初版発行日 1989年4月20日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
のどかな四国の旅情を誘う風景のなかで、腐敗した組織に怒りを込めて悠然と立ち向かう、十津川&亀井のトラベル・ミステリー!
あらすじ
警視庁捜査一課の若い刑事、三田村は、四国へ旅に出たまま行方不明になってしまった叔父夫婦を探し出すため、従妹と一緒に旅に出た。ところが旅の途中で二人が乗った特急「しまんと」の車中で殺人事件が発生し、さらに足摺岬での転落死事件を巡り、叔父が殺人の容疑者として追われることになった……。二つの事件を結ぶ見えない糸を辿り、十津川と亀井は四国へ向うが、そこには恐しい罠が……。
小説の目次
- 青い海の国
- 足摺岬
- 疑惑
- 海中展望塔
- 祈る男
- 呪殺
- 霊力との戦い
- 誘拐
- 脱出阻止
- 奇妙な本
- 再出発
冒頭の文
警視庁捜査一課の若い刑事、三田村功は、幼い時に両親を亡くし、姉の友子と二人、叔父夫婦に育てられた。いわば、親代りである。
小説に登場した舞台
- 東京駅(東京都千代田区)
- 寝台特急「瀬戸」
- 児島駅(岡山県倉敷市)
- 高松駅(香川県高松市)
- 特急「しまんと3号」
- 高知駅(高知県高知市)
- 長尾鶏センター(高知県南国市)
- 高知城(高知県高知市)
- 桂浜(高知県高知市)
- はりまや橋(高知県高知市)
- 須崎駅(高知県須崎市)
- 窪川駅(高知県・四万十町)
- 土佐佐賀駅(高知県・黒潮町)
- 中村駅(高知県四万十市)
- 足摺岬(高知県土佐清水市)
- 宇和島城(愛媛県宇和島市)
- 足摺宇和海国立公園(愛媛県・愛南町)
- 天然ミュージアム・足摺海底館(高知県土佐清水市)
- 八王子駅(東京都八王子市)
- 三鷹駅(東京都三鷹市)
- 急行「うわじま8号」
- 松山駅(愛媛県松山市)
- 道後温泉(愛媛県松山市)
- 岡山駅(岡山県岡山市北区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。叔父で育ての親が行方不明になったと知らされ、従妹の吉田あやかと四国へ捜索に行く。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 丸山:
中村署の警部。 - 佐々木:
土佐清水署の警部。 - 福田:
千葉県警の警部。 - 戸田:
愛媛県警の刑事部長。 - 山口:
科研の技官。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。
事件関係者
- 吉田健太郎:
三田村刑事の叔父。育ての親。浅草にある食堂「とちしん」の主人。四国へ旅行中、行方不明になる。その後、殺人容疑で逮捕された。 - 吉田文子:
三田村刑事の叔母。吉田健太郎の妻。四国へ旅行中、行方不明になる。 - 吉田あやか:
吉田夫妻の娘。
新興宗教「真心の会」
- 神川友成:
60歳。八王子に本部がある新興宗教「真心の会」の教祖。 - 小田中みや子:
吉田あやかの友人。新興宗教「真心の会」の元経理担当。木更津の雑木林で死体となって発見された。 - 水谷徹:
新興宗教「真心の会」の親衛隊。倉敷出身。特急「しまんと3号」で死体となって発見された。 - 柴田健二:
新興宗教「真心の会」の親衛隊。足摺岬で転落死した。 - 豊村:
新興宗教「真心の会」の親衛隊。 - 小野木正:
新興宗教「真心の会」の親衛隊。 - 辻:
新興宗教「真心の会」の顧問弁護士で理事長。 - 山本:
新興宗教「真心の会」の元信者。
その他の登場人物
- 富永信一郎:
K商事の管理部長。 - 小池博:
週刊トピックスの記者。 - 大田:
小田中みや子の恋人。大手町にあるN商事・事業一課の社員。 - 松本くに子:
吉祥寺にある喫茶店のウエイトレス。 - 宮地昭子:
水谷徹の姉。倉敷市内にある喫茶店「くらしき」を夫と営む。 - 宮地順一郎:
宮地昭子の夫。
感想
今回の事件は、新興宗教の犯罪を暴き、殺人事件の犯人を逮捕することであった。つまり、新興宗教が犯人なのだ。これはネタバレではなく、この構図は、物語の中盤になればすぐにわかる。捜査の主要課題は、その証拠を掴むことであるであった。
ミステリーの内容はここでは明かせないが、本作で良かった点を3つあげておこう。
まず第一に、四国がメイン舞台になったことである。とくに、高知市内や足摺岬、さらには松山市内や宇和島、道後温泉が登場し、旅情たっぷりに描かれていた。
三田村刑事や従妹の吉田あやかの二人が捜査をしながら旅をする姿は新鮮。十津川&亀井のコンビとはまた違った良さがあった。
第二に、ハッピーエンドだったことである。
事件そのものは、概ね解決しわずかな課題が残っただけなのだが、三田村刑事にとってのハッピーエンドになる。事件の最後に、三田村刑事が結婚するのである。ここについては詳細は割愛するので自分で確かめてもらいたい。
三つ目は、激しい戦闘だった。
相手は新興宗教。普通の犯罪者ではない。自分たちに正義があると固く信じているし、教祖のためならどんなことでもする。
その強い意志が激しい戦闘になった。
松山市街で行われた新興宗教と警察の戦いは熾烈を極めた。作中の次の一文がその激しさを物語っていた。
夜が明けると、松山駅前の大通りは、さながら、市街戦のあとのように、見えてきた。
まるでアクション映画のような怒涛の戦闘。これは見応えたっぷりであった。
コメント