初版発行日 1992年6月25日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編
私の評価
死んだはずの男を名乗る謎のカメラマン…。二年前の交通事故の真相とは!?十津川警部、怒りの反撃!
あらすじ
元刑事で私立探偵の橋本は、ある女性から河西弘という男を探して欲しいとの依頼を受けて城崎へ向った。ところが河西は二年前の交通事故で既に死亡しており、橋本は釈然としないまま帰京したが、数日後、元上司の十津川と亀井から驚くべき事実を知らされた。橋本に河西探しを依頼した長谷部徳子の絞殺死体が発見されたというのだー。二年前の交通事故を洗い直す十津川たちを第二の殺人が襲い、難航する捜査線上に浮ぶ意外な人物に十津川警部の怒りは頂点に達した!
小説の目次
- 城崎温泉
- 婚約者
- ダイイングメッセージ
- 疑問の中で
- 誘拐への旅
- 惨殺
- 金と力
- 終局の旅
冒頭の文
「どんなことでも、お願い出来ますの?」と、その女は、きいた。
小説に登場した舞台
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 特急あさしお
- 城崎温泉(兵庫県豊岡市)
- やなぎ荘(兵庫県豊岡市)
- 上野駅(東京都台東区)
- ブルートレイン北斗星3号
- 福島駅(福島県福島市)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 那覇空港(沖縄県那覇市)
- 石垣空港(沖縄県石垣市)
- 川平湾(沖縄県石垣市)
- 新宿中央公園(東京都新宿区)
- 池袋駅(東京都豊島区)
- 羽田空港(東京都大田区)
- 福岡空港(福岡県福岡市博多区)
- 博多駅(福岡県福岡市博多区)
- L特急みどり25号
- 有田駅(佐賀県・有田町)
- 鶴ヶ城市民公園(福島県会津若松市)
- 成田空港(千葉県成田市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。 - 長谷部徳子:
橋本豊に「河西弘」の捜索を依頼した人物。下高井戸のマンションに在住。自宅マンションで死体となって発見された。 - 長谷部かおり:
6歳。長谷部徳子の娘。 - 河西弘:
M銀行中野支店に勤務。城崎の生まれ。二年前、トラックに轢かれて死亡している。 - 高梨ゆみ:
27歳。2年前まで太陽工業に勤務していた。河西弘と交際していた。中野に在住。 - 広田圭一郎:
太陽工業の社長の息子。高梨ゆみの婚約者。大手町にある商事会社に勤務。 - 田代彰一:
フリーカメラマン。高知出身。河西弘を名乗った男。奥多摩の渓流で死体となって発見された。 - 山崎健一:
二年前、河西弘を轢いたトラック運転手。現在、大塚にあるS運送に勤務している。大宮にある集配センターで積荷していたところ、射殺された。 - 宮原猛:
代議士。元通産省の事務次官。世田谷区成城に在住。 - 宮原美保:
宮原猛の娘。宮原猛の秘書をしている。 - 佐々木:
新宿が拠点のS組の準幹部。元自衛隊員。 - 今村:
S組の準幹部。元自衛隊員。 - 河村太:
S組の元幹部。今は池袋にあるバーのマスターをしている。鶴ヶ城の外堀で死体となって発見された。
その他の登場人物
- 坂口:
練馬区石神井で日本そば店を営む。長谷部徳子の叔父。長谷部かおりと一緒に暮らしている。 - 河西周一郎:
河西弘の父親。城崎温泉で和菓子店を営む。 - 河西ふみ:
河西弘の母親。 - 今川とし子:
田代彰一の小学校時代の同級生。 - 福田:
フリーカメラマン。二年前まで田代彰一と親しくしていた。 - 池田:
宮原猛の秘書。 - 石川:
28歳。フリーのトラベルライター。田代彰一の友人だった男。 - 田中:
宮原猛行きつけのマッサージ師。 - 寺田:
福島県警の警部。 - 吉田きみ子:
会津川松の鶴ヶ城近くにあるスナックのママ。河村太の知り合い。
印象に残った名言、名表現
■拍子抜けする橋本豊。
橋本は、結末が伏せられた小説を読んだような気分になっていた。出だしは、まともなストーリイの小説だったのである。
感想
本作は、2年前に起きた、交通事故が発端となった連続殺人事件である。
この事故の真相と、この事故に関わった人物がわかれば、今回の連続殺人事件の真相もわかるという構造になっている。
もちろん、捜査は簡単ではない。なぜなら、この事故に関わったとされる人物が、大物政治家や大企業の社長だからである。当然、殺人事件については自分たちで手を汚さないし、過去の事件の隠蔽も金や暴力を使ってもみ消しにかかる。
こうした力に対して、十津川班は、総力をあげて捜査をすることになるのであるが、この対決が、本作の見どころだと思う。
サスペンスフルだったのだが、一つだけ、苦言を呈したい。
それは、本作のタイトル「夏は、愛と殺人の季節」がもつ印象と、本作の内容のギャップが大きいのではないかと感じたからである。
タイトルをみると、情緒的で男女の恋愛が描かれ、その末に起きた殺人事件だと想像していたが、そうしたロマンチックなシーンは皆無であった。
そこだけが、残念である。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
四季の中、どの季節が一番、犯罪が多いだろうかと、考えることがある。スリ、強盗、窃盗などはどの季節にもふさわしい気がするが、殺人だけは、一番、夏にふさわしい気がしてならない。ぎらつく太陽、流れる汗、いらだつ気持、そんなものが、殺人に至る原因になっていくのではないか。そんなことを考えながら、一つの事件を、書いてみました。
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