初版発行日 2001年9月10日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編
死者の遺した予言とおりに起こる連続殺人!果たして予言は、ホンモノなのか?十津川警部が、女霊能者と対決する!!
あらすじ
多摩川の河原で予備校生が殺された。部屋のカレンダーには十一文字のアルファベットが。一か月後、東京発ひかり147号車内で、宝石店社長・井原久美が毒殺される。十一文字は久美が殺害された日付、列車、席番号を表していた。少年は死後の事件を予知していたのか!?さらに久美と関係のあった三人の男が次々に殺され……。
小説の目次
- 第一の殺人
- 予知能力
- 接点
- メールの少女
- 宙でゆれる
- ヒミコと呼ばれる女
- 逆転
冒頭の文
まだ肌寒い三月初旬の週末の夜。
東京調布の甲州街道は、騒然としていた。
小説に登場した舞台
- 諏訪湖サービスエリア(長野県諏訪市)
- 諏訪湖間欠泉(長野県諏訪市)
- 宮島口駅(広島県廿日市市)
- 宮島口港(広島県廿日市市)
- 宮島(広島県廿日市市)
- 厳島神社(広島県廿日市市)
- 弥山(広島県廿日市市)
- 石神井公園(東京都練馬区)
- 伊東(静岡県伊東市)
- 広島駅(広島県広島市南区)
- 二ヶ城山(広島県広島市安佐北区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 中原要:
19歳。予備校生。予知能力があると言われていた。調布市の多摩川河原で殺されていた。 - 井原久美:
35歳。宝石店「イハラ宝石」を営む。東海道新幹線ひかりの車内で毒殺される。 - 井原貞之:
58歳。井原久美の父親。宮島の土産物店「いはら屋」を営む。 - 井原保子:
53歳。井原久美の母親。 - 菊池了介:
金融業やパチコン店のオーナー。井原久美のスポンサーだった。 - 河村慎太郎:
67歳。代議士。元法務大臣。井原久美のスポンサーだった。 - 松木:
河村慎太郎の秘書。 - 小池恵一:
62歳。芸能プラ「NCエンタープライズ」の社長。井原久美のスポンサーだった。 - 小田中みゆき:
中原要のメル友と名乗った少女。予知能力がある。 - 小柳誠:
25歳。宮島ロープウェイの従業員。 - 向井佐千子:
ヒミコと呼ばれる霊能者。 - 原清之:
46歳。倒産した広島市内の建設会社の社長。 - 原文子:
40歳。原清之の妻。
その他の登場人物
- 坂田真彦:
暴走族N組のリーダー。 - 桜井:
東海道新幹線の専務車掌。 - 金本広志:
50歳。「イハラ宝石新宿店」の店長。 - 原田:
「イハラ宝石新宿店」の店員。 - 渡辺典子:
「イハラ宝石新宿店」の店員。 - 川上:
新宿Kデパートの店長。 - 中原司郎:
56歳。中原要の父親。諏訪湖近くで土産物店を営む。 - 中原治子:
中原要の母親。 - 杉下信治:
19歳。諏訪で配管工の見習いをしている。中原要の同級生。 - 中村涼子:
35歳。井原久美の友人。 - 竹下:
大阪府警の警部。 - 真木:
広島県警の警部。 - 菊池:
広島県警の刑事。 - 小島:
静岡県警の警部。 - 代田加代子:
小池恵一の秘書。 - 水田文子:
小池恵一の通いのお手伝い。 - 横山あかり:
22歳。女優。小池恵一と交際していた。 - 石井:
宮島ロープウェイ会社の社長。 - 鈴木:
宮島ロープウェイの従業員。 - 日野:
神田にあるT出版の編集長。 - 石田守良:
大物霊能者。 - 松田:
代議士。
印象に残った名言、名表現
(1)瀬戸内海から見る、宮島の景色。
風もなく、瀬戸内海は、おだやかだった。二人は、甲板の椅子に腰を下ろして、潮風を受けながら、近づいてくる宮島を見つめていた。
宮島が、近づくにつれて、海中に立つ大鳥居が、視界に入ってくる。
それ以上に、宮島にそびえる弥山、駒ヶ林の山々と、その山々を覆う原生林が、圧倒的なかたまりとなって、近づいてきた。
(2)中原要がメル友に送ったことば。
男が一人、森の中で死んだ。
もう一人の男が、水に浮かんでいる。
三人目の男が、宙でゆれた。
全て、神さまの思しめし。
(3)十津川警部は、リアリスト。
「私は、もともと、リアリストで、予言だとか、霊感といったものを、信じない人間だからね」
感想
1980年代から2000年代頭にかけて、日本では、”霊能者”がブームになっていた。テレビ番組で、霊能者に”霊視”をさせてみる番組が、人気を博していた記憶がある。
当然、この霊能者については、当時から多くの賛否両論があり、科学者たちは、霊視をインチキだと否定していた。
本作は、2001年に刊行された作品である。だから、当時の社会的な背景として、霊能者を題材にしたのだと思う。
2021年現在、霊能者がかつてのように、テレビや世間を賑わせることはなくなった。それは、インターネットの進化が関係していると思う。以前に比べて、情報のウラを取れる、スピードが飛躍的にあがったからだ。
だから、”ニセモノ”がすぐに、バレてしまうのである。(もちろん、本物の霊能者がいる可能性もある。)
本作は、霊能者が世間を賑わせていた当時の空気感を描いた、民俗誌的な一面も持ち合わせている。そんなミステリー作品だと思う。
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