初版発行日 2007年2月20日
発行出版社 双葉社
スタイル 長編
コインロッカーの中に置かれた位牌に書かれた不気味な殺人予告!特急「きぬ」と寝台特急「カシオペア」で起こった連続殺人事件!日光、北海道、石垣島、会津若松、天童温泉……十津川警部は、連続予告殺人犯を追う!
あらすじ
浅草駅構内に設置されたコインロッカーから、俗名梅原誠と書かれた位牌と“特急スペーシアの車内で死す”という、殺人予告の入った骨壷が発見された。十津川警部と亀井は対策を協議し、予告日の特急列車を監視することにしたが…。
小説の目次
- コインロッカー
- 特急「きぬ135号」
- 二人目の位牌
- ホレーショの哲学
- 台東区役所
- ファンレター
- 自供調書
冒頭の文
東武浅草駅の、構内にあるコインロッカーの管理をしているのは、T商事である。
小説に登場した舞台
- 東武浅草駅(東京都台東区)
- 特急「けごん」
- 特急「きぬ」
- 東武日光駅(栃木県日光市)
- 鬼怒川温泉駅(栃木県日光市)
- 寝台特急「カシオペア」
- 函館駅(北海道函館市)
- 東室蘭駅(北海道室蘭市)
- 華厳の滝(栃木県日光市)
- 日光東照宮(栃木県日光市)
- 台東区役所(東京都台東区)
- 石垣島(沖縄県石垣市)
- 川平湾(沖縄県石垣市)
- 竹富島(沖縄県・竹富町)
- 会津若松駅(福島県会津若松市)
- 東山温泉(福島県会津若松市)
- 鶴ヶ城(福島県会津若松市)
- 山形駅(山形県山形市)
- 上山温泉(山形県上山市)
- 天童温泉(山形県天童市)
- 天童駅(山形県天童市)
- 東根駅(山形県東根市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 青木:
浅草警察署生活安全課の刑事。 - 柴田:
浅草警察署生活安全課の係長。 - 滝口:
35歳。栃木県警捜査一課の警部。 - 矢部:
北海道警捜査一課の警部。
事件関係者
- 梅原誠:
31歳。ミュージシャン。ウィリー誠の名前で活動していた。建築デザイナーでもある。鬼怒川行きの特急「きぬ」の個室で殺された。 - 小石川樹里:
歌手。梅原誠の恋人。 - 坂西洋一郎:
42歳。サイコセラピスト。本名は山田一郎。 - 東田昭:
30歳。台東区役所の戸籍係。 - 井口加代:
女優。本名は花井久美子。
その他の登場人物
- 木村敏夫:
東武浅草駅の駅員。 - 田島:
東武浅草駅の責任者。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事。 - 梅原有紀:
梅原誠の妹。 - 戸山愛:
ジャズ歌手。梅原誠の元恋人。 - 井原:
寝台特急「カシオペア」の専務車掌。 - 渡部:
JR北海道の専務車掌。 - 山田進:
坂西洋一郎の弟。マネージャー。 - 牧村利男:
札幌テレビのプロデューサー。 - 青山豊:
台東区役所の職員。東田昭の同期。 - 三浦和人:
井口加代のマネージャー。 - 原田絵里:
井口加代のマネージャー。 - 篠田圭介:
カメラマン。 - 大矢伸太郎:
テレビ番組の担当ディレクター。
印象に残った名言、名表現
(1)車窓から見える隅田川の桜並木。
特急「けごん1号」は、浅草駅を出るとすぐ、隅田川に架かる橋を渡る。土手に広がる桜並木の桜は、今年は、開花が早いのか、もう五分咲きになっている。
(2)華厳の滝で、藤村操に思いを馳せる、十津川警部。
今から、百年以上も前の一九〇三年五月二十二日、その時、十八歳の藤村操は、死を決意して、じっと、この滝を、見つめていたに違いない。
(3)自殺者と犯罪者は紙一重。
多感で繊細で、壊れやすい心の持ち主は、内に向かえば、自殺となり、外に向かえば、犯罪に走る。
感想
殺人予告と実際の犯行。すでに2件の殺人が起こっているのに、まったく犯人像が絞り込めない。今回は、かなりやっかいな事件だったと思う。
殺人事件の2大動機と呼ばれる「金と怨恨」ならば、わかりやすかったと思う。しかし、今回は、いずれも当てはまらない。
今回の事件を解くカギは、本作に何度も登場した一文である。
多感で繊細で、壊れやすい心の持ち主は、内に向かえば、自殺となり、外に向かえば、犯罪に走る。
この「内に向かえば、自殺となり、外に向かえば、犯罪に走る」という言葉は、心理学などで、よく登場する言葉である。つまり、自殺者と犯罪者は表裏一体なのだと。
犯人は、幼少の頃から、被害者意識が強く、社会性も乏しかった。社会性が乏しいがゆえに、自分の被害意識を自分の中で溜め込んだ。自己肯定感が低いくせに、自己愛は強い。だから、被害の原因を外にあるはずだと考える。それが犯罪につながる。
本作の犯人は、現代社会の歪みが生み出した、モンスターなのだろう。
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