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十津川警部「幻想の天橋立」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

幻想の天橋立小説

初版発行日 2007年3月10日
発行出版社 集英社
スタイル 長編

私の評価 3.0

POINT】
十津川警部、天橋立と東京を結ぶ驚愕の連続殺人に挑む!
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あらすじ

京都・宮津。建設会社社長中西は、”東京の病院で監禁されているので助けて欲しい”という手紙が結ばれた風船を発見。内容を信じた中西は、東京の探偵事務所に調査を依頼。都内病院を探るが進展のないまま、第二の風船が天橋立の展望台で拾われ……。やがて、疑わしい家が炎上、お抱え運転手が殺害される。この殺人と監禁の謎を解くため、十津川警部は、宮津へ。

小説の目次

  1. ゴム風船
  2. 二つ目の風船
  3. 雨の橋立
  4. 女の位牌
  5. 火事とゴム風船
  6. 推理合戦
  7. 幻想から現実へ

冒頭の文

阿部純子は、新宿のマンションの一室を使って、一人で、探偵事務所を開いている。

小説に登場した舞台

  • 京都駅(京都府京都市下京区)
  • 天橋立駅(京都府宮津市)
  • 天橋立(京都府宮津市)
  • 傘松公園(京都府宮津市)
  • 宮津駅(京都府宮津市)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。

私立探偵

  • 橋本豊:
    私立探偵。警視庁捜査一課の元刑事で十津川警部の部下。
  • 阿部純子:
    新宿の私立探偵。橋本豊の大学時代の同級生。
  • 木下:
    私立探偵。橋本豊や阿部純子とともに、佐々木香織捜索の仕事をする。
  • 相川進:
    私立探偵。橋本豊や阿部純子とともに、佐々木香織捜索の仕事をするが、途中で離脱する。

事件関係者

  • 中西勲:
    宮津にある中西建設の社長。阿部純子のもとに、佐々木香織捜索の依頼をする。
  • 佐々木香織:
    25歳。奥寺交易の従業員。中西勲が探している女性。現在は行方不明。
  • 奥寺誠:
    55歳。銀座にある奥寺交易の社長。天橋立に別荘がある。
  • 奥寺美奈子:
    48歳。奥寺誠の妻。
  • 川上康司:
    35歳。奥寺誠のお抱え運転手。隅田公園で死体になって発見された。
  • 谷本夏美:
    25歳。奥寺交易の元従業員。現在は行方不明。
  • 田村:
    京都にある田村病院の院長。

その他の登場人物

  • 市橋:
    奥寺誠の顧問弁護士。
  • 木下明日香:
    新宿歌舞伎町にあるクラブのホステス。川上康司と親しくしていた。
  • 北原圭介:
    K交通のタクシー運転手。浅草の仲見世近くに在住。川上康司の競馬仲間。
  • 加藤猛:
    浅草にある天ぷら屋の店主。奥寺夫妻や川上康司の行きつけだった。
  • 三木:
    宮津警察署の警部。
  • 北村:
    60歳。奥寺誠が雇った弁護士。

印象に残った名言、名表現

(1)傘松公園。

傘松公園は、天橋立を見物するのに、いちばん、ふさわしい場所だという。そのため、観光客の大部分は、観光バスで、傘松公園に向かうのだ。

(2)今回の事件には、悪意がある。

「どうも今回の事件は、われわれ、捜査一課が調べている事件もそうだが、君たちが、依頼を受けて調査をしている事件にも、何か、人間の悪意のようなものを、感じるんだよ。誰かが、われわれに対して、ウソを衝いているのかも知れない。いや、誰か一人ではなくて、誰かと誰かが、ウソをついて、われわれを、困らせているのかも知れない。」

感想

天橋立が見える傘松公園の展望台で、風船が飛んできた。その風船を偶然、中西勲が拾った。その風船は東京から飛んできたもので、そこには手紙がついていた。その手紙の主は、佐々木香織で、「どこかに監禁されているから助けてほしい」という。

中西勲は、その手紙をもって東京の私立探偵に、佐々木香織の捜索を依頼する……。こんなメルヘンチックな、エピソードから物語がスタートする。

そして、依頼を受けた阿部純子や橋本豊ら探偵が、佐々木香織の捜索を開始する。やっとのことで、怪しいと思っている邸宅を発見したが、その邸宅は火事で全焼してしまった。その後、その邸宅のお抱え運転手が殺されていたことから、十津川警部らが捜査に乗り出す。ここで、殺人事件の捜査がスタートするのだ。

橋本豊らの捜索と、十津川警部らの捜査が、天橋立で交錯し、同一事件になっていくというあらましである。

ここからの話は、ここで明かすことはできないが、怒涛の終盤は「さすが十津川警部シリーズ」と思わせるスピード感で、今まで行き詰まっていた捜査が、一気に解決する。それは、まるでドミノ倒しのような爽快感があった。

だが、終盤に至るまでの推理行は、少々長ったらしい印象をうけた。十津川警部を中心とした会話で、推理を進めていくのが、十津川警部シリーズの十八番だが、この会話の部分が、やや冗長なのだ。また、会話上の確認とはいえ、同じ内容を何度も繰り返しているのも、いただけない。

「また、同じことを話しているなぁ」と、感じることが何度もあった。

こうした冗長さだけが残念だが、最後の解決の部分は、切れ味鋭く、スピード感がある。動機も納得いくものであった。

ちなみに、天橋立は十津川警部シリーズで、何度も登場している。例えば、2012年刊行の「猫と死体はタンゴ鉄道に乗って」や、2007年刊行の「若狭・城崎殺人ルート」でも、天橋立が舞台になっている。こちらもおすすめだ。

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