初版発行日 2000年7月20日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編
私の評価
十津川警部vs国家転覆を狙う凶悪犯との壮絶な闘い!
あらすじ
青森浅虫温泉で豪遊後、海峡を渡り札幌競馬で大穴を当てた二人組の男。一人は定山渓で射殺され、一人は消息を絶った。一方、十津川警部は、都内渋谷で殺害された新聞記者兼作家の生前の行動を追っていた……。捜査線は交錯し、やがて二つの事件の背後に巨大な陰謀が浮上した。折しも札幌で、主要閣僚による一日内閣が計画され、謎の組織が首相たちの暗殺を謀っているというのだ。
小説の目次
- 浅虫温泉
- X計画について
- 事件の発展
- 予行演習
- 迷路へ
- 決行
- 究極の敵
冒頭の文
青森駅から、車で約三十分のところに、浅虫温泉がある。海岸に、ホテルが点在しているところは、熱海に似ている。が、景色は、はるかに美しいし、海も、きれいだ。
小説に登場した舞台
- 浅虫温泉(青森県青森市)
- 浅虫温泉駅(青森県青森市)
- 青森駅(青森県青森市)
- 定山渓温泉(海道札幌市南区)
- 特急はつかり
- 青函トンネル
- 小樽駅(北海道小樽市)
- 石原裕次郎記念館(北海道小樽市)
- 新千歳空港(北海道千歳市)
- 札幌駅(北海道札幌市北区)
- 快速エアポート
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 北見:
北海道警札幌南署の警部。 - 木下:
北海道警札幌南署の刑事。 - 太田:
北海道警札幌南署の刑事。 - 片岡:
北海道警の刑事。 - 山崎:
北海道警の本部長。 - 田島:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
事件関係者
- 皆川克郎:
私立探偵。以前、新宿にある沼田弁護士事務所で勤務していた。浅虫温泉で中丸信也と名乗り豪遊した男。寝台特急「北斗星」の車内で射殺された。 - 榊原信之:
東京都調布市のマンションに在住。浅虫温泉で金井誠と名乗り豪遊した男。定山渓の山林で死体となって発見された。 - 本田浩:
35歳。北海道新報の記者。本西貢太郎の筆名で小説も書く。渋谷区松濤にあるお屋敷で死体となって発見された。 - 沼田修一郎:
60歳。弁護士。皆川克郎か以前、勤めていた。K電気の顧問弁護士も勤めている。 - 栗田弘:
32歳。藤野亜木子のヒモ。藤野亜木子殺害容疑で逮捕されたが、裁判で沼田法律事務所が弁護にあたり、無罪判決が下った。現在は、札幌に住み、バイク修理工場を営んでいる。 - 奥山剣太郎:
45歳。札幌市内にある喫茶店の店主。元オリンピックのライフル射撃の選手。 - 仙波貢:
38歳。札幌市内にあるスポーツ店の店主。 - 三輪成久:
45歳。栗田弘らの仲間。 - 御手洗栄:
前首相のブレーン。政治に強い影響力をもつ男。 - 保坂誠:
40歳。五十嵐首相の個人秘書。元N大学の教授。 - 宇田川:
代議士。
その他の登場人物
- 早川久美:
浅虫温泉Kホテルの女将。 - エミコ:
浅虫温泉のコンパニオン。 - ユミ:
浅虫温泉のコンパニオン。 - サチコ:
浅虫温泉のコンパニオン。 - ジュン:
浅虫温泉のコンパニオン。 - 小川:
札幌駅前のNレンタカーの所長。 - 水沼:
北海道新報のデスク。本田浩の上司。 - 小野寺:
北海道新報の記者。本田浩と大学時代の同級生で友人。 - みどり:
新宿歌舞伎町のクラブ「レインボー」のホステス。 - 沼田清美:
沼田修一郎の娘。 - 沢木:
40歳。沼田法律事務所の弁護士。沼田清美の夫。 - 白井:
札幌駅の駅長。 - 高木英一郎:
高木物産の取締役。皆川克郎が殺された寝台特急北斗星の車内で不審な人物を目撃した男。 - 五十嵐有子:
30歳。札幌市内のクラブ「スノーボード」のホステス。 - 宇田川保子:
宇田川代議士の妻。 - 山中:
宇田川代議士のかかりつけ医。
印象に残った名言、名表現
■舞台は札幌。
(戦場は、この札幌だ)と、十津川は、思っている。(多分、犯人も、そう思っているだろう)
感想
非常に壮大な構想の事件だったと思う。
本作は、犯人当てという類のミステリーではない。最初から、犯人像がわかっており、札幌でテロを計画しているという噂を十津川たちは、つかんでいた。
そして、犯人と思しき人物たちを、中盤で浮き上がってきていた。だが、まだテロを起こしたわけでもないいし、先行して起きた殺人事件の証拠もない。
だから、十津川警部たちと犯人たちの知恵比べである。
十津川たちにとっては、いかに、犯人の尻尾をつかみ、テロ計画を防ぐか。犯人たちにとっては、いかに、警察を巻いて、犯行を行うかである。
犯人たちは、単なる集団ではない。その裏には、政界の大物がいる。それが、今回の捜査を難しくしたのだと思う。
この壮大な事件は、どんな結末を迎えるのか?その答えは、本書の中にある。一つだけ言えるのは、犯人はかなり賢い。警察の裏の裏の裏をかいてくる。
最後に、本作刊行にあたって発表された西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。
飛行機が嫌いなので、北海道へ行くとき、もっぱら、青函トンネルを利用している。列車が、トンネルを抜ける長い時間、乗客は、嫌でも、自分が、外界から遮断され、轟音と、孤独に、取りまかれてしまう。途中で、降りることも、引き返すことも出来ず、トンネルを抜けた時はすでに、北海道である。
昔、青函連絡船を使ったときは、四時間という長さだったし、危険もあったが、ロマンチックでもあった。それが、今は、何も見えぬまま、着いてしまう。もし、犯罪者が、殺意を抱いて、青函トンネルを抜けるとき、どんな気持ちなのだろうか?殺意は、強くなるのだろうか?
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