初版発行日 2003年1月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
同名同年齢の少女連続誘拐発生!奇怪な事件の真相を追って、小樽、東京、京都、下田を飛ぶ十津川警部の名推理。
あらすじ
三月三日、東京で七歳の少女鏑木美加が誘拐された。身代金一億五百万円を支払って解放されたが、犯人は逃走。捜査に行き詰まる十津川警部のもとへ、同じ日小樽でも美加という七歳の少女が誘拐されていたと報告が入る。身代金額まで同じという。やがて、第三、第四の誘拐事件が……。少女連続誘拐の真の狙いは何か!
小説の目次
- 東京ー小樽
- 第三の誘拐
- 犯人に迫る
- DNA
- 七年前
- 追跡始まる
- 崩壊の全て
冒頭の文
その事件が起きた時、最初は、平凡な(おかしないい方だが)誘拐事件に見えた。
小説に登場した舞台
- 井の頭公園(東京都武蔵野市)
- 新千歳空港(北海道札幌市)
- 小樽運河(北海道小樽市)
- 五条大橋(京都府京都市下京区)
- 八尾空港(大阪府八尾市)
- 円山公園(京都府京都市東山区)
- 下田港(静岡県下田市)
- 遊覧船サスケハナ号(静岡県下田市)
- 後生掛温泉(秋田県鹿角市)
- 奥多摩(東京都・奥多摩町)
- 府中刑務所(東京都府中市)
- 成田空港(千葉県成田市)
- 熱海駅(静岡県熱海市)
- 伊東(静岡県伊東市)
- 伊豆高原駅(静岡県伊東市)
- 羽田空港(東京都大田区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川警部:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 三浦:
北海道警の警部。 - 羽根田:
京都府警の警部。 - 柴田:
八坂神社近くの発出所の巡査部長。 - 井上:
練馬署の刑事。 - 沼田:
静岡県警の警部。 - 寺内:
静岡県警の刑事。 - 森:
府中刑務所の副所長。 - 中村:
警視庁捜査四課の警部。 - 橋本豊:
私立探偵。警視庁捜査一課の元刑事。十津川警部の元部下。
事件関係者
- 鏑木正彦:
39歳。外食チェーン「海産王国」のオーナー。成城に住む。 - 鏑木京子:
31歳。鏑木正彦の妻。 - 鏑木美加:
7歳。鏑木夫妻の娘。誘拐される。 - 本堂正利:
小樽市内にあるガラス細工の店を営む。 - 本堂美津子:
本堂正利の妻。 - 本堂美加:
7歳。本堂正利の娘。誘拐される。 - 佐久間晋平:
60歳。京都の五条大橋近くにある日本料亭「さくま」の主人。 - 佐久間徳子:
58歳。佐久間晋平の妻。 - 佐久間清一:
29歳。佐久間晋平の息子。日本料亭「さくま」の板前。 - 佐久間ゆみ:
27歳。佐久間清一の妻。 - 佐久間みか:
7歳。佐久間清一・ゆみ夫妻の娘。誘拐される。 - 足立英治:
38歳。私立探偵。詐欺と傷害の前科あり。 - 足立啓子:
足立英治の妻。 - 太刀川:
32歳。伊豆・下田にあるホテルGの社長。 - 太刀川みどり:
太刀川の妻。 - 太刀川美香:
7歳。太刀川の娘。養女。誘拐される。 - 和田信也:
60歳。京都の名家の出身で資産家。日本画の収集家。 - 外山俊作:
61歳。元私立探偵。世田谷区世田谷に在住。 - 川端ゆう子:
ホステス。太刀川美香の実母。2年前に死亡している。 - 浜中明:
37歳。7年前に殺人の罪で府中刑務所に服役中。太刀川美香の実父。 - 前島:
練馬に住む弁護士。末期の肺がんを患う。浜中明に面会をしていた。 - 前島知彦:
35歳。前島弁護士の息子。弁護士。アメリカ・ニューヨークに在住。 - 前島恵子:
32歳。前島知彦の妻。アメリカ・ニューヨークに在住。
その他の登場人物
- 牧野:
58歳。京都・三条通にある「牧野」古美術店の店主。 - 西館:
東山にある美術館の館長。 - 金田:
足立英治の死亡診断書を書いた医師。 - 小松慎一郎:
練馬区石神井に住む私立探偵。足立英治の友人。 - 北村亜紀子:
保育士。小松慎一郎の恋人。 - 小林:
下田湾近くで釣具店を営む。犯人が使ったモーターボートの持ち主。 - 富田:
奥多摩にある孤児院「愛生園」の園長。 - はるみ:
豊島区のマンションに住む女。池袋のクラブのホステス。 - 三木丸夫:
大屋駅近くにある「丸チャンラーメン」の店主。 - 三木君子:
三木丸夫の妻。 - 佐伯:
新宿にある法律事務所の社長弁護士。前島の知人。 - 沼田:
伊東の海岸通り沿いにある病院の医師。 - 矢野:
衛生国際通信の会社の担当者。
印象に残った名言、名表現
(1)警察の縄張り意識。
もともと、各都道府県の警察の間には、縄張り意識があった。これは、対抗意識の他に、他県の所管の事件には、干渉しないようにするという意識もあったと思われる。
(2)緊張の一幕。
残りの刑事たちは、一斉に、ホテルを飛び出すと、港に向かった。
覆面パトカーが、走る。
他のパトカーも、応援に駆けつけた。
感想
事件東京、小樽、京都、下田で起きた4つの誘拐事件を追う、ミステリー作品である。が、普通の誘拐事件ではなく、奇妙な誘拐事件だった。
これまで、数多くの誘拐事件をあつかってきた十津川警部シリーズの中でも、一二を争うくらい、ユニークな誘拐だったと思う。
ポイントは次の4つ。
- 共犯と思われる男女4人が、小樽、東京、京都、下田で誘拐を起こしたこと。
- 身代金が、1億五百万円という半端な額であること。
- 人質が共に、七歳であること。
- 人質の名前が、共に、「ミカ」であること。
明らかに、何らかの意図をもって、誘拐をしているが、その意図がわからないのだ。
また、本作では、前半で、容疑者がほぼ固まる。だが、彼らの行方がわからないし、誘拐の意図がわからない。
そのため、誘拐された少女の安全確保と保護という大前提を守りながら、犯人たちの意図をみつけだし、犯人たちの行方をつかむ、という捜査が行われていく。
十津川警部シリーズらしい、ジリジリと犯人に迫っていく緊迫感も味わえるし、誘拐事件らしい、スピード感溢れる作品にもなっている、と思う。
登場人物も多く、ボリュームも多いが、読みやすいので、あっという間に、読み終わるだろう。
ちなみに、十津川警部シリーズでは、これまでにいくつかの誘拐事件が描かれてきた。
2000年刊行の「能登半島殺人事件」と「寝台特急カシオペアを追え」、2001年刊行の「しまなみ街道追跡ルート」、2008年刊行の「アキバ戦争」、2013年刊行の「長野新幹線の奇妙な犯罪」、2014年刊行の「南風の中で眠れ」などがある。
これらの作品もおすすめだ。
コメント