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「飯田線・愛と殺人と」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

飯田線・愛と殺人と小説

初版発行日 2019年10月30日
発行出版社 光文社
スタイル 長編

私の評価 1.5

POINT】
飯田線の秘境駅・小和田で恋人と逢瀬を重ねた女性が殺され、彼女への殺害予告が見つかった!
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あらすじ

警視庁捜査一課の北条早苗刑事は日下刑事と、友人で旅行代理店に勤める野田花世殺害事件を追う。花世は飯田線旅行の企画で知り合ったアイヌの青年・金子太郎と交際していた。十津川は飯田線三河一宮駅に近い出雲神話の神を祀る砥鹿神社の絵馬、さらに花世のマンションからK.Kを名乗る人物の暗号による脅迫状を見つける。事件と出雲神話の関連は?十津川は、金子の復讐への暴走をとめ、異常な犯人を逮捕できるか!?

小説の目次

  1. 友人の死
  2. プランの中の秘密
  3. 恋人たちの駅
  4. 三河一宮駅
  5. 片桐という男
  6. 記念写真への誘い
  7. 終局への戦い

冒頭の文

警視庁捜査一課の北条早苗刑事は今年二十八才になる。まだ独身である。

小説に登場した舞台

  • 調布駅(東京都調布市)
  • 東京駅(東京都千代田区)
  • 豊橋駅(愛知県豊橋市)
  • 飯田駅(長野県飯田市)
  • 辰野駅(長野県・辰野町)
  • 旭川空港(北海道・東神楽町)
  • 新城駅(愛知県新城市)
  • 浦川駅(静岡県浜松市天竜区)
  • 中部天竜駅(静岡県浜松市天竜区)
  • 大嵐駅(静岡県浜松市天竜区)
  • 小和田駅(静岡県浜松市天竜区)
  • 中井侍駅(長野県・天龍村)
  • 伊那小沢駅(長野県・天龍村)
  • 平岡駅(長野県・天龍村)
  • 為栗駅(長野県・天龍村)
  • 田本駅(長野県・泰阜村)
  • 金野駅(長野県飯田市)
  • 千代駅(長野県飯田市)
  • 天竜峡駅(長野県飯田市)
  • 三河一宮駅(愛知県豊川市)
  • 砥鹿神社(愛知県豊川市)
  • 羽田空港(東京都大田区)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 野田花世:
    北条早苗刑事の大学時代の同級生。東京八重洲にある旅行会社に勤務。調布市内のマンションに在住。自宅で死体となって発見された。
  • 大河内リエ:
    北条早苗刑事の大学時代の同級生。子持ちの主婦。
  • 川村カ子ト:
    アイヌの測量士。
  • 金子太郎:
    アイヌの青年。
  • 榊原:
    60才。国立大学の教授。
  • 片桐直人:
    世田谷区松原に在住。
  • 君塚広太郎:
    60才。日本神話研究会の会長。
  • 坂口健太郎:
    50才。北烏山にある「坂口金属工業」の社長。片桐直人の叔父。
  • 高木:
    片桐直人が卒業した高校の当時の担任。
  • 三浦綾乃:
    30才。都内にある大手銀行のOL。大和雅人の代理人を名乗る女。
  • 原田:
    50才。愛知県警の警部。
  • 吉田:
    愛知県警の刑事。
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感想

一言でいえば、残念な作品だった。

本作は、歴史が事件に深く関係するという、2010年代以降の十津川警部シリーズの流れをくんだ作品となっている。ここについては、何も言うことはない。

残念だったのは、旅情、緊張感、リアリティの欠如の部分だった。

まず、十津川警部が飯田駅を訪れて、実際に乗りながら、各駅を延々と紹介するくだりがあるのだが、ここに旅情がほとんど感じられないのだ。

かつての十津川警部シリーズは、十津川警部と亀井刑事が捜査で訪れる各地の旅に”旅情”を交えて表現していた。事件の緊張感と旅情が絶妙なバランスだった。

が、最近は、旅情がなくなり単なる場所としての土地、情報としての土地になってしまっている。今回も飯田線の駅を巡っているのだが、難しい読み方の駅名をめぐり、”情報としての駅や場所”を紹介しているが、そこに旅情は感じられない。

インターネットが発達している現代。珍しい駅名ななどの単なる情報なら、ほとんど価値がなくなってしまった。ここにプラスアルファするものがないと、誰も感動しないだろう。

残念ながら、本作では捜査の緊張感もなかった。刑事が社会科見学にでも出かけているような、まったく緊張感のない旅になっている。

また、リアリティも欠けていた。

作中、恋人が「思い出ノート」を綴ってそれを連絡手段にしているくだりがあった。この「思い出ノート」は十津川警部シリーズで、昔からよく登場した定番アイテムなのだが、本作が刊行されたのは、2019年である。

LINEやSNSで連絡をとるのが当たり前の現代に、ノートで連絡を取り合う若者は皆無だろう。例えば、これが30年前、40年前、50年前の回想シーンならわかるが、現代ではありえない。10年前でも20年前でも、そんな若者はいないだろう。

これは作者が悪いのではないと思う。年齢があるから、現代の主流にも疎くなるのは当たり前である。むしろ、なぜ、編集段階でこの指摘ができないのか?甚だ疑問である。

とにかく残念な作品だったの他に、感想がない。

最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。

飯田線は不思議な路線である。まず、地質調査に、北海道の荒野の調査に当っていたベテランのアイヌを招聘して調査を頼んだり、天竜川の対岸に橋をかけようとしたが、それが難しくて、途中からこちら側に戻る鉄橋になったり、最近、鉄道マニアが注目する辺境の駅も多く、辺境の駅だけを巡る特別列車も、出ている。とにかく、一度は乗ってみたい楽しい路線である。

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