初版発行日 1991年11月15日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
部下を殺害した闇の組織が、さらに恐るべき犯行をくわだてている。奴等のターゲットは何か?満腔の怒りを込めて、十津川警部が組織の黒幕に迫る!
あらすじ
上巻
事件の発端は、覚醒剤中毒の男が、1人の野球少年を殺したというものだった。その少年は、十津川警部の部下、清水刑事の弟だった。清水刑事はたった1人で、覚醒剤の販売ルートを探りはじめた。しかし清水刑事は、夜行寝台列車「北斗星4号」の車中で、何者かに殺害された…。
下巻
部下の清水刑事を殺害した悪の組織は、覚醒剤の販売によって得た莫大な金を使って、恐るべき犯行を計画していた。それを知った十津川警部は、今は亡き部下の仇を討つべく、組織の黒幕へと迫っていく。しかし危険を察知した犯人側は、十津川警部の命を狙って、新たな攻撃を開始した。
小説の目次
- 悲劇で始まった
- 夜の町で
- 夜の尾行
- 函館空港
- 灰皿の町
- 函館駅
- 遺影
- 東京へ
- ヘルスクラブ
- 別荘
- パーティ
- 関係者たち
- 砂漠の国
- もう一人の若者
- 新たな犠牲者
- 合同捜査
- 交通事故
- アフリカの砂漠
- 行方不明
- 失われた記憶の中で
- 警告
- 危険への招待
- 死線
- 逃亡
- ソウルー釜山
- 千年の都・慶州
- 射殺
- 回復への道
冒頭の文
北海道は梅雨がないというが、それでも、ここ二、三日、じめじめした天気が続いていた。
小説に登場した舞台
- 函館駅(北海道函館市)
- 湯の川温泉(北海道函館市)
- 啄木小公園(北海道函館市)
- 函館空港(北海道函館市)
- 千歳空港(北海道千歳市)
- 仙台空港(宮城県名取市)
- 青森駅(青森県青森市)
- 仙台駅(宮城県仙台市青葉区)
- 上野駅(東京都台東区)
- 深大寺(東京都調布市)
- 仙石原(神奈川県・箱根町)
- 成田空港(千葉県成田市)
- 羽田空港(東京都大田区)
- 伊東(静岡県伊東市)
- カイロ国際空港(エジプト・アラブ共和国)
- ンジャメナ(チャド共和国)
- 仁川国際空港(大韓民国)
- ソウル駅(大韓民国)
- 釜山駅(大韓民国)
- 慶州(大韓民国)
- 仏国寺(大韓民国)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。函館で弟が殺害されて捜査していたところ、啄木小公園で何者かに殴られ負傷する。入院中に何者かに連れ去られ、寝台特急「北斗星4号」の中で死体となって発見された。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中:
32歳。警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田原:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本橋:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 尾形:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 三浦:
北海道警の警部。 - 小林:
函館警察署の刑事。 - 下田:
宮城県警の警部。 - 田島:
警視庁初動捜査班の警部。 - 佐伯:
警視庁初動捜査班の警部。 - 日野:
千葉県警の警部。 - 平田:
世田谷署の巡査部長。 - 白江:
第五機動隊の隊長。 - 李:
ソウル市警察署の刑事。 - 崔:
ソウル市警察署の刑事。 - 朴:
釜山市警の刑事。 - 呉正狗:
慶州市警察の刑事。 - 平木:
警視庁刑事課の警部。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 田口(通常は田島の名前で登場する)
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
事件関係者
- 長谷部:
函館新聞の記者。 - 清水:
清水刑事の弟。函館K高校野球部の選手。4番ライト。野球の試合中、グランドの外にいた石川久男に刺殺される。 - 石川久男:
32歳。トラックの運転手。清水を殺害した犯人。乃木町のコンビニで強盗に入って警官に射殺された。 - 石川ひろみ:
石川久男の妹。家出した後、行方不明になる。函館市内にある焼肉チェーンに勤務していたが、その後、世田谷区烏山の路上でトラックにはねられて意識不明。 - 野沢裕子:
N興業の社長秘書。 - 川西茂男:
覚せい剤の売人。函館市内に住んでいたが、1か月前に調布市内のマンションに引っ越してきた。深大寺の雑木林で死体となって発見された。 - 江崎周一郎:
銀座にある江崎交易の社長。箱根の仙石原に別荘をもつ。池袋にあるクラブ「365」のオーナーでもある。 - 星野:
江崎周一郎の秘書。元陸上自衛隊。 - 木原大助:
江崎周一郎の居候。 - 茨木:
江崎周一郎の部下。 - 塩谷洋:
覚せい剤の売人。烏山バイパスに停めてあった車の中で射殺体となって発見された。 - 長井利也:
覚せい剤の売人。成田空港で何者かに射殺される。 - 丸山:
石川ひろみを轢いたトラックの運転手。自宅アパートで首を吊った状態で死体となって発見された。 - 木崎実:
K組の幹部。韓国名は金華淳。
その他の登場人物
- 伊原要一郎:
38歳。函館市会議員。父親は東京に本社のある第一物商の社長。 - 原田:
伊原要一郎の秘書。 - 杉野:
代議士。 - 三沢卓造:
代議士。国務大臣。 - 藤沢司郎:
八王子市内にあるパチコン店のオーナー。 - 村上:
成田空港の税関職員。 - 藤井:
外務省のアフリカ担当の局長。 - ソムコ:
ブビア共和国の情報大臣。 - 増田:
チャドの首都・ンジャメナにある日本大使館の職員。 - 野原みや子:
池袋にあるクラブ「365」のママ。 - 平山:
池袋にあるクラブ「365」のバーテン。 - 李恵:
池袋にあるクラブ「365」のホステス。 - 田代:
M銀行の取締役。 - 宇野:
経団連の副会長。 - 長根:
代議士。外務大臣。 - 森:
NHK会長の秘書室長。 - 田代:
副総理大臣。 - 広田:
法相。 - 水野:
広田の秘書。
感想
本作は、良くいえばダイナミック、悪くいえば大味な作品だったと思う。
日本国内にとどまらず、アフリカや韓国へ犯人を追いかけた十津川警部。まさに、ワールドワイドな刑事であり、壮大な舞台で繰り広げられた捜査行になったと思う。
さらに、副総理大臣や外務大臣、国務大臣などが登場し、クーデター、テロ、機動隊など、もはや警視庁捜査一課の範囲を大きく逸脱してしまっており、ここが大味で、リアリティから大きくかけ離れてしまった印象を与えた。
ちなみに、本作で、十津川警部は、記憶喪失になる。もちろん、しばらくしたら記憶は戻ったのだが、十津川が記憶喪失になったのは初めてだったと思う。
また、十津川警部が訪れたアフリカの「ブビア共和国」は、実在しない。架空の国だと思われる。エジプトやチャド共和国、韓国は実在する国だったのに、なぜブビア共和国だけ架空の国にしたのか?は不明である。
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