初版発行日 1997年2月25日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
刑事の父が謎の事故死!名勝・下呂、高山に繰り広げられる若手刑事・西本の奮闘と、上司・十津川警部の名推理!
あらすじ
警視庁捜査一課の西本刑事の父親が、岐阜の下呂・高山の間で交通事故死・父の車に山田かずえという見ず知らずの女性が同乗していたのはなぜか?西本は事故に疑問を。かずえの妹・あきも姉の死に不審を抱き、西本とともに真相究明に乗り出したそのとき、高山の朝市で藤代みゆきというOLが刺された!さらに、特急「ひだ5号」の車内であきも何者かに背中を刺され……!?
なぜ父親とかずえは一緒にいたのか?この二人を結ぶ糸がたぐりよせられたとき、事件は意外な展開を!
小説の目次
- 父の死
- 高山本線
- 再会
- 現実化する不安
- スキャンダル
- 人間関係
- 愛憎
- 真犯人
冒頭の文
西本刑事にとって、父の死はあまりにも唐突だった。
小説に登場した舞台
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 下呂駅(岐阜県下呂市)
- 下呂温泉(岐阜県下呂市)
- 陣屋前朝市(岐阜県高山市)
- 下呂温泉合掌村(岐阜県下呂市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 渡辺:
下呂警察署の刑事。 - 三浦:
岐阜県警の刑事。 - 森田:
岐阜県警の警部。
M化学
- 木原周蔵:
75歳。M化学の社長。 - 木原健二:
木原周蔵の弟。M化学の副社長。 - 原田浩:
45歳。M化学の重役。渋谷区松濤に在住。山田かずえと不倫していた。 - 原田由美子:
原田浩の妻。 - 三井広志:
M化学の重役。管理部長。原田浩の大学の後輩。 - 小田切隆:
62歳。M化学の営業担当の重役。 - 大谷啓二:
54歳。M化学の人事担当の重役。 - 丸山:
M化学の広報課長。
事件関係者
- 西本肇:
53歳。西本刑事の父親。下呂・高山を旅行中、事故死する。 - 山田かずえ:
30歳。インテリアデザイナー。上北沢駅近くのマンションに在住。西本肇と一緒に車に乗っていたが、事故死する。 - 山田あき:
山田かずえの妹。建設会社に勤務。特急「ひだ5号」の車内で何者かに刺され負傷する。 - 藤代みゆき:
23歳。S製菓に勤務。中野区弥生町のマンションに在住。高山の陣屋前朝市で何者かに刺されて負傷する。 - 白石麻美:
六本木にあるクラブのホステス。阿佐ヶ谷のマンションに在住。一年前、山田かずえが営むインテリアデザインの店で勤務していた。多摩川の河川敷で死体となって発見された。
その他の登場人物
- 三田浩:
下呂にある三田石材店の店主。 - 寺田みどり:
S製菓に勤務。藤代みゆきと同じ短大を卒業している。 - 小林圭子:
白石麻美の友人。 - 工藤:
飯田橋にある出版社の編集長。M化学のスキャンダルを書いた雑誌。 - 平野:
四谷三丁目に事務所をかまえる弁護士。 - 片桐恵子:
原田由美子の大学時代の友人。 - 正木:
代々木に事務所をかまえる探偵事務所の所長。元警察署長。 - 青木治子:
R病院の事務局員。
印象に残った名言、名表現
なし。
感想
本作は、企業内の出世争い・お家騒動が事件のコアであった。
警視庁捜査一課の若手エース・西本刑事の父親が同乗していた女とともに、事故死してしまうというショッキングな出来事から捜査がスタートする。父親の事故死を不審に思った西本刑事と、同じく姉の事故死を不審に思った妹が、違うアプローチで事件の謎を追っていく。
この二人は同士ではあるが、恋人でも友人でもない。微妙な距離感でやり合う会話劇が楽しい。スピード感あふれる展開で、あっという間に読み終えることが出来るのも良かった。
中盤以降は、十津川警部が乗り出してきて、警視庁捜査一課としての捜査になっていくが、西本刑事と妹の捜査劇がメインでも面白かったかもしれない。
最後に、本作刊行にあたり発表された西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。
高山本線で下呂、高山を取材し、作品するのはこれで二度目である。それだけこの地区は、面白味があるということになる。大都会の名古屋から、列車で一時間もすると、たちまち日本ライン下りという美しい渓谷にぶつかり、さらに一時間もすると、小京都といわれる高山があり、さらに日本の文化遺産といわれる合掌造りの村を眼にすることができる。この景色の変化が、なによりも旅の楽しみを味あわせてくれる。それは言葉を変えていえば、作品の舞台として面白い、楽しいということになってくるのである。
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