初版発行日 1997年11月25日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
読者の意表をついた誘拐犯罪ーそのまったく新しい手口に敢然と挑む十津川警部の推理が冴える!
あらすじ
T芸能に所属する人気女優・桂アヤが「青い蛇」を名乗るグループに誘拐され、まんまと一億円を奪取された!犯人からの指示で西伊豆に向かったT芸能社長・五十嵐は、捜査陣に内密に犯人と接触し、無事アヤを釈放させるのに成功した。ところが社長は、それ以降なぜか十津川警部たちの捜査に非協力的に……。犯人と五十嵐の間で何が取引されたのか?西伊豆に隠された暗い過去とは?十津川たちが”西伊豆の真相”に迫ったそのとき、嘲笑うかのように、さらに新たな誘拐事件が起こった!
小説の目次
- 誘拐
- 伊豆の海
- 事件の真相
- 組織
- 蛇の正体
- 最後の旅
冒頭の文
最初は、単なる(おかしないい方だが)誘拐事件に見えた。
小説に登場した舞台
- 晴海埠頭(東京都中央区)
- 英国大使館(東京都千代田区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 三島駅(静岡県三島市)
- 伊豆長岡温泉(静岡県伊豆の国市)
- 三津浜海岸(静岡県沼津市)
- あわしまマリンパーク(静岡県沼津市)
- 大瀬崎(静岡県沼津市)
- 戸田港(静岡県沼津市)
- 羽田空港(東京都大田区)
- 南紀白浜空港(和歌山県・白浜町)
- 南紀白浜温泉(和歌山県・白浜町)
- 特急オーシャンアロー号
- 伊丹空港(大阪府豊中市)
- 浦安ヘリポート(千葉県浦安市)
- 多磨霊園(東京都府中市&小金井市)
- 深大寺(東京都調布市)
- 草津高原オートキャンプ場(群馬県・草津町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 金田刑事:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 小高:
戸田派出所の巡査部長。 - 鈴木:
四谷三丁目派出所の巡査。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。
事件関係者
- 桂アヤ:
28歳。本名・桂麻也。T芸能プロダクションの看板女優。四谷のマンションに在住。何者かに誘拐される。 - 阿部ユキ:
6歳。戸田町で雑貨店を営む夫婦の娘。3年前、車ではねられて死亡する。 - 阿部真治:
阿部ユキの父親。新宿にある東亜不動産屋で事務をしている。娘の死後、戸田町の雑貨店を閉め、夫婦で東京に引っ越す。 - 阿部美津江:
阿部ユキの母親。 - 北野勇:
北野製薬の社長。三上刑事部長の友人。 - 北野英子:
北野勇の妻。 - 北野修:
28歳。北野勇の息子。北野製薬の営業部長。何者かに誘拐される。その後、深大寺で死体となって発見された。 - 板倉かずえ:
22歳。R大学仏文科の女子大生。北野修にフラレて自殺した。 - 板倉:
板倉かずえの父親。東京・八重洲に本社のある太陽工業で管理部長をしている。 - 板倉由美子:
板倉かずえの母親。 - 原田明子:
35歳。元女優。渋谷区本町のマンションに在住。 - 田之倉章:
43歳。四谷三丁目にあるイタリアンレストラン「エノテカ」のオーナー。 - 最上正治:
27歳。イタリアンレストラン「エノテカ」の従業員。 - 細川信彦:
中央テレビのニュース番組のディレクター。 - 小泉志郎:
26歳。N探偵社に勤務する私立探偵。元栃木県警の警官。 - 中山征:
50歳。中山精工の社長。 - 中山京子:
38歳。中山征の妻。 - 中山光司:
中山夫妻の息子。R中学に通う三年生。誘拐される。 - 小野弘:
中山光司のクラスメート。今年4月に自殺した。 - 小野徳治:
67歳。首都高速霞が関料金所の職員。小野弘の祖父。
その他の登場人物
- 宇垣修:
俳優。 - 加藤茂:
T芸能プロダクションの社員。 - 井上:
T芸能プロダクションの社員。桂アヤのマネージャー。 - 五十嵐:
T芸能プロダクションの社長。 - 金田健:
T芸能プロダクションの秘書。 - 佐伯:
T芸能プロダクションの顧問弁護士。 - 大原:
代議士。元総理大臣。T芸能プロダクションの特別顧問。 - 若林:
中央テレビのプロデューサー。 - 戸井あずさ:
21歳。女優の桂アヤのそっくりさん。 - 日高司郎:
28歳。俳優の宇垣修のそっくりさん。 - 戸塚徹:
シナリオライター。桂アヤが主演した伊豆を舞台にした2時間サスペンスドラマの脚本を書いた。 - 小原:
東亜不動産屋の庶務課長。阿部真治の上司。 - 吉沢みどり:
モデル。北野修の恋人。 - 小倉悠二:
アウトドアの専門家。 - 古賀清:
俳優。バイプレイヤー。東京・武蔵境に在住。1ヶ月前に死亡する。 - 古賀文子:
古賀清の妻。 - 井上:
W映画の責任者。元俳優。 - 田上ゆきえ:
女優。15年前、原田明子と同じ大部屋にいた。 - 花井:
タクシー運転手。 - 川井一馬:
大手町にある貿易会社の営業課長。田之倉章の大学時代の同級生。 - 星野圭介:
経営コンサルタント。田之倉章の大学時代の同級生。 - 青山和夫:
総会屋。元暴力団組員。
印象に残った名言、名表現
(1)誘拐事件の常識。
「第一に、犯人との電話を、できるかぎり長く引き延ばすこと。第二は、必ず人質の安否を確認する。第三は、そのために人質の声を聞かせるように要求することの三つです」
(2)駿河湾沿いの風景。
入り組んだ海岸沿いに走るので、刻々と、景色が変わる。駿河湾をへだてて、富士山が、見えかくれする。やがて、純白の美しい船が見えてきた。
(3)2時間サスペンスドラマでよくあるシーン。
「この大瀬崎の突端に犯人が追いつめられて、自殺し、人質は解放されるのが、ドラマの結末になっています」
(3)十津川警部の訓示。
「慎重に、かつ、大胆に行動してほしい」
感想
今回は、誘拐を代行するビジネスが、テーマだった。
確かに、誘拐というものは、特別なスキルが必要なのかもしれない。普通の一般人が誘拐を行おうと思ったら、恐らく、どこかでミスをしてしまうのだろう。
だから、誘拐の方法や手順をノウハウとしてもつ”誘拐のプロ”がいたら、頼む人がいるのかもしれない。
誘拐ビジネスという言葉は、日本では聞き馴染みがないが、海外では実際にあるらしい。この点については、西村京太郎先生が発表した「作者のことば」で解説されている。
いつか日本でも、誘拐ビジネスといったものが出現するのではないかと考えるようになった。政情不安な南米ではよくあるらしいのだが、日本では、どんな形で現われるだろうか?
南米などでは、文字どおりビジネスライクにやるらしい。しかし、日本人の特性として、そんなに乾いた行動はとれないだろうと考える。どこかで、自分のしていることには正義があるのだと考えるのが、日本人ではないのか。そんなことを考えながら、誘拐ビジネスに走った犯人像を描いてみた。それがこの作品である。
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