一流ブランドで服を買い与え、高級ホテルで父娘の生活を楽しんだ。だが翌日「娘の明日香を誘拐した」という電話が。身代金は一億円!

本作の謎は、「県明日香は本当に誘拐されたのか?

小説の目次

  1. メイド喫茶
  2. 誘拐
  3. つばさ110号
  4. 容疑者一号
  5. オタク三銃士
  6. バーチャルゲーム
  7. 共同戦線
  8. 非常線張レ
  9. 突撃セヨ

冒頭の文

日本画家、衣川円明いかわえんめいは、去年、六十歳の還暦を迎えた。

小説に登場した舞台

  • 秋葉原(東京都千代田区)
  • 東京駅(東京都千代田区)
  • 仙台駅(宮城県仙台市青葉区)
  • 北千住駅(東京都足立区)
  • 流山セントラルパーク駅(千葉県流山市)
  • 新守谷駅(茨城県守谷市)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 片山明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 衣川円明:
    日本画家の最高峰。足立区にアトリエを持つ。
  • 菊村多恵子:
    画商。銀座の菊村画廊のオーナー。54歳。
  • 県明日香:
    秋葉原のメイド喫茶で働いている女性。
  • 柿崎晃:
    35歳。玩具会社の開発部主任。フィギュア作家。城萌え三銃士の一人。
  • 島本裕司:
    36歳。N電機の営業一課係長。コンピューターのマニア。城萌え三銃士の一人。
  • 溝口伸一:
    30歳。M生命の管理課の事務。エアガン作りのマニア。城萌え三銃士の一人。
  • 鴨下克之:
    秋葉原の鴨下電機の社長。
  • 原田恵一:
    32歳。渋谷区初台に住む男。
  • 有賀徹:
    経営コンサルタント。

その他の登場人物

  • 菊村要:
    30歳。菊村多恵子の息子。
  • 野口新平:
    個人タクシーの運転手。
  • 野口田津子:
    野口新平の妻。
  • 木村春奈:
    秋葉原のメイド喫茶で働いている女性。以前、県明日香と一緒に暮らしていた。
  • 井上:
    JR東日本の車掌。
  • 佐藤:
    JR東日本の車掌。
  • 水上:
    東京駅の駅員。
  • 安藤圭子:
    35歳。菊村多恵子が経営する銀座の菊村画廊の従業員。
  • 加藤:
    アキバのメイド喫茶の社長。
  • 三浦:
    コンピューターの専門家。
  • 金子:
    科研の技師。
  • 菅原聖一郎:
    秋葉原の鴨下電機の営業課長。

印象に残った名言、名表現

(1)西村京太郎先生と同じである。

衣川は、その頃から、絵の技術は抜きんでていた。それが、四十歳を過ぎてから、急に世間が、認めるようになった。

(2)現代の秋葉原。

今のアキバは、二つの世界に分かれているように見える。片方は、昔ながらの古い電気街、そしてもう一つは、新しいビルがそびえる新しい技術の街、そしてその中間に、風俗街がある。

感想

秋葉原は、日本の文化の中心になった、と言われてから久しい。

かつては、電気街しかなく、一部の”マニア”しか行きたがらない場所であった。だが、メイド喫茶やローカルアイドルに代表される”アキバ文化”が定着したことで、”オタク”や外国人観光客が殺到するようになった。いまでは、その”オタク文化”が、社会的に認知され、大衆化されたことで、誰もが足を運ぶ場所にまで成長した。

この”アキバの躍進”が目立つようになったのが、本書が刊行された、2000年代半ば頃からだったのである。だから、本作は、社会情勢、潮流を作品に取り入れる、西村京太郎先生の柔軟さと、アンテナの高さを象徴した作品なのである。

当然ながら、舞台は秋葉原。登場人物は、アキバを象徴するメイドとオタクたち。

メイドが誘拐され、それを警察が追うという構図ならば、普通の作品であるが、ここにオタクたちが絡んでくるのが面白い。そして、オタクたちが警察を凌駕するような、調査力を発揮するのである。

この作品を執筆するにあたり、西村京太郎先生も実際に秋葉原へ取材に訪れ、秋葉原の空気を味わった。徳間書店には、秋葉原での西村京太郎先生の様子が次のように書かれていた。

おでん缶を口にした西村氏は「なかなかいけるね」。次に訪れたメイド喫茶では、ケチャップでドラえもんの絵が描かれたオムライスを味見。同行した編集者より街に馴染んでいた。

本書を読むと、2000年代半ば当時の秋葉原の様子、空気感がよくわかる。

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