初版発行日 2008年2月25日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編
現代の英雄vs十津川警部!天草四郎は何の罪を犯したのか?十津川警部苦悩の推理!
あらすじ
二人組の強盗犯の前に一人の男が現れ、杖一本で犯人を打ち伏せてしまう。天草四郎と名乗った男は、一ヶ月後にも四人組の宝石強盗を杖一本で撃退!この武勇伝により、彼は一躍国民的英雄となった。さらに脅迫犯退治は続き人気は沸騰するが、一切自分の身許を語らない天草四郎に、十津川の友人の新聞記者が疑惑の目を向ける。「正義の味方」の目的は?その正体に十津川が迫る!
小説の目次
- 英雄の出現か
- 称賛と疑問
- 栄光と疑惑
- 波乱の兆しあり
- 告発された天草四郎
- 少年の思い出
- 何の罪を犯したか?
冒頭の文
甲州街道、明大前付近、午前二時。
正確にいえば、午前二時八分、パトカーに追われた、白いスポーツカーが、猛スピードで逃げてきて、突然、脇道に、滑り込んでいった。
小説に登場した舞台
- 長崎県島原市
- 原城跡(長崎県島原市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 高橋大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者:
- 天草四郎:
40歳。長崎県島原市出身。杖を使って次々と強盗犯を倒す謎の男。 - 天草典子:
天草四郎の母親。 - 戸田圭介:
30歳。現金とスポーツカーの強盗事件で天草四郎に倒されて逮捕される。 - 小西慎二:
37歳。現金とスポーツカーの強盗事件で天草四郎に倒されて逮捕される。 - 村田実:
35歳。四谷三丁目のマンションに在住。六本木のSホテルで宝石強盗を働いたが、天草四郎に倒され逮捕される。 - 阿川慎太郎:
35歳。信濃町のマンションに在住。六本木のSホテルで宝石強盗を働いたが、天草四郎に倒され逮捕される。 - 長池俊介:
32歳。新大久保のマンションに在住。六本木のSホテルで宝石強盗を働いたが、天草四郎に倒され逮捕される。 - 大内幸雄:
36歳。幡ヶ谷のマンションに在住。六本木のSホテルで宝石強盗を働いたが、天草四郎に倒され逮捕される。 - 大田原:
日本ジュエリーの社長。 - 小池清一郎:
小池自動車の社長。 - 小松原:
外務大臣。48歳。 - 大垣:
政治家。前総理大臣。 - 尾崎健二:
38歳。無職で独身。八王子市に在住。 - 合田肇:
40歳。平成維新を名乗るグループのリーダー。 - 浅野俊一:
25歳。平成維新を名乗るグループのメンバー。 - 黒川聡:
平成維新を名乗るグループのメンバー。 - 島田隆史:
平成維新を名乗るグループのメンバー。 - 小森憲介:
60歳。弁護士。長崎県島原市の出身。郷土史家としての一面をもつ。
その他の登場人物
- 関根浩志:
六本木のSホテルの保安主任。 - 後藤:
六本木のSホテルの副社長。 - 青木雅史:
日本ジュエリーの社員。 - 渡辺康之:
日本ジュエリーの社員。 - 沢田:
小池自動車の秘書。 - 佐藤:
小松原外務大臣の秘書。 - 三枝:
小池自動車の顧問弁護士。 - 田島:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 合田圭子:
合田肇の妻。 - 河野:
弁護士。 - 沢田一心:
上板橋で合気道の道場を開いている。 - 谷田公誠:
60歳。棒術の師範。 - 高橋広志:
谷田公誠の弟子。 - 会田総子:
武蔵小金井の総合病院の看護師。 - 小林亜矢子:
都内の高校教師。歴史を教えている。 - 本橋光一郎:
64歳。元教師。日本キリシタン史研究会の代表。 - 三浦勝:
30歳。戸田圭介と小西慎二の友人。 - 宇田川:
弁護士。 - 江上徹:
40歳。調布市の町内会長。 - 渡辺明:
尾崎健二が住むマンションの管理人。 - 小暮真理子:
45歳。八王子の雑居ビルの地下にあるバーのママ。 - 柳田:
警視庁捜査二課の警部。 - 井上純一:
45歳。チャンバラスクールの校長。 - 篠塚:
島原市の派出所の巡査長。 - 藤本:
検事。
印象に残った名言、名表現
■長年刑事をして、多くの人間を見てきた十津川警部だからこその人物眼。
「完璧なんだ。しかし、私は、その完璧さに、なぜか、引っ掛かるものを感じてしまうんだ。なぜ、天草四郎は、そんなに完璧なんだろう?」
感想
日本は法治国家である。だから、法律を犯した者は犯罪者とみなされ、法で裁かれる。当然、犯罪にもさまざまな種類があり、罪の重さも異なる。
ただ、法律を犯したものは、一様に”犯罪者”と呼ばれてしまう。
現代は、法律を犯した者は、何もかもすべて悪いのだ、という風潮がある。法を犯した背景、経緯、内容問わず、”犯罪者”という言葉で一括にされ、人間性まで否定される。
インターネットやSNSが発達した現代は、わかりやすい言葉がひとり歩きしやすいため、この”犯罪者”という、わかりやすいレッテルが貼られやすくなった。そして、デジタルタトゥーとして、永遠に残ってしまうのだ。
しかし、その”違法行為”によって誰も傷つられていないのならば、その”犯罪者”を、全否定すべきなのか?「小さな善ですべてを裁く」、そんな人間が幅を利かせる現代の風潮において、考えさせられるテーマである。
本作のタイトルは、「天草四郎の犯罪」。
このタイトルに、本作の主張が込められていると、思う。そして、この作品のメッセージこそ、小さな善ですべてを裁く、現代の風潮へのアンチテーゼなのではないか?私はそう考える。
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