初版発行日 1991年11月30日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
本州最南端を走る紀勢本線に展開する捜査陣と真犯人の息詰まる駆け引き!本線シリーズ第2弾!
あらすじ
死体の額に刻まれた×印!紀勢本線新宮駅近くでOL原口ユキが殺害された。事件の一週間前、東京・世田谷でも長谷川弓子が同じ手口で殺されていた。十津川警部と亀井刑事は南紀に飛ぶが、第三の惨劇が串本で……。被害者はすべて二十一歳のOLで、頭文字がY・Hという共通項が……。この接点から二人の容疑者が浮かぶ。ところが捜査本部に白浜から大胆な殺人予告状が届く。ー<紀勢本線のKで、第四の殺人が行われる>ー”K”はどこか?真犯人は南紀白浜に潜伏!?予告の日は迫る!
小説の目次
- 小雨の中で
- 南紀白浜
- 予定外の殺人
- 紀伊田辺
- 復讐
- 犯人像
- 愛と死と
- 紀南の海
冒頭の文
新宮駅は、名古屋から入る紀勢本線の特急「南紀」が停車するし、関西方面からは同じく紀勢本線を走る特急「くろしお」の終着駅でもある。
小説に登場した舞台
- 新宮駅(和歌山県新宮市)
- 丹鶴城公園(和歌山県新宮市)
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 特急「スーパーくろしお号」
- 串本駅(和歌山県・串本町)
- 白浜駅(和歌山県・白浜町)
- 白浜温泉(和歌山県・白浜町)
- 白良浜(和歌山県・白浜町)
- 千畳敷(和歌山県・白浜町)
- 三段壁(和歌山県・白浜町)
- 紀伊田辺駅(和歌山県田辺市)
- 田辺扇ヶ浜海岸(和歌山県田辺市)
- 闘鶏神社(和歌山県田辺市)
- 浦安神社(和歌山県田辺市)
- 南紀白浜空港(和歌山県・白浜町)
- 羽田空港(東京都大田区)
- 天王寺駅(大阪府大阪市天王寺区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 中村:
和歌山県警刑事課の警部。 - 吉田:
和歌山県警の刑事。 - 島原:
和歌山県警の刑事。 - 井上:
和歌山県警の本部長。 - 小倉:
渋谷警察署の刑事。
事件関係者
- 長谷川弓子:
21歳。銀座に本社のあるK商事の社員。。世田谷区に在住。自宅近くの公園裏で死体となって発見された。 - 原口ユキ:
21歳。新宮駅前にあるスーパーの会計事務。丹鶴城公園で死体となって発見された。 - 平山八重:
21歳。N銀行串本支店の行員。何者かに殺害された。 - 山下邦夫:
27歳。東京のバイク店の店主。前科あり。和歌山市内の資産家の息子。三段壁で何者かに射殺された。 - 野村貢:
30歳。旅行作家。世田谷区内のマンションに在住。那智勝浦の生まれ。浦安神社の裏手で死体となって発見された。 - 水谷剛:
27歳。原口ユキの恋人。和歌山市内のマンションに在住。 - 深見あけみ:
23歳。大田区に在住。闘鶏神社の裏手で死体となって発見された。 - 小野田悟:
46歳。姓名判断師。東京在住。 - 高沢慎一郎:
35歳。四谷にある「城南交易」の営業第二係長。三鷹のマンションに在住。 - 平岡淳:
30歳。S自動車営業一課に勤務。渋谷区西原のマンションに在住。3ヶ月前、自宅で死体となって発見された。 - 橋野優子:
21歳。平岡淳の元恋人。
その他の登場人物
- 三木:
45歳。K製紙の社員。 - 青木徹:
27歳。K商事の社員。長谷川弓子の恋人。 - 安田:
新宿西口にあるデータバンクの社長。 - 石田:
「城南交易」の人事課長。中野に在住。 - 高松明:
S自動車営業一課の課員。
印象に残った名言、名表現
■若さの特権。
「傲慢さは若さの特権だよ。謙虚さは、私のように四十代になれば、いやでも身につくさ」
感想
本作は、王道のトラベル・ミステリーだったと思う。新宮や白浜、田辺市が舞台に繰り広げられた事件であり、このエリアの風景やスポットを、明るいタッチで描いていた。この明るさは、南紀白浜の明るさを反映しているのだと思う。
また、事件については、”先入観”の裏をかいた作品でもあった。連続殺人はすべて同一犯であるという思い込み、恋人といえば男女と決めつけてしまう思い込み。これらの思い込みが、事件の真相を見えにくくしていた。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。
連続殺人、それも一見、無差別に思える殺人事件は、推理作家にとって、いちばん書いていて面白いストーリィである。その連続殺人の中に、犯人の動機を隠すことができるからである。
さて、この作品は、東京に始まり、南紀を走る紀勢本線沿いに起きる連続殺人事件である。被害者に共通するものは何なのか、犯人の動機はいったい何なのか。その二つの謎を含んで、南紀の旅を楽しんでいただければ、作者にとって、これ以上の喜びはありません。
うまく列車が走ってくれるかどうか。
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