初版発行日 1994年9月25日
発行出版社 光文社
スタイル 短編集
私の評価
十津川を狙うライフルの銃口!罠にはめられた警部の逆襲!
あらすじ
1.十津川警部の標的
殺人犯はどこへ逃げるのか?犯人の深層心理を読む十津川警部。新宿のホステス殺しの容疑者・竹田淳の逃走経路を推理した十津川は、北陸・芦原温泉に潜む竹田をみごとにつきとめる。その竹田を越前海岸の名勝・呼鳥門に誘き寄せた十津川は、逆にライフル銃の標的となり、狙撃された!間一髪、難を逃れる十津川。パジェロで逃亡する竹田。罠にはめられた十津川は、狡知に長けた真犯人に対し、息づまる逆襲を仕掛けるが……。
2.十津川警部「いたち」を追う
松江出身で警視庁捜査一課の北川刑事は、松江にいる親友の結婚式に参加したついでに足立美術館を訪れた。特別室で横山大観の絵を観ていた時、同じ部屋にいた男が毒死した。死んだ男は死ぬ間際、「ハシモト」というダイイングメッセージを残す。男がのこした「ハシモト」の意味とは?
3.十津川、民謡を唄う
短編集「哀しみの余部鉄橋」に収録。下記を参照↓↓
→「哀しみの余部鉄橋」
小説に登場した舞台
1.十津川警部の標的
- 小松空港(石川県小松市)
- 加賀温泉駅(石川県加賀市)
- 片山津温泉(石川県加賀市)
- 山代温泉(石川県加賀市)
- 山中温泉(石川県加賀市)
- 芦原温泉(福井県あわら市)
- 呼鳥門(福井県・越前町)
- 九頭竜湖(福井県大野市)
- 九頭竜湖駅(福井県大野市)
- 石和温泉(山梨県笛吹市)
- 昇仙峡(山梨県甲府市)
2.十津川警部「いたち」を追う
- 安来駅(島根県安来市)
- 鷺の湯温泉(島根県安来市)
- 足立美術館(島根県安来市)
- 米子鬼太郎空港(鳥取県境港市)
- 玉造温泉(島根県松江市)
3.十津川、民謡を唄う
短編集「哀しみの余部鉄橋」に収録。下記を参照↓↓
→「哀しみの余部鉄橋」
登場人物
1.十津川警部の標的
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 白石かおり:
30歳。クラブのホステス。新宿中央公園で何者かに殺害される。 - 竹田淳:
28歳。上北沢にあるマンションに在住。結婚詐欺の前科あり。白石かおり殺害の容疑者として指名手配されていたが、九頭竜湖に停まっていたパジェロの中で死体となって発見された。 - 林:
W交通のタクシー運転手。 - 前田:
福井県警の本部長。 - 村上:
福井県警の警部。 - 吉沢広克:
42歳。T大学の助教授。警視庁の顧問。元FBI捜査官。西麻布のマンションに在住。 - 古井雅人:
29歳。去年の10月に、中小企業の社長殺害容疑で十津川に逮捕された古井純二の兄。渋谷区神泉のマンションに在住。 - 酒井淳一郎:
警察学校の教官。
2.十津川警部「いたち」を追う
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北川:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。松江出身。足立美術館を訪れていたところ、事件に遭遇する。 - 林清太郎:
30歳。R電機本社の業務三課の課長補佐。大田区田園調布のマンションに在住。足立美術館で毒殺される。 - 三浦:
島根県警の警部。 - 橋本圭一:
R電機本社の管理課の課長補佐。林清太郎の同期。自宅マンションから転落して死亡した。 - 岸田明:
28歳。R電機本社の業務三課の係長。橋本圭一の部下。 - 青木:
R電機本社の管理課の課長補佐。橋本圭一の同僚。
3.十津川、民謡を唄う
短編集「哀しみの余部鉄橋」に収録。下記を参照↓↓
→「哀しみの余部鉄橋」
印象に残った名言、名表現
(1)北の空気は悲愴感になじむ。
犯罪者は追われることで、悲愴感に包まれる。その悲愴感には、北の空気がふさわしいと、十津川は思うのだ。
(2)危険を察知した十津川警部。
一瞬、冷たいものが背筋を走ったのは、長年の刑事の勘だったかもしれない。それとも、危険を予知する動物的本能だったのか。
感想
本作は、3つの作品の短編集である。
1作目の「十津川警部の標的」は、十津川警部が罠にかけられ、危うく狙撃されてしまう事件であった。2作目の「十津川警部「いたち」を追う」は、ダイイングメッセージ「ハシモト」の謎を追う事件であった。そして、3作目の「十津川、民謡を唄う」は民謡・安来節が捜査のカギを握る事件であった。
いずれも、趣向とトリックがこらされた秀作であったが、「十津川警部の標的」は、十津川警部が犯人を罠にはめるために、亀井刑事も騙していたという、壮大な罠がすばらしい。
最後に、「十津川警部の標的」について、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
この作品を書くため、今年の六月下旬、越前海岸へ取材に行ってきた。梅雨の盛りで、海は文字どおり鉛色で、細かい雨が降り続いていた。北陸の海岸は、能登から東尋坊にかけて、何回か見て歩いたことがあったが、初めて見た越前海岸は、まったく景色が違っていて驚かされた。同じように日本海の強い風や波に洗われながら、能登から東尋坊にかけてはどこか丸みがあり、優しく接してくれるのだが、越前海岸は刀のように鋭く、同時に、触れれば崩れる感じで人を受けつけなかった。
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