初版発行日 1989年7月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
九州から東京へ。時刻表トリックに十津川警部が挑む!
九州から東京へ。時刻表トリックに十津川警部が挑む!
あらすじ
東京駅に着いた寝台特急「さくら」の個室から、男女の射殺死体が見つかった。さらに所持品からご千万円の札束が。その札は四年前の少女誘拐殺人事件で、身代金に使われたものらしい。少女の父親が、犯人に復讐したのか?しかし、彼は同じ日に先行する寝台特急「あさかぜ」に乗っていたとの証言が!
小説の目次
- カルテットの客
- 私刑
- 身元確認
- 遺書
- 危険への接近
- 最後の挑戦
冒頭の文
一七時〇二分、長崎発の東京行寝台特急「さくら」には、コンパートメントの走りといわれる四人用個室「カルテット」が、一両、連結されている。
小説に登場した舞台
- 長崎駅(長崎県長崎市)
- 寝台特急「さくら」
- 博多駅(福岡県福岡市博多区)
- 横浜駅(神奈川県横浜市西区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 新宿駅(東京都新宿区)
- 特急「あずさ27号」
- 清里駅(山梨県北杜市)
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 三田:
下関署の警部。 - 松山:
長崎県警の警部。 - 久保:
科研の技官。 - 山内文男:
4年前の及川やよい誘拐殺人事件を捜査していた警部。この事件が原因で辞職した。現在は新宿西口にある運動具店で働いている。その後、長崎のホテルで自殺した。 - 佐々木:
54歳。調布警察署の刑事。4年前の及川やよい誘拐殺人事件の時、山内の下で捜査していた。
事件関係者
- 及川やよい:
当時11歳。4年前の少女誘拐殺人事件の被害者。 - 及川俊郎:
42歳。及川やよいの父親。 - 及川美津子:
37歳。及川やよいの母親。 - 長山卓也:
寝台特急「さくら」の車内で射殺された男。かつて新宿西口でレストランを経営していたが倒産。熊本出身。 - 小野内ゆう子:
寝台特急「さくら」の車内で射殺された女。銀座のクラブ「赤いバラ」でホステスをしていた。世田谷区松原のマンションに在住。 - 杉浦明:
久我山に住む資産家。地上げとスーパーの経営をしている。公安委員。福島県出身。 - 小川俊一:
35歳。四谷に事務所をかまえる私立探偵。 - 中川修一郎:
新宿西口にある「共盛商事」の社員。奥多摩の雑木林で死体となって発見された。 - 小田:
K組の組員。
その他の登場人物
- 小池:
S大学の教授。及川俊郎の親戚。 - 森岡:
明大前にある興信所の所長。 - 河西:
新宿にあるK物産の営業社員。調布市内に在住。 - 谷川ゆき:
及川俊郎が夜行列車「あさかぜ」の中で話した乗客。大手町にある商事会社に勤務。世田谷区松原に在住。 - 三木ひろ子:
47歳。長山卓也の元妻。久我山に在住。 - 橋本:
上野にあるレストランのシェフ。かつて永山卓也のレストランで働いていた。 - 山本:
70歳。公安委員。 - 青田:
62歳。コンサルタント。公安委員。 - 原田めぐみ:
50歳。杉浦明の知り合い。現在、腎臓疾患で八ヶ岳で療養中。 - 佐川:
渋谷道玄坂で占い師をしている。杉浦明の知り合い。 - 河西:
横浜にある河西美容整形の医師。 - 小島弓子:
新宿にあるスイミングクラブのコーチ。 - 石本美矢子:
新宿にあるスイミングクラブの会員。小野内ゆう子と親しくしていた。
印象に残った名言、名表現
■かつての日本にはこうした連帯感があった。
昨日まで、全く知らなかった乗客が、洗面所で顔を合わせると、「お早うございます」と、あいさつしている。
感想
本作は、時刻表トリックと、二転三転するストーリーが魅力である。
時刻表トリックは、西村京太郎サスペンスの十八番であり、これまで数多くの作品でいろいろなトリックが使われてきた。残念ながら、現代は、インターネットの発達で、時刻表トリックを使うことが難しくなったが、本作が刊行された1980年代は、まだまだ一線級のトリックだったと言えよう。
また、ミステリーの醍醐味の一つが、犯人当てであるが、本作では、容疑者が二転三転し、終盤まで真犯人がわからない。「いったい、どちらが犯人なのか?」と、自分なりに推理を働かせながら、想像力を逞しくしながら、読み進めていくのが、本書を最大限味わう方法であろう。
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