初版発行日 2000年11月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
私の評価
モーゼ、キリスト、天の浮船まで登場する超古代文書が新たな悲劇を招く。かつてない壮大な事件に十津川が挑む!この結末は誰にも予想できない!!
あらすじ
上巻
能登・モーゼの墓、青森・キリストの墓、四国の剣山、そして北アルプス……。これらはみな竹内文献に基づく日本の聖地である。この文書を崇拝し、日本版ノアの箱舟である”天の浮舟”伝説を信じる会社社長・長谷川と、美人秘書・ゆう子。そして、聖地を訪ね歩く二人の後には、必ず若い女性の惨殺死体が……。
下巻
聖地で連続して発見された、若い女性四人の惨殺死体。身元を解き明かす鍵は、ある”愛の館”にあった。しかし誰が?何のために?日本版ピラミッドとされる長野・皆神山の発掘計画を押し進める長谷川社長と秘書・ゆう子の前には、ついに五人目の死体が……。
小説の目次
- 空の伝説
- 姿の見えぬ敵
- 青の幻想
- 謎の女
- 十津川の見方
- 水瓶座流星群
- 夜行列車
- 阿波人形
- 剣山
- 女の経歴
- 父と娘
- 北アルプス
- 死の伝説
- 女たち
- 愛の館
- 男の影
- 尾行
- 嫉妬
- 私立探偵
- 夢と現実と
- 発掘申請
- 妨害
- 愛の錯乱
- 緊急逮捕
- 怪文書
- 容疑を固める
- 逃亡
- 天空の死
冒頭の文
警視庁を退職した刑事が、何をするかは、さまざまである。
小説に登場した舞台
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 特急サンダーバード
- 和倉温泉(石川県七尾市)
- 伝説の森公園 モーゼパーク(石川県・宝達志水町)
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 十二湖駅(青森県・深浦町)
- 青池(青森県・深浦町)
- 寝台特急「日本海1号」
- 弘前駅(青森県弘前市)
- 十和田湖(青森県十和田市)
- 乙女の像(青森県十和田市)
- キリストの墓(青森県・新郷村)
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- キリストの里伝承館(青森県・新郷村)
- 寝台特急「サンライズ瀬戸」
- 岡山駅(岡山県岡山市北区)
- 高松駅(香川県高松市)
- 徳島駅(徳島県徳島市)
- 剣山(徳島県三好市・美馬市)
- 大鳴門橋(徳島県鳴門市)
- 洲本温泉(兵庫県洲本市)
- 鳥取砂丘コナン空港(鳥取県鳥取市)
- 鳥取砂丘(鳥取県鳥取市)
- 鳥取市役所(鳥取県鳥取市)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 特急「サンダーバード宇奈月」
- 宇奈月温泉駅(富山県黒部市)
- 宇奈月温泉(富山県黒部市)
- 小淵沢駅(山梨県北杜市)
- 野辺山駅(長野県・南牧村)
- 野辺山高原(長野県・南牧村)
- 能登島(石川県七尾市)
- 祇園(京都府京都市東山区)
- 八坂神社(京都府京都市東山区)
- 渡月橋(京都府京都市右京区)
- 嵯峨野(京都府京都市右京区)
- 直指庵(京都府京都市右京区)
- 清水寺(京都府京都市東山区)
- 石塀小路(京都府京都市東山区)
- 新宿駅(東京都新宿区)
- 特急「あずさ65号」
- 松本駅(長野県松本市)
- 特急「あさま509号」
- 長野駅(長野県長野市)
- 皆神山(長野県長野市)
- 戸倉上山田温泉(長野県千曲市)
- 大正橋(長野県千曲市)
- 熊野出速雄神社(長野県長野市)
- 奥多摩湖(東京都・奥多摩町)
- 深大寺(東京都調布市)
- 調布飛行場(東京都調布市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 平井:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 戸田:
石川県警の刑事。 - 井上:
石川県警の刑事。 - 三浦:
青森県警の警部。 - 中根:
青森県警の刑事。 - 佐藤:
新郷村派出所の巡査部長。 - 小久保:
香川県警捜査一課の警部。 - 岸田:
香川県警捜査一課の刑事。 - 高木:
徳島県警の警部。 - 野原:
富山県警の刑事。 - 足立:
富山県警の警部。 - 永尾:
長野県警の刑事。 - 宮下:
長野県警の警部。 - 岸川:
長野県警の刑事。 - 北原:
長野県警の警部。 - 中村:
科研の技官。
ISアーチスト
- 長谷川司:
60歳。ゲームソフト会社「ISアーチスト」の社長。孤児院「ヴィナマの館」の理事長。東京都調布市に在住。 - 辻ゆう子:
27歳。長谷川司の個人秘書。 - 長谷川かおり:
長谷川司の娘。長谷川司の秘書をしている。渋谷区松濤のマンションに在住。 - 広瀬:
「ISアーチスト」の秘書。 - 射手矢:
「ISアーチスト」の社員。長谷川かおりの恋人。 - 井口ひろし:
「ISアーチスト」の社員。 - 宮本:
「ISアーチスト」の社員。大学時代に山岳部に所属していた。北アルプスで爆死した。 - 浅沼吾郎:
29歳。「ISアーチスト」の元社員。 - 冬木:
「ISアーチスト」の人事部長。 - 古川:
52歳。「ISアーチスト」の技術部長。 - 小坂井:
「ISアーチスト」の秘書室長。 - 渋谷:
「ISアーチスト」の顧問弁護士。 - 海部:
「ISアーチスト」の顧問弁護士。
孤児院「ヴィナマの館」
- 戸田ユミ:
24歳。旅行とカメラが趣味。孤児院「ヴィナマの館」の出身。 - 小田切阿里沙:
25歳。孤児院「ヴィナマの館」の出身。小田切実の養女。13年前に行方不明になる。モーゼの墓で死体となって発見された。 - 篠原かえで:
孤児院「ヴィナマの館」を卒業した女性。熊野出速雄神社の裏手で死体となって発見された。 - 水木幸:
孤児院「ヴィナマの館」の責任者。 - 細川あや子:
22歳。孤児院「ヴィナマの館」の出身。新宿の法律事務所に勤務。中野のマンションに夫と在住。 - 福永保子:
30歳。孤児院「ヴィナマの館」の出身。初台にある喫茶店「天の浮船」の店主。
事件関係者
- 青木誠治:
元警視庁捜査一課の刑事。定年退職後、小林誠とUFO研究会を作りUFOを探している。十和田湖畔の旅館の駐車場で何者かに狙撃されて負傷する。 - 小林誠:
元M商事の社員。定年退職後、青木誠治とUFOを探している。自宅の近くで何者かに撃たれて重症を負う。病院から退院後、何者かに射殺された。 - 小田切実:
59歳。中野にある喫茶店の店主。元M銀行練馬支店長。中野区のマンションに在住。サンライズ瀬戸の個室寝台で死体となって発見された。 - 竹西俊:
南青山に事務所をかまえる私立探偵。元大阪府警の刑事。戸倉上山田温泉近くの千曲川で死体となって発見された。 - 矢吹邦夫:
35歳。改造拳銃を作っていた男。武蔵境に在住。自宅の地下室で死体となって発見された。
その他の登場人物
- 山野弘夫:
40歳。十二湖でイワナの養殖場の管理をしている男。 - 水野:
剣山国民宿舎の支配人。 - 山田:
新宿Rホテルにあるバーのバーテン。 - 小西綾子:
60歳。鳥取砂丘の土産物店に勤務。 - 緒方:
65歳。鳥取市内にある緒方酒店の店主。 - 原:
67歳。鳥取市内ある養護老人ホームに入居中の老人。 - 辻伸吉:
タクシー運転手。5年前に死亡している。 - 神田弘:
バッジマニア。渋谷区本町のマンションに在住。 - 諸井明:
フリーライター。孤児院「ヴィナマの館」の記事を書いたことがある。 - 豊岡:
私立探偵。 - 木島:
松代町役場の職員。 - 三宅:
長野市長。
印象に残った名言、名表現
■竹内文献。
日本の始りは、伝説でも、天照大神なのだが、竹内文献によると、それ以前に、天神七代、上古二十五代の天皇家が、続いていたというのである。更に、この後に、葺不合朝七十三代があるというのだから、宇宙の始りという、途方もない大昔から、日本には天皇家があり、日本の歴史があったことになる。
感想
本作は、上下巻の長編らしい、壮大でサスペンスフルな作品だったと思う。
まず、竹内文献と古代史に関する解説がところどころに挟まれている。丁度いいボリューム感で読みやすく理解しやすい。また、この古代史にまつわる話が、事件に妖しさを与えていた。
そして、能登・モーゼの墓、青森・キリストの墓、四国の剣山、北アルプスなど、日本各地の古代史の聖地が登場する。そして、この聖地で事件が起こり、事件を追う十津川班が聖地を駆け回るのである。
今回の事件では10人以上の人間が死亡する。本当に大事件である。容疑者も二転三転し、最後にどんでん返しが起こるのである。最後まで何が起こるかわからない、サスペンスに満ちた怒涛の展開。
上下巻合わせて700ページ超を忘れさせるくらい、一気に読み進めることができた。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
日本各地に奇妙な遺跡が存在する。石川県のモーゼの墓や、青森県のキリストの墓であり、日本各地にあるといわれるピラミッドである。こうした途方もない日本古代の伝説は、どうして生れたのだろうか。その伝説を信じて、証明しようとする男がいた。また、その男をひたすら愛した女がいた。その一方で、この二人を抹殺しようとする力があり、殺人が行われた。果して、愛と死の伝説は、どんな結末を迎えるのか、楽しみに読んで下さい。
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