初版発行日 1983年11月25日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編
私の評価
十津川警部が追われる!東京から札幌までの手に汗握るサスペンス!十津川警部シリーズ史上、最高傑作の一つ!
あらすじ
十津川警部は、暴力団組長の殺人罪を立証する重要な証人を、札幌地裁に護送することになった。タイムリミットは、深夜零時!組員たちは、悪徳弁護士佐伯の指示に従い、証人の暗殺を狙う。折からの航空ストのため、東京から札幌へは、乗り継ぎが必要となる。東北新幹線、在来線、青函連絡船、車、チャーター機ー追われる側となった十津川と佐伯の虚々実々の攻防!
小説の目次
- タイムリミット
- 戦いの始まり
- 東北新幹線
- 盛岡駅ホーム
- 青森空港
- 国鉄青森駅
- 連絡船
- 函館本線
- 札幌地裁
小説に登場した舞台
- 四ツ谷駅(東京都新宿区)
- 浅草橋(東京都台東区)
- 調布飛行場(東京都調布市)
- 大宮駅(さいたま市大宮区)
- 小山駅(栃木県小山市)
- 仙台駅(仙台市青葉区)
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- 青森駅(青森県青森市)
- 東室蘭駅(北海道室蘭市)
- 函館港(北海道函館市)
- 長万部駅(北海道・長万部町)
- 苫小牧駅(北海道苫小牧市)
- 札幌駅(札幌市北区)
- 札幌地方裁判所(札幌市中央区)
- 中島公園(札幌市中央区)
- 千歳空港(現・新千歳空港)(北海道千歳市)
登場人物
警察関係者
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 畑中小四郎:
北海道警の本部長。 - 西島:
北海道警捜査一課の警部。 - 花井:
警視庁捜査四課の課長。 - 石本:
警視庁の刑事。 - 谷川:
警視庁の刑事。 - 平井:
警視庁の刑事。 - 阿部:
警視庁の刑事。 - 石原:
警視庁の刑事。 - 小林:
警視庁の刑事。 - 小田中:
公安官。
川田組
- 川田大造:
川田組の組長。 - 小池まゆみ:
川田大造の女。定山渓温泉で殺される。 - 三浦功:
川田組の幹部。 - 佐伯雄一郎:
川田組の顧問弁護士。 - 立花:
川田組の幹部。 - 平野:
川田組の幹部。 - 井上:
川田組の組員。 - 寺田五郎:
川田組の組員。 - 福島:
川田組の組員。 - 佐川:
川田組の組員。 - 中尾:
川田組の組員。 - 原田:
川田組の組員。 - 田中芳夫:
川田組の組員。 - 江木:
川田組の組員。
その他の登場人物
- 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 清岡判事:
札幌地裁の判事。 - 矢野:
代議士。 - 加納:
佐伯法律事務所の所員。 - 北島早苗:
青森の高級クラブのホステス。 - 倉田明日香:
札幌のクラブ「ラ・ムール」のママ。
個人的メモ
- 電車や駅が国鉄になっている。時代を感じる。
- 東北新幹線は1982年開業、当時は盛岡までしか走っていなかった。八戸開通が2002年、新青森開通が2010年である。そのため、東京→大宮は在来線。大宮→盛岡は新幹線。盛岡→青森は在来線。青森→函館は連絡船。函館→札幌は在来線を使えばギリギリ1日で東京から札幌に到着できる。こうした時代背景も興味深い。
- 現在に比べて、当時の暴力団は存在感が強かった。
- 十津川警部と佐伯弁護士の知恵比べ。心理戦。
- 犯行グループと”本丸”のニアミス。緊迫感。
- 普段は功利的なインテリが、土壇場になると功利的でなくなるという人間性の考察が深い。
- まるでアクション映画のよう。
- 刻一刻と状況が変わっていく。最後の最後まで気が抜けない逃走劇。
総評
本作のタイトル「札幌着23時25分」がすべてを凝縮した逃亡劇である。しかも、”警察の逃亡劇”である。十津川警部シリーズの中でももとりわけ異彩を放つストーリーであった。
また、東京から札幌まで、18時間もの長い間、警察が犯人側から逃亡を図るのだ。
なぜ、東京から札幌まで18時間もかかるのか?その理由は1983年という時代背景を考えると見えてくる。1980年代まで盛んだった春闘ストライキが一つ。東北新幹線の区間がもう一つだ。
東北新幹線の区間について、本書で次のように記載されている。
○【東北新幹線】大宮8:00→盛岡11:17
○【東北本線はつかり7号】盛岡11:30→青森14:05
○【青函連絡船】青森14:55→函館18:45
○【函館本線北斗7号】函館19:00→札幌23:25
1983年当時、東北新幹線は大宮から盛岡間までしか走っていなかった。そのため、東京から札幌まで飛行機以外の手段で行く場合、新幹線、在来線、連絡船を駆使して向かうことになる。東京から札幌までなんと15時間以上もかかるのだ。
しかも、今回は陽動作戦をとり、小山まで車で向かった。実に18時間の長旅である。この時代背景が今回の物語をより難しいものにし、より盛り上げたのは言うまでもない。本作は、まるでアクション映画を見ているような緊張感が続いた。
間違いなく、十津川警部シリーズ史上、最高傑作の一つである。ぜひ一読してほしい。
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