初版発行日 2008年12月5日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編
老人の遺品整理から始まった難事件。殺人の連鎖を止めるべく十津川警部は岡山に飛んだ!
あらすじ
小堺信介は仲間5人と孤独死した老人の遺品を有料で処分する会社を立ち上げた。最初の依頼が片づいた翌朝、従業員が死体で発見された。十津川警部が遺品の主である三枝修一郎の身元を洗い始めると、三枝の友人が岡山で殺されたとの情報が入る。急遽、岡山に飛ぶ十津川。そこで待ち受けていたのは第3の殺人事件だった……。十津川は殺人の連鎖を止められるのか?事件の背後にある、時代を超えた因縁とは?
小説の目次
- ISK
- 一人の男
- 三人目の死
- 裏と表
- 過去への旅
- 遠すぎる過去
- 殺人者は東に帰る
冒頭の文
小堺信介は、仲間五人と一緒に、今の会社ISKを立ち上げた。
小説に登場した舞台
- 岡山駅(岡山市北区)
- 湯郷温泉(岡山県美作市)
- 鬼城山(岡山県総社市)
- 牛窓(岡山県瀬戸内市)
- 蒜山高原(岡山県真庭市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 小堺信介:
50歳。遺品整理会社ISKの社長。 - 三枝修一郎:
75歳。孤独死した老人。 - 井上治:
ISKの社員。30歳。 - 吉田要:
M商事の元営業部長。佐伯修一郎の元同僚。 - 金子健一:
M商事の元管理部長。佐伯修一郎の元同僚。 - 吉川学:
M商事の元技術部長。日本テクニカルセンターの顧問。佐伯修一郎の元同僚。 - 水原徳太郎:
80歳。牛窓の老舗海産物店の元主人。 - 赤木荘一:
赤木院長の父親。 - 戸田恵子:
藤井屋旅館のオーナーの娘。45年前に急死した。当時18歳。 - 木下卓三:
57歳。かつて池袋の興信所で働いていた。 - 金子健太:
外務省に勤務している。金子健一の孫。 - 吉川翔:
検事。吉川学の孫。
その他の登場人物
- 小堺文恵:
小堺信介の妻。 - 鈴木美恵子:
三枝修一郎が住むアパートの大家。 - 三枝誠:
三枝修一郎の息子。45歳。K銀行天王寺支店の支店長。 - 三枝由美子:
三枝誠の妻。 - 長谷川弘志:
三枝修一郎の商社時代の同僚。75歳。大手人材派遣会社の顧問。 - 佐伯潤一:
日本リサイクル㈱の営業課長。 - 田之上遼:
68歳。M商事の元秘書。現在は平河町で経営コンサルタントをしている。 - 奥田:
岡山県警捜査一課の警部。38歳。 - 原田:
岡山県警の警部。 - 林:
岡山駅前のホテルKのオーナー。 - 赤木:
赤木病院の院長。 - 黒川光子:
戸田恵子と仲が良かった女性。 - 浅井:
弁護士。 - 菊池:
弁護士。
印象に残った名言、名表現
(1)小堺信介の妻が言ったビジネスの金言。
「わからないから、始めるのよ。いいこと。今、こういう仕事をやろうという人は、あまりいないと思うの。なぜ少ないかといえば、あんたがいったみたいに、果たして、客があるかどうか、わからないから。逆にいえば、そこがつけ目じゃないの。」
(2)十津川警部が亀井刑事に言った、記憶に関することば。
「正直にいうと、私は、二日前のこともよく覚えていないんだ。ところが、十歳ぐらいや、あるいは七、八歳の、子供の時のことは、鮮明に覚えている」
総評
ミステリーの黄金パターンというのがあるらしい。
それは、「犯人はAだと思わせておいて、実はBだった」というものである。このAとBには、いろいろな組み合わせがある。
例えば、「夫を殺した犯人は妻だと思わせておいて、実は家政婦だった」とか、「患者を殺した犯人は医者だと思わせておいて、実は入院している患者だった」とか。あるいは、「死んだと思わせた被害者が、実は生きていて真犯人だった」なんていう変わり種のパターンもある。
本作も、この「犯人はAだと思わせていて、実はBだった」という黄金パターンになっている。あなたは十津川警部より先に真犯人にたどり着けるか?ぜひチャレンジしてほしい。
また、この作品は岡山が舞台になっている。岡山の魅力的な観光資源や、興味深い歴史などが、読みやすく説明されている。
例えば、岡山名物の白桃、日本のエーゲ海と呼ばれる牛窓、桃太郎伝説の吉備、鬼城山、温泉地の湯郷温泉、風光明媚な蒜山高原など、岡山の魅力ある観光地。さらに、桃太郎や鬼退治の伝説、それにまつわる古代の歴史なども、コンパクトに纏められている。
岡山観光にも役立つ書になっているので、本作を読んだ後に岡山へ出かけるのも一興だ。
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