初版発行日 2012年3月10日
発行出版社 集英社
スタイル 長編
消費者金融の元社長夫妻殺害!逮捕した犯人はSL乗車中だった!?鉄壁のアリバイに挑む十津川警部。秩父鉄道パレオエクスプレスを巡る旅情ミステリー!
あらすじ
消費者金融の元社長で資産家の秋山夫妻が殺害された。十津川警部は、秋山に恨みを抱いていたという漫画家の戸川を逮捕する。だが、事件当日に人気の秩父SLの車内で戸川を目撃したという旅行作家のエッセイを発見。戸川の裁判まで20日余り。否認を続ける戸川の犯行を裏付けるため、十津川警部たちは極秘に再捜査を始める。秋山の金庫に残された個人情報が手掛かりになると思われたが……。
小説の目次
- ある雑誌記事
- 有力弁護士
- 巻き戻す
- 殺人の青写真
- 九人のリスト
- 逆転への感触
- 閉廷
冒頭の文
五月十日。ゴールデンウィーク明けに、一つの事件が解決して、警視庁捜査一課の十津川は、珍しく非番になり、一日中自宅にいた。
小説に登場した舞台
- 秩父鉄道
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 高田:
検事。戸川雅夫の裁判を担当している。 - 木村:
警視庁捜査四課の警部。
事件関係者
- 小島俊介:
旅行作家。 - 戸川雅夫:
無名の漫画家。秋山博之夫妻殺害容疑で起訴された。 - 秋山博之:
65歳。杉並区永福に住む資産家。天地出版社のオーナー。消費者金融会社の元社長。自宅で刺殺される。 - 秋山裕子:
50歳。秋山博之の妻。自宅で刺殺される。 - 梅木浩三:
梅木法律事務所の弁護士。戸川雅夫の裁判を担当する。 - 井坂純一郎:
井坂興信所の所長。元警察。 - 柴田:
新近藤食品の重役。荒川署の元副署長。 - 相川啓次郎:
60歳。政治家。法務大臣。 - 木田清志:
55歳。政治家。 - 河野博史:
俳優。 - 武田真理:
女性歌手。 - 二宮恵子:
銀座のクラブ「けいこ」のママ。 - 坂本裕子:
新宿のクラブ「裕子」のママ。 - 篠田理恵:
クラブのママ。 - 折原誠一郎:
K組の組長。 - 浜口隆太郎:
弁護士。75歳。 - 佐伯博司:
新近藤食品の重役。元K組の幹部。
その他の登場人物
- 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 山崎:
週刊ジャパンの編集長。 - 村木:
秩父鉄道の車掌。 - 溝口:
弁護士。40歳。かつて梅木法律事務所で働いていた。 - 遠山舞花:
20歳。無名の漫画家。戸川雅夫のシェアハウス仲間。 - 正木恵美:
32歳。新橋で小さなバーを営んでいる。 - 田原悟:
42歳。最近まで井坂興信所で働いていた。 - 梅木可奈:
梅木浩三の娘。弁護士。 - 田島:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 小野寺正彦:
弁護士。梅木浩三の大学時代の同級生。 - 井上:
梅木法律事務所のベテラン弁護士。 - 馬場:
日本弁護士会の代表。 - 竹下:
梅木法律事務所の弁護士。
印象に残った名言、名表現
(1)どんなに困難な状況でも、必ず突破口がある。それを見つけ出す十津川警部の信念。
「九人の利益は、同一ではなく、その精神構造もまた、同一では、ありません。ですから、その点を突いていけば、彼らの団結は、崩れていき、必ず、落語者が出てくると思っています。
(2)十津川警部の戦略。
(全員に、まんべんなく、接触し、脅かしても、効果は、上がらないだろう)と、十津川は思っている。そこで九人の弱い部分を、集中的に攻撃することに決めた。
総評
本作は、すでに起訴された事件、つまり、警視庁捜査一課の手を離れた事件について、再捜査をしていく、というストーリーである。
本作内で新たな殺人事件が起こることはない。ド派手なアクションや、意外性のある驚きも少ない。
ただ、登場人物が多く、人間関係もかなり複雑である。関連する事件も複数ある。その一つ一つを細かく検証し、つなぎ合わせていく、ロジカルな捜査が面白い。
十津川警部たちが、一人一人に話を聞き、情報を引き出していく。ときには策略を駆使しして、容疑者を少しづつ追い詰めていく。じわりじわりと、容疑者の外堀が埋められていく。最後には、容疑者が四面楚歌の状態になっている。
この論理性も、十津川警部シリーズの魅力なんだと、再認識させてくれる作品である。
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