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「十津川警部の事件簿」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

十津川警部の事件簿小説

初版発行日 1998年12月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 短編集

私の評価 4.0

POINT】
若き日の十津川警部の活躍を描いた6編を収録する短編集!
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あらすじ

1.甘い殺意

「関根パン」の製品を小売店に配達する営業員の岡田は、得意先の女主人・幸江との情事を楽しんでいた。が、ある日、幸江の店先にライバル社のパンが積まれているのを発見。他の男に乗りかえたことを覚った岡田は、嫌がらせのためにそのパンに下剤を仕込んだのだが、なぜか、それを食べた幸江が毒死してしまったのだ!?

2.危険な賞金

不動通り商店街にある「佐藤医院」の医師・佐藤幸太郎が小さな路地で死体となって発見された。「佐藤医師を殺した犯人を見つけるために500万円の懸賞金を払う」という匿名の新聞広告が掲載される。十津川警部が捜査を開始した矢先、「佐藤医院」の看護師・服部文子も殺害されてしまう。

3.白いスキャンダル

東南商事の秘書課長・沢木功は、会社の出世コースを歩み、資産家の娘を妻にもつ、勝ち組だった。だが、かつて札幌支店に勤務していた時の不倫相手が自殺した事実をバラされたくなければ、1千万円払いという脅迫文が届く。沢木は指定された新宿Kホテルの部屋に訪れたが、そこには恐るべき罠が仕掛けられていた。

4.戦慄のライフル

ライフルで東京の二人の人間を殺した岡部史郎が大阪で逮捕された。刑事が新幹線で岡部を護送中、6人組に襲われ、岡部がさらわれてしまった。6人組の正体は誰か?なぜ、岡部をさらい、何をしようとしているのか?

5.白い罠

太陽商事の矢崎は、同僚の青木と田口に連れられてきた新宿のバーで知り合ったホステス・高井由美子と彼女の部屋で一夜を共にした。翌日、彼女の部屋から帰った後、上司の若杉課長の妻・京子が殺されたことを知る。京子の日記には若杉課長の部下の一人と関係をもってしまったことが書かれており、容疑者として矢崎、田口、青木の3人が連行される。京子が殺された時間、矢崎は高井由美子の部屋にいたと供述したが、高井由美子は矢崎と過ごしてないと証言した。矢崎を罠にはめた真犯人は誰か?

6.死者に捧げる殺人

満員の後楽園球場。巨人の劇的サヨナラ・ホームランで興奮の坩堝の中で、1人の老人が絞殺されていた! 12日後、マニラで日本人が絞殺され、続いて……無関係に見えた殺人事件が、1本の線で結ばれていたとしたら──。

小説に登場した舞台

1.甘い殺意

なし。

2.危険な賞金

  • 不動通商店街(東京都渋谷区)

3.白いスキャンダル

  • 新宿(東京都新宿区)

4.戦慄のライフル

  • 京都駅(京都府京都市下京区)
  • 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
  • 田園調布(東京都大田区)
  • 西軽井沢(長野県・御代田町)

5.白い罠

  • 新宿(東京都新宿区)

6.死者に捧げる殺人

  • 後楽園球場(東京都文京区)
  • マニラ(フィリピン)
  • 千葉駅(千葉県千葉市中央区)
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登場人物

1.甘い殺意

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 江本:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 岡田五郎:
    25歳。「関根パン」の営業員。
  • 太田幸江:
    38歳。「関根パン」の取引先の主。「関根パン」の岡田五郎との関係を楽しんでいたが、「白井パン」の中島に乗り換えた。売れ残った菓子パンを食べて毒死する。
  • 田島真由美:
    20歳。太田幸江の店のアルバイト。
  • 中島:
    「白井パン」の営業員。

2.危険な賞金

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 鈴木:
    警視庁捜査一課のベテラン刑事。十津川警部の部下。
  • 日高:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 佐藤幸太郎:
    60歳。不動通り商店街にある「佐藤医院」の医師。路地で死体となって発見された。
  • 服部文子:
    「佐藤医院」の看護師。佐藤幸太郎の恋人。佐藤医院の二階で死体となって発見された。
  • 中田冴子:
    佐藤幸太郎の娘。長女。
  • 中田一郎:
    中田冴子の夫。医師。
  • 近藤ゆかり:
    佐藤幸太郎の娘。次女。
  • 近藤利之:
    近藤ゆかりの夫。医師。
  • 大熊晋吉:
    52歳。不動通り商店街にある「大熊時計店」の主人。
  • 渡辺鉄三:
    55歳。不動通り商店街にある呉服店の店主。
  • 川崎勉:
    47歳。不動通り商店街にある電気店の店主。
  • 竹内一郎:
    51歳。不動通り商店街にあるスーパーマーケットの社長。

3.白いスキャンダル

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 沢木功:
    35歳。東南商事の秘書課長。世田谷にあるマンションに在住。
  • 沢木久仁子:
    沢木功の妻。資産家の娘。
  • 佐藤貢一郎:
    沢木久仁子の父親。会社の重役。
  • 田島美根子:
    当時28歳。札幌在住。沢木功の不倫相手だったが、騙されたことを知り自殺した。
  • 小川君子:
    ホステス。栃木県佐野市のアパートに在住。かつて世田谷の前田病院で看護師をしていた。新宿Kホテルで沢木功を恐喝した女性。

4.戦慄のライフル

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 桜井:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 井上:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 江島:
    警視庁捜査四課の警部。
  • 相原:
    科研の技官。銃の専門家。
  • 岡部史郎:
    29歳。元自衛隊。ライフルで二人の人間を射殺し逮捕された男。
  • 加藤一郎:
    新幹線で刑事を襲い、岡部史郎をさらっていった6人組のリーダー。
  • 徳田大造:
    関西のN組の組長。
  • 鈴木:
    25歳。関東のS組の組員。
  • 伊原正己:
    60歳。M商事の営業部長。田園調布に在住。
  • 二階堂政彦:
    72歳。M商事の商事の社長。

5.白い罠

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 矢崎:
    太陽商事の営業第三課に勤務。板橋のマンションに在住。
  • 田口:
    矢崎の同僚。
  • 青木:
    矢崎の同僚。
  • 高井由美子:
    新宿にあるバー「ピッコロ」のホステス。笹塚のマンションに在住。
  • 若杉春彦:
    太陽商事の営業第三課の課長。駒沢に在住。
  • 若杉京子:
    若杉課長の妻。自宅で何者かに殺害される。

6.死者に捧げる殺人

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 中本:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 亀井健一:
    亀井刑事の息子。
  • 島田:
    警視庁機動捜査隊のベテラン刑事。
  • 長谷川進:
    65歳。元国会図書館の職員。3年前に定年退職した。渋谷区笹塚のマンションに在住。後楽園球場で何者かに殺害される。
  • 長谷川文子:
    62歳。長谷川進の妻。
  • 堀井清一:
    50歳。中央テレビのベテランアナウンサー。マニラ市内のホテルで何者かに殺害される。
  • 日野恵子:
    中央テレビの女性アナウンサー。
  • 西川裕一郎:
    中央テレビのカメラマン。
  • 本目和彦:
    中央テレビのカメラマン。
  • 金子透:
    中央テレビのプロデューサー。
  • 水沼:
    中央テレビのアナウンサー。堀井清一の同期。
  • 青木:
    中央テレビの放送部長。
  • 横山:
    警察庁の警部。
  • 服部勇一:
    49歳。武蔵小山駅近くにある電気店「服部電気店」の主人。5年前まで中央テレビの技術者だった。テレビを配送した配送先のアパートで死体となって発見された。
  • 服部君江:
    服部勇一の妻。
  • 山田:
    警視庁捜査一課の警部。十津川警部の同僚。
  • 安川:
    国会図書館の職員。資料室の責任者。
  • 柳沼功:
    千葉市内でカメラ店を営む。かつて航空写真のカメラマンだった。
  • 今西徹也:
    49歳。貿易会社の社長。

印象に残った名言、名表現

(1)男が悟る瞬間。

岡田の顔から、血の気が引いていった。あの男が、自分の代りになったと気がついたからだった。幸江は、パン屋を乗りかえただけでなく、男も乗りかえたのだ。

(2)疑惑が鮮明になっていく。

新しい疑惑が生れたのを感じた。いや、ぼんやりとしていた疑惑が、かなり鮮明な形になったといったほうが正確だろう。

(3)誰もが一度は経験する感覚。

階段を下りていって、最後がもう一段あると思って、足を出したとき、そこに何もないと、一瞬だが、宙に投げ出されたような不安感に襲われるものである。

感想

本作は、6編からなる短編集である。とくに、若い頃の十津川警部の活躍を描いたものなので、時代を感じさせる描写もあった。

例えば、「死者に捧げる殺人」では、今はなき後楽園球場が事件現場になり、定岡や原など当時のプロ野球選手が登場した。これだけで、時代を感じさせるものであった。

この他の5作品も、短編ならではの、ちょっとした趣向、意表を突くトリックがあり、面白い。

「甘い殺意」は、下剤入りのパンを毒入りパンにすり替えるトリックが使われ、「危険な賞金」では、500万円の懸賞金広告が事件解決のカギになった。

また、「白いスキャンダル」は、まさかの人物が真犯人という大どんでん返しがあり、「戦慄のライフル」では、クスッと笑える意外な結末があり、「白い罠」は、ホステスとの甘い情事が仕組まれた罠だったというものである。

良作ばかりが詰め込まれた短編集である。

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