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十津川警部「帰郷・会津若松」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

帰郷・会津若松小説

初版発行日 2001年11月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編

私の評価 3.6

POINT】
実在か?幻か?会津娘子隊の面影を引く女。義憤が招く悲劇。十津川の推理が冴え渡る!
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あらすじ

会津藩と薩長との戦いで、女性部隊である会津娘子隊を率いた中野竹子は、凛とした風情を湛える絶世の美女としても有名だった。その竹子の面影を引く女と、彼女への憧れを抱く男。男が引き起こした殺人事件は、十二年前、十津川によって解決されたはずだったが……。

小説の目次

  1. 帰郷
  2. SL列車の男
  3. ならぬものはならぬ
  4. 選挙戦
  5. 旧家の娘
  6. からくり芝居
  7. 最後の戦い

冒頭の文

六月五日の午前十時。
一人の男が、府中刑務所を、出所した。

小説に登場した舞台

  • 府中刑務所(東京都府中市)
  • 府中駅(東京都府中市)
  • 東京駅(東京都千代田区)
  • 郡山駅(福島県郡山市)
  • 特急ビバあいづ号
  • 会津若松駅(福島県会津若松市)
  • 東山温泉(福島県会津若松市)
  • 鶴ヶ城(福島県会津若松市)
  • 福島駅(福島県福島市)
  • SLばんえつ物語号
  • 喜多方駅(福島県喜多方市)
  • 白虎隊士十九士の墓(福島県会津若松市)
  • 中野竹子殉節碑(福島県会津若松市)
  • 小田原(神奈川県小田原市)
  • 飯坂温泉(福島県福島市)
  • 山下公園(神奈川県横浜市中区)
  • 奥多摩(東京都・奥多摩町)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

警察関係者

  • 沢田:
    会津若松署の警部。
  • 鈴木:
    神奈川県警の警部。

事件関係者

  • 高木正幸:
    41歳。12年前、代議士・水谷新平の殺人罪で十津川が逮捕し服役していたが、出所した。福島県会津若松市出身。
  • 佐々木綾:
    服役中の高木正幸に手紙を送ってきた女性。
  • 水谷新平:
    福島県選出の代議士。12年前、高木正幸に殺害される。
  • 安田行成:
    49歳。福島県選出の代議士。かつて水谷新平の秘書をしていた。大学時代はラグビー部。
  • 松下:
    安田行成の顧問弁護士。
  • 小松正順:
    35歳。東京都世田谷区在住。無職。福島県の猪苗代出身で安田行成と同じ大学を卒業している。会津若松で高木正幸を尾行していた男。SLばんえつ物語号の車内で殺される。
  • 木村信介:
    ハローワークで高木正幸に美味しい仕事があると誘ってきた男。
  • 池田浩子:
    当時21歳。会津若松市内の旧家・池田家の娘。福島のN大学に通う大学生。中野竹子の面影をひく美女として有名だった。12年前に病死している。
  • 池田多江子:
    池田浩子の親戚。
  • 沖山:
    私立探偵。
  • 木下健治:
    35歳。フリーター。

その他の登場人物

  • 千代香:
    飯坂温泉の置屋の女将。12年前、芸者をしており、水谷新平や高木正幸と親しくしていた。
  • 倉田:
    会津若松液前にある観光案内所の所長。
  • 三村祐美:
    池田浩子の大学の同級生だった女性。
  • 木村治美:
    池田浩子の大学の同級生だった女性。
  • 鈴木敬子:
    池田浩子の大学の同級生だった女性。
  • 佐々木良介:
    池田家の秘書。
  • 井上由美:
    沖山の探偵事務所で働く事務員。

印象に残った名言、名表現

(1)事件は終わらない。

十二年の刑務所暮しで、全てが、終ったと思っていたのだが、依然として、過去が、断ち切れずにいたのだと思った。

彼が、もう忘れたいと思っても、周囲が、忘れさせてくらないのだと、悟った。

(2)歳を取ると純粋さを失う。

「長く行きていると、いろいろと、垢がついて、人間が卑しくなりますから」

感想

本作は、会津若松のこと、その中でも会津戦争で娘子隊として戦場に出て、18歳の若さで戦士した中野竹子をテーマにした作品である。

会津若松の歴史、会津戦争、会津娘子隊のことを深く掘り下げており、大変興味深い。また、「ならぬものはならぬ」という会津人の頑固な気質が、登場人物に組み入れられている。

不器用だけど、真っすぐで純粋。愛する女のために人を殺め、すべてを失った男の姿が、哀愁ただよい涙を誘う。

西村京太郎先生も、本作の意図について次のように説明していた。

会津若松には三回行っているが、最初に、白虎隊士の墓を見たときのショックは、今も忘れられない。ずらりと並ぶ墓石に、全て、十六、十七歳で死んだことが刻まれていたからである。義のためには死をいとわない、頑固さ、いさぎよさが胸を打つ。この小説の主題は、それである。

こうした会津の気質を作中に漂わせ、サスペンスフルな事件として、読み応えがあった。

ただし、終盤があまりにも急展開すぎたのが、残念だった。”ウルトラC”を使って、すべてを一気に解決してしまった感じである。いつもの十津川警部シリーズのように、ロジカルに迫っていって欲しかった。

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