初版発行日 1985年1月30日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
巧妙に仕組まれた列車トリック解明の手がかりは？会心のトラベル・ミステリー！
巧妙に仕組まれた列車トリック解明の手がかりは？会心のトラベル・ミステリー！
あらすじ
粉雪が舞う飛騨高山の民芸館で、若い女性の死体が発見された。被害者は阿井今日子。金持ちのパトロンを持ち、豪勢な暮しをしていたらしい。続いて、私立探偵の死体が……。事件の背後にひそむ複雑な三角関係。被害者への不審な電話。難事件に挑む十津川警部・亀井刑事の前には犯人の巧妙なアリバイが……。
小説の目次
- 飛騨高山民芸館
- 十津川警部
- 私立探偵
- 疑惑の的
- 証言
- 一つの壁
- 解決の糸口
- 終局
冒頭の文
飛騨高山は、山の中の町である。昔、江戸から、高山の代官所に赴任を命ぜられた男が、あまりにも山の中なので、途中で嫌になって、役人を辞めて、家へ帰ってしまったといわれる。
小説に登場した舞台
- 上三之町（岐阜県高山市）
- 上二之町（岐阜県高山市）
- 飛騨の里（岐阜県高山市）
- 名古屋駅（愛知県名古屋市中村区）
- 特急「ひだ3号」
- 下呂駅（岐阜県下呂市）
- 高山駅（岐阜県高山市）
- 高山祭屋台会館（岐阜県高山市）
- 下呂温泉（岐阜県下呂市）
- 特急「あさひ101号」
- 新潟駅（新潟県新潟市中央区）
- 新潟港（新潟県新潟市中央区）
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三：
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄：
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明：
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一：
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝：
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長：
刑事部長。十津川警部の上司。
高山署
- 新井：
高山署の刑事課長。 - 細川：
48歳。高山署のベテラン平刑事。新宿西口で死体となって発見された。 - 佐藤：
高山署の刑事。
事件関係者
- 阿井今日子：
28歳。元モデル。四谷のマンションに在住。高山市のH民芸館で死体となって発見された。 - 堀田栄：
27歳。私立探偵。飛騨の里で死体となって発見された。 - 堀田幸子：
25歳。堀田栄の妻。ラブホテルで死体となって発見された。 - 塚越貢：
32歳。堀田栄と一緒に私立探偵事をしていた男。新潟港で海に転落して死亡した。 - 新倉卓一：
中央興産の社長。東京都公安委員会。阿井今日子のパトロン。田園調布に在住。 - 北川敏彦：
28歳。売れないテレビタレント。初台のマンションに在住。深大寺近くの土中から死体となって発見された。 - 間垣ユミ：
K工業東京本社に勤めるOL。四谷三丁目のマンションに在住。高山市内の雑木林で死体となって発見された。
その他の登場人物
- 相川みどり：
N大学に通う女子大生。 - 小田杏子：
N大学に通う女子大生。 - 長田良江：
上二之町にある長田旅館の娘。 - 小柳：
高山市内にある栄光タクシーの運転手。 - 坂巻：
渋谷道玄坂にあるクラブ「柴園」の店長。北川敏彦の知り合い。 - 田村しのぶ：
K工業東京本社に勤めるOL。 - 山田：
高山駅近くにあるレストラン「サブロー」の店主。 - 後藤：
下呂温泉組合の役員。 - 菅野：
中央興産の管理部長。
感想
十津川警部シリーズでは、1990年刊行の「飛騨高山に消えた女」、2013年刊行の「私が愛した高山本線」、2016年刊行の「高山本線の昼と夜」、2017年刊行の「高山本線の秘密」など、高山を舞台にした作品が何作も描かれており、これはひとえに、西村京太郎先生が、高山という町が好きだからだと思われる。
本作は、その高山が舞台の作品であった。序盤は、女子大生2人組による、高山の旅行記みたいなゆったりとしたペースで進む。高山の美しさがよく描かれている。
中盤以降は、サスペンスフルな展開になっていき、ミステリーのメインディッシュとなる、特急「ひだ」と特急「北アルプス」を使った列車トリックの解明に向けて十津川警部が動き出す流れである。
犯人については、早い段階でほぼ察しがついている。が、証拠もなく強固なアリバイがある。そのため、十津川警部と亀井刑事が、丁寧な捜査で一歩一歩犯人に迫っていくのが、本作の面白さである。
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