初版発行日 1990年2月28日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
【POINT】
ひとつの事件に対し3つの思惑が交錯した急行列車。そこで事件は起こった!急行「利尻」「礼文」を舞台に宗谷本線上で交錯する殺意の真相は?
ひとつの事件に対し3つの思惑が交錯した急行列車。そこで事件は起こった!急行「利尻」「礼文」を舞台に宗谷本線上で交錯する殺意の真相は?
あらすじ
白雪の宗谷本線をひた走る急行「礼文」。その社内で男が毒殺された。被害者平野康生は死の直前、行きずりのルポライター田島徹に書きかけの原稿を託す。と同時に、謎のサングラスの女が平野のスーツケースを奪い去っていった。原稿に書かれていた驚くべき真実!田島は、十津川警部に協力を求めた。
小説の目次
- 急行「利尻」
- 宗谷本線事件についての疑問
- 新しい恋人
- 網走
- 再検討
- 追求
小説に登場した舞台
- 旭川駅(北海道旭川市)
- 寝台特急「利尻」
- 稚内駅(北海道稚内市)
- 稚内公園(北海道稚内市)
- ノシャップ岬(北海道稚内市)
- 宗谷岬(北海道稚内市)
- 南稚内駅(北海道稚内市)
- 宗谷本線急行「礼文」
- 美深駅(北海道・美深町)
- 名寄市街(北海道名寄市)
- 網走刑務所(北海道網走市)
- 特急オホーツク8号
- 札幌駅(北海道札幌市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水宏:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 田島徹:
40歳。ルポライター。急行「礼文」で平野康生から原稿を託される。 - 平野康生:
島根県松江市で教師をしていた男。急行「礼文」の車内で殺害される。 - 中川祐子:
2年前、音威子府駅のホームで刺殺された。大川物産の秘書として働いていた。 - 高田健:
大川物産の元社員。中川祐子と交際していたが、中川祐子殺害容疑で逮捕され、実刑が確定。現在は網走刑務所に収監されている。 - 大川昭:
大川物産の管理部長。社長・大川義太郎の三男。 - 青木均:
39歳。音威子府駅の駅員。中川祐子刺殺事件の裁判で目撃証言をした。 - 本橋みどり:
青木均の内縁の女。29歳。 - 荒井勇:
45歳。池袋で私立探偵事務所を開いている。 - 清沢利夫:
大川物産の総務課長。 - 小早川京子:
中川祐子の大学時代の後輩。 - 杉本ゆかり:
19歳。急行「礼文」で車内販売をしていた女性。 - 矢野明:
大川物産の社員。36歳。
その他の登場人物
- 江藤泰吉:
夜行列車「利尻」で中川祐子と高田健を目撃した夫婦。 - 江藤伸子:
江藤泰吉の妻。 - 山下:
中川祐子刺殺事件が起きたときの「利尻」の車掌。 - 中川忠男:
中川祐子の父親。 - 中川敏子:
中川祐子の母親。 - 山本:
神田の雑誌社の編集長。田島徹と古い付き合い。 - 松本:
中堅の経済評論家。田島徹の知り合い。 - 佐々木:
名寄警察署の刑事。 - 三浦:
道警本部の警部。 - 川崎肇:
50歳。国鉄時代から勤続26年のベテラン。平野康生殺人事件が起きた時に「礼文」の車掌をしていた。 - 田口:
十津川警部の友人。中央新聞の社会部に勤めている。 - 江崎:
芸能K・Mプロの社長。
個人的な推しポイント
- 十津川警部の”本線シリーズ”、記念すべき第一作である。
- 旭川、稚内、名寄、美深と道北地域の町が数多く登場する。
- 急行「利尻」の客車編成や音威子府駅構内の図が掲載されている。
- まるまる一章を使って、平野康生の原稿記事が読み上げられる珍しい構成。
本作の重要な謎は「なぜ平野康生は田島徹に原稿を託したのか?」
「宗谷本線事殺人事件」のキーアイテムは”原稿”。
総評
本作は”駅シリーズ”につづく、”本線シリーズ”の第一作となった記念碑的な作品である。日本の最北端と東京を結ぶスケールの大きさは、第一号にふさわしい。
本作の舞台は真冬の道北である。見渡す限り雪が降り積もる真っ白な銀世界。そこに忍び寄る黒い殺意。雪の上にほとばしる真っ赤な血。
白、黒、赤のコントラストが何とも鮮やかかつ不気味なのだ。この色彩に北の大地の厳しさと犯人の陰惨さが象徴されている。
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