初版発行日 2004年5月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
私の評価
男鹿、角館の旅情あふれるトラベルミステリー。
あらすじ
東京・幡ヶ谷の商店街にある焼き鳥店の二階で、鬼の面をつけ、蓑をまとったなまはげの扮装をした死体が発見された。当初、部屋の住人である店主の野田晋六かと思われたが、別人と判明。警視庁捜査一課の十津川警部と亀井刑事は、手がかりを求め、野田の出身地・男鹿半島へと飛んだ。ホテルを経営する野田の叔父・三浦は、病死した妻の葬式も出さずに姿を消したと野田を詰る。だが、友人たちは、義理堅い人物だったと口を揃える。困惑する十津川と亀井。そこへ第二の殺人の報告が入り、死体にはまたしても鬼の面が!
小説の目次
- なまはげの地
- 第二の殺人
- 東田みどり
- 父と子
- 接点
- 逆襲
- 闇を引き裂いて
冒頭の文
渋谷区幡ヶ谷商店街では、秋十月の商店街祭りに備えて、準備が、進められていた。
小説に登場した舞台
- 幡ヶ谷商店街(東京都渋谷区)
- 秋田空港(秋田県秋田市)
- 寒風山回転展望台(秋田県男鹿市)
- 男鹿温泉(秋田県男鹿市)
- 男鹿駅(秋田県男鹿市)
- 男鹿真山伝承館(秋田県男鹿市)
- 真山神社(秋田県男鹿市)
- 羽田空港(東京都台東区)
- 角館駅(秋田県仙北市)
- 田町下丁(秋田県仙北市)
- 秋田駅(秋田県秋田市)
- 入道崎(秋田県男鹿市)
- 野の庵(青森県弘前市)
- 弘前城(青森県弘前市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川警部:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
秋田県警
- 牧野:
秋田県警の警部。 - 竹内:
秋田県警の警部。
事件関係者
- 野田晋六:
51歳。幡ヶ谷商店街にある焼き鳥店の店主。かつて男鹿市内で運送会社を経営していた。部屋から男の死体が発見される。現在、行方不明。 - 野田美代子:
野田晋六の妻。3年前に心臓麻痺で死亡している。 - 三浦敬司:
63歳。野田晋六の叔父。新男鹿温泉ホテルの経営者。 - 野田雄作:
野田晋六の息子。新男鹿温泉ホテルの営業マンとして働いている。 - 東田敬一郎:
40歳。東京の食品工場につとめる社員。かつて角館市内にある土産物店「加藤商店」で配送の仕事をしていた。世田谷区給田の自宅マンションで死体となって発見される。 - 東田冬子:
東田敬一郎の妻。3日前に病死。 - 東田みどり:
20歳。東田敬一郎の娘。 - 加藤雅之:
63歳。角館町田町下丁にある土産物店「加藤商店」の店主。3年前まで東田敬一郎が働いていた。三浦敬司と大学時代の同級生。 - 青山五郎:
かつて野田晋六の運送会社で働いていたが、問題を起こしてクビになった男。
その他の登場人物
- 鈴木:
幡ヶ谷商店街にあるラーメン店の店主。 - 井上正子:
幡ヶ谷商店街にある洋品店の店主。 - 白木:
男鹿市内のタクシー運転手。かつて野田晋六が営む運送会社で働いていた。 - 木村良枝:
60歳。寒風山の展望台で土産物店を営む。 - 木村はるみ:
木村良枝の娘。母が経営する土産物店を手伝っている。 - 川上:
加藤商店の社員。東田敬一郎と同僚だった。 - 千野:
角館市内にある高校教師。東田みどりの担任だった。 - 山田:
男鹿市内にある太陽タクシーの運転手。 - 川田:
男鹿市内にある個人タクシーの運転手。 - 井上加奈:
加藤商店にある喫茶店のウエイトレス。
印象に残った名言、名表現
(1)男鹿半島。
景色が、自在に変化する海岸線を見ていると、牧野刑事が<男鹿は、観光と、漁業と、なまはげです>といったのが、わかったような、気がした。
(2)男鹿の海岸線。
海岸線は、陽光を浴びて、美しい。風は、ほとんどないのだが、それでも、岸に打ち寄せる波は、小さなしぶきを上げていた。
男鹿の海岸線は、荒々しく、起伏に富んでいる。S字カーブを、曲がるたびに、目の前の海の景色が一変する。
(3)弘前の津軽そば有名店、野の庵。
野の庵は、江戸時代創業の老舗で、この店の幻の津軽そばは、有名で、地元の人も観光客も、よく食べると、評判だった。
そば店にしては、珍しく、赤いじゅうたんが、敷かれていて、アンティークの椅子やテーブルが、置かれている。
感想
これぞ、トラベルミステリーという作品だった。
舞台となった男鹿と角館の観光スポットが、しっかりと描かれている。男鹿では、寒風山、男鹿温泉、真山伝承館、入道崎などが登場し、角館では、武家屋敷がならぶ田町下丁が舞台になった。
また、弘前の津軽そばの有名店「野の庵」では、十津川と亀井が、ここを訪れ、そばを食べた。そして、「このそばは本当に美味しい」と褒めていた。
事件に直接的な影響のない、何気ないちょっとしたシーンであるが、読んでいる最中に、食欲をそそられ、この場所に行ってみたいと思えるから不思議である。
旅情と食欲をそそられるミステリー。これこそ、トラベルミステリーである。そして、この作品は、トラベルミステリーとして、よくできた作品だと思う。
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