初版発行日 1990年7月25日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
世界最高速TGV車内で殺人!パリー東京を結ぶ初の国際版トラベルミステリー!
あらすじ
フランス・グルノーブルでの世界警察官会議に、十津川警部と亀井刑事が招待され、若手の白井刑事も参加。各国の警官と親善を果たした帰途、パリ行きTVG(フランス新幹線)の一等車内で殺人事件が……。会議を後援した富豪、大越専一郎(日仏親善協会会長)の秘書松野ユキが、アメリカの刑事の盗まれた拳銃で射殺されたのだ。真の標的は、何者かに脅迫されていた大越だった!?硝煙反応は誰からも発見されなかったが、日本人カップル宇垣亘と島崎やよいに嫌疑が……。さらに事件を追う白井刑事もセーヌ河畔で刺殺された!
小説の目次
- フランスからの招待状
- 東京からの脅迫状
- 東京の夜に
- 寂しい死
- 再びパリ
- 逆転への戦い
冒頭の文
七月末に、一通の招待状が、警視庁に届けられた。
小説に登場した舞台
- シャルル・ド・ゴール国際空港(フランス・パリ)
- 凱旋門(フランス・パリ)
- シャンゼリゼ通り(フランス・パリ)
- コンコルド広場(フランス・パリ)
- セーヌ河(フランス・パリ)
- パリ・リヨン駅(フランス・パリ)
- リヨン駅(フランス・パリ)
- グルノーブル駅(フランス・グルノーブル)
- バスティーユ城塞(フランス・グルノーブル)
- TGV
- コンコルド ラファイエット(現・ハイアット リージェンシー パリ エトワール )(フランス・パリ)
- モンマルトル(フランス・パリ)
- サクレクール寺院(フランス・パリ)
- ノートルダム大聖堂(フランス・パリ)
- リヴォリ通り(フランス・パリ)
- ルーヴル=リヴォリ駅(フランス・パリ)
- バスティーユ駅(フランス・パリ)
- バスティーユ広場(フランス・パリ)
- 成田空港(千葉県成田市)
- 大本山 護国寺(東京都文京区)
- 青森空港(青森県青森市)
- 八甲田山(青森県青森市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。グルノーブルで行われる世界都市警察大会に参加する。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。グルノーブルで行われる世界都市警察大会に参加する。 - 白井敬:
28歳。警視庁捜査一課の刑事。十津川班ではない。フランス語ができるため、グルノーブルで行われる世界都市警察大会に、参加することに。フランスのセーヌ河畔で刺殺された。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
各国の刑事
- シャルル・J・ポール:
パリ警視庁の広報担当官。 - クリスチーナ:
ニューヨーク市警の刑事。 - ピエール・ジレ:
パリ警視庁の警部。 - デニス・ウィーバー:
ロンドン警視庁の刑事。 - エリザベス:
ロンドン警視庁の警視。 - ミハイロフ:
モスクワ警察の刑事。 - J・バード:
ニューヨーク市警の刑事。 - ロドリゲス:
マニラ警察署の刑事。
事件関係者
- 大越専一郎:
大越コンツェルンの総帥。政財界の大物で日仏親善協会の会長。世界都市警察大会に招待されて参加した。 - 三浦:
大越専一郎の秘書。 - 松野ユキ:
大越専一郎の秘書。TGVの列車内で何者かに射殺される。 - 宇垣亘:
28歳。太陽鉄鋼営業三課の係長。旅行研究会の会員。TGVの列車内にいたカップル。 - 島崎やよい:
25歳。太陽鉄鋼の社員。TGVの列車内にいたカップル。
その他の登場人物
- 田中:
青森県警の刑事。 - 長田:
グルノーブル大学の教授。グルノーブルで十津川と亀井の通訳を担当することになった。 - 堀田:
中仏大使。 - 小野:
太陽鉄鋼営業三課の課長。宇垣亘の上司。 - 林:
カメラマン。宇垣亘が所属していた旅行研究会の幹事。 - 青木征夫:
29歳。パリ市内に在住。モンマルトルのサクレクール寺院前広場で爆竹を鳴らした男。
印象に残った名言、名表現
(1)10月のパリ。
十月のパリは、思ったより暖かく、歩くと汗ばむほどだった。
アメリカ人らしい、若い観光客の中には、Tシャツで歩いている者もいた。その一方で、黒いコートの襟を立てて歩いているパリジェンヌの姿もあって、なにやら、夏の終わりと冬の初めが、同居している感じだった。
(2)フランス人。
フランス人には、アメリカ文化の元は、自分たちの文化だという自負があるように、十津川は思う。
フランス人の強い中華思想である。
感想
犯人を追って、日本全国津々浦々に足を運ぶ、十津川警部と亀井刑事。彼らの活躍は、国内だけに留まらず、海を越え山を越え、インターナショナルな活躍をしている。
今回の「パリ発殺人列車」をはじめ、中国・上海が舞台の「上海特急殺人事件」、台湾が舞台の「愛と絶望の台湾新幹線」、韓国が舞台の「韓国新幹線を狙え」、「海峡をわたる 春香伝物語」など、海外が舞台の捜査をしている。
正直、今回はミステリー作品としては、中庸な出来だったと思うが、フランスのパリやグルノーブルのスポットが数多く登場し、海外旅行気分を味わえる。
また、文化的・社会的背景が異なる異国の刑事たちと、十津川警部が、議論を交えるシーンは、見ごたえがあったと、思う。
最後に、本作刊行にあたって発表された、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
去年(’89年)の十月、招待されて、フランスのグルノーブルで開かれたミステリー・フェスティバルに出席した。特別列車にも乗ったし、TGVにも乗った。面白かったのは、アメリカの作家はフランクで誰彼となく話しかけ、イギリスの作家は誇り高くマイペースを守るーと、それぞれの国民性を如実に表していることだった。多分、刑事もそうだろうと考えて書いたのが、この作品である。書きながら、Tシャツにジーンズのアメリカ作家は、今どうしいるだろう?きちんとしたネクタイに背広のイギリス人はどうしているだろう?議論好きのフランス人は?ーと、考えていた。
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