初版発行日 1979年8月10日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
十津川警部の妻、直子が初めて登場した記念碑的作品!累計126万部超えのベストセラー!!ミステリアスな世界、大胆な物語設定の名作!!!
あらすじ
北海道の海岸から、三組の新婚旅行客が相次いで蒸発した。彼らはいずれも七月下旬羽田発の、全日航札幌行き最終便、通称”ムーンライト”の乗客であった。たまたま同機に乗り合わせた新婚旅行中の警視庁捜査一課の十津川警部は、北海道警の要請で捜査に協力。しかし、そのカップルに自ら姿を消す理由を見いだせなかった。
小説の目次
- 新婚旅行
- 北の海岸
- 共通項
- 搭乗整理券
- 登別
- スチュワーデス
- 筆跡鑑定
- 追跡
- 難民キャンプ
- 救出作戦
- 新たな展開
- 終局への飛行
冒頭の文
式の間、十津川一人が照れていた。七月二十一日。大安吉日である。
小説に登場した舞台
- 羽田空港(東京都大田区)
- 千歳空港(北海道千歳市)
- 小樽市街(北海道小樽市)
- 祝津海岸(北海道小樽市)
- おたる水族館(北海道小樽市)
- 千葉駅(千葉県千葉市中央区)
- 晴海埠頭(東京都中央区)
- 朝里川温泉(北海道小樽市)
- 登別駅(北海道登別市)
- 登別温泉(北海道登別市)
- 目黒区役所(東京都目黒区)
- 特急「ひばり9号」
- 仙台駅(宮城県仙台市青葉区)
- 福岡空港(福岡県福岡市博多区)
- 啓徳空港(香港)
- 成田空港(千葉県成田市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 君島:
北海道警捜査一課の警部。 - 小早川:
北海道警捜査一課の刑事。 - 宮地:
北海道警捜査一課の刑事。 - 本橋:
北海道警捜査一課長。 - 浅井:
北海道警の本部長。 - 河野:
室蘭署の巡査部長。 - 島田:
宮城県警捜査一課の警部。 - 木下:
築地署の刑事。 - 石野:
警視庁の筆跡鑑定専門の技官。 - 立石:
警視庁の鑑識技官。
事件関係者
- 矢代昌也:
中央商事第一営業部第三営業課の課員。ムーンライトで十津川夫妻と同じ飛行機に乗っていた夫婦。その後、行方不明になる。 - 矢代冴子:
矢代昌也の妻。ムーンライトで十津川夫妻と同じ飛行機に乗っていた夫婦。その後、行方不明になる。 - 田口政彦:
杉並区和泉二丁目にあるスーパーマーケット「日の丸スーパー」に勤務。ムーンライトで十津川夫妻と同じ飛行機に乗っていた夫婦。北海道へのハネムーン旅行中、留萌で行方不明になる。 - 田口浩子:
田口政彦の妻。ムーンライトで十津川夫妻と同じ飛行機に乗っていた夫婦。北海道へのハネムーン旅行中、留萌で行方不明になる。 - 青田了介:
35歳。武蔵小山人ある自転車店の店主。晴海埠頭で死体となって発見された。 - 佐藤俊作:
25歳。横浜伊勢佐木町のレストラン「ヨコハマ」に勤務。横浜市旭区のアパートに在住。北海道へのハネムーン旅行中、登別の海岸で行方不明になる。 - 佐藤みどり:
22歳。佐藤俊作の妻。北海道へのハネムーン旅行中、登別の海岸で行方不明になる。 - 菅原君子:
23歳。全日航のCA。港区高輪のマンションに在住。自宅マンションから転落死する。 - 岩井耕作:
40歳。仙台市内で不動産業を営む。 - 岩井年志子:
矢代昌也の親戚。仙台に在住。 - 村田拓二:
45歳。F大学の教授。福岡市東区に在住。 - 村田美子:
村田拓二の妻。 - 坪井保夫:
フリーカメラマン。名古屋在住。 - 一条清:
ルポライター。 - 一条佳枝:
一条清の妹。全日航のCA。 - グエン:
ベトナム人留学生。
その他の登場人物
- 宮本:
中央商事第三営業部長。 - 井本:
中央商事第一営業部第三営業課の課員。 - 富永:
スーパーマーケット「日の丸スーパー」の店長。 - 清水:
スーパーマーケット「日の丸スーパー」の店員。 - 田口晋吉:
田口政彦の父親。千葉市の作草部町にある「田口酒店」の店主。 - 田口良子:
田口政彦の母親。 - 田中:
羽田空港全日航事務所の所長。 - 小池京子:
全日航のCA。 - 武井ルミ子:
全日航のCA。 - 北野浩:
27歳。俳優。菅原君子の恋人。 - 伊達:
中央新聞香港支社の特派員。 - フィン・ダイ・チュー:
香港に住むベトナム難民。 - ズオン・トラン:
香港に住むベトナム難民。 - 岡本卓也:
大洋建設の営業部長。 - 山本:
全日航最終便の機長。 - 河西:
全日航最終便の副操縦士。 - 滝田:
羽田空港の空港長。 - 日下:
千歳空港の空港長。 - 渡辺:
運輸政務次官。
印象に残った名言、名表現
■空港の雰囲気。
十津川は、空港が好きだ。
人々のどこかせわしない足音や、各国語の入り乱れた話し声、絶えず聞こえてくるアナウンス、そして、耳をつんざくジェットの轟音。そうした、さまざまな音や声が混じり合って、空港の雰囲気を作っている。
感想
まず、本作は、十津川警部の妻、直子が初登場する作品であり、十津川と直子が結婚式の後に、北海道へハネムーン旅行に行くまでの経過が記されている。
直子は十津川警部シリーズの中でも重要なキャラクターである。持ち前の好奇心からときには探偵のように動き回って推理をしたり、鋭い直感から十津川の捜査を助けたりすることもある。そんな十津川夫妻の結婚式とハネムーンが描かれた作品なのだから、シリーズの中において、記念碑的な作品であった。
さて、ミステリーについては、序盤、中盤、終盤で大きく様相が異なってくる。序盤は十津川と直子のハネムーンの様子が中心でスウィーティな雰囲気が漂う。
中盤は失踪事件や殺人事件が起こる。謎だらけでの事件で、ミステリアスだ。終盤は、ベトナム難民や日本の難民受け入れ問題に切り込んだ社会派サスペンスになっていく。
ベトナム戦争が終わったのが1975年。その後も、ベトナムは戦争の後遺症を抱えているわけであるが、本作は刊行された1979年当時の国際問題に切り込んだ、社会派の傑作だったのである。
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