初版発行日 2008年12月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
私の評価
犬が東京からお伊勢参りに向かう!この裏に隠された、大金をかけたゲームと、メンツと維持の張り合い!
あらすじ
犬がお伊勢参り!?警視庁捜査一課の十津川警部は、妻の直子から話を聞いて驚いた。直子が参加している「東京ゴールデンレトリバーの会」会長の小原が、愛犬・茶々を単独で東京から伊勢神宮まで参拝させようというのだ。茶々が出発した翌日、自由が丘で男性の刺殺体が発見された。ポケットにはBB弾の入ったガスガンが。現場近くの路上で、首に札をぶら下げたゴールデンレトリバーが目撃されていた。被害者の木村豊は、ある大物の下で働いていて、近く大金を手にすると友人に話していたという。
小説の目次
- 犬の伊勢参り
- サバイバルゲーム
- 二枚のポスター
- ライバル
- 五億円×2
- ゲームの行方
- レースの結末
冒頭の文
警視庁捜査一課の十津川警部は、結婚したものの、なかなか、子供ができないから、しばらくの間、二人住まいである。
小説に登場した舞台
- 特急伊勢志摩ライナー
- 宇治山田駅(三重県伊勢市)
- 赤福本店(三重県伊勢市)
- 伊勢神宮(三重県伊勢市)
- おかげ横丁(三重県伊勢市)
- つぼや(三重県伊勢市)
- 五十鈴茶屋 本店(三重県伊勢市)
- 宇治橋(三重県伊勢市)
- 参宮橋(三重県伊勢市)
- 神宮会館(三重県伊勢市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 小原実:
60歳。小原サービスの社長。「東京ゴールデンレトリバーの会」の会長。 - 茶々:
小原が飼うゴールデンレトリバー。 - 木村豊:
29歳。拳銃マニア。サバイバルゲームのクラブに入っていた。自由が丘近くで死体になって発見される。 - 中村浩介:
29歳。コンビニのアルバイト。サバイバルゲームクラブの会員。現在、行方不明。 - 金子義郎:
30歳。サラリーマン。サバイバルゲームクラブの会員。現在、行方不明。 - 黒田勲:
55歳。ジャパン物流の社長。日本動物保護協会の理事長。「犬のお伊勢参りに反対する会」の会長。 - 小野寺治:
68歳。三重県選出の代議士。元国務大臣。伊勢神宮の遷宮祭の実行委員。 - 三宅新太郎:
65歳。ファーストフードチェーンの社長。伊勢神宮の遷宮祭の実行委員。元文化庁の役人。 - 柴田邦夫:
小原サービスの臨時社員。
その他の登場人物
- 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 小原絵理香:
小原実の妻。「東京ゴールデンレトリバーの会」の副会長。 - 中村:
警視庁初動捜査班の警部。 - 磯辺信一郎:
26歳。自由が丘駅近くのマンションに住むサラリーマン。 - 後藤文彦:
サバイバルゲームクラブの会員。 - 岡田修:
三鷹にあるガンショップ「岡田商店」の店主。サバイバルゲームクラブの会員。 - 大崎要:
50歳。伊勢神宮の神官。 - 斉藤かおり:
「東京ゴールデンレトリバーの会」の会員。十津川直子の友人。 - 遠藤:
伊勢市内で日本そばの店を営む。小原実、黒田勲の小学校時代の同級生。 - 安藤:
都内在住。小原実、黒田勲の小学校時代の同級生。 - 島田:
都内在住。小原実、黒田勲の小学校時代の同級生。 - 鈴村明彦:
新宿の喫茶店「ガン二〇〇八」を営む。「エアガンとガスガンを楽しく遊ぶ会」の会長。 - 小野寺富美子:
小野寺治の妻。元総理大臣の娘。 - 三木:
三重県警の警部。 - 真田:
小原実の顧問弁護士。
印象に残った名言、名表現
(1)五十鈴川を眺めながら、赤福餅を食べる。
赤福本店に行くと、相変わらず、人々で、ごった返していた。何とか、川沿いの、床几に、腰を下ろすことができて、運ばれてきた赤福餅とお茶を、五十鈴川を、見ながら、食べることになった。
(2)にぎやかなおかげ横丁。
真新しいが、アンティークな、昔風の建物が、横丁の周辺に、集まっている。いろいろな店がある。
赤福の本店があり、支店があり、抹茶や和菓子の喫茶店がある。伊勢かまぼこの店がある。手作りケーキの店がある。こんにゃく作りを体験できる店がある。伊勢たくあんを売っている店、人形の店もある。
江戸時代そのままの造りの、おかげ座という、芝居小屋がある。中は歴史館になっている。
感想
本作は、ゴールデンリトリバーが、ある意味、メインキャラクターになっている。本作のように、動物がメインキャラクターとして登場する作品は、2012年刊行の「猫と死体はタンゴ鉄道に乗って」をはじめ、いくつかあるものの、あまり多くはない。
そういう意味で、本作は、十津川警部シリーズの中でも珍しい作品だと思う。
このゴールデンリトリバーが、東京から伊勢に向かい、伊勢参りをするという、仰天プランがスタートすることが、事件の発端であり、事件のすべてであった。
この仰天プランは、ゲームになっている。このゲームの裏には、とある幼馴染同士の因縁が衝突していた、という構成である。このゲームの中に、人間ドラマがあり、殺人事件が起こったのだ。
また、本作は、伊勢神宮が舞台になっている。おかげ横丁、赤福本店、つぼや、五十鈴茶屋、参道、宇治橋、神楽殿、御正宮、参宮橋など、伊勢神宮周辺の様子がありありと描かれており、脳内で旅を楽しむことができる。作中のところどころで登場する、伊勢の町の描写は、秀逸である。
ちなみに、舞台として伊勢神宮が登場した作品は2008年刊行の「近鉄特急 伊勢志摩ライナーの罠」、2010年刊行の「鹿島臨海鉄道殺人ルート」などがある。
とくに、「近鉄特急 伊勢志摩ライナーの罠」は、伊勢志摩が舞台になっているので、こちらもぜひ、読んでもらいたい。
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