初版発行日 2011年6月17日
発行出版社 双葉社
スタイル 長編
日本一長い駅名の小さな駅の出来事に十津川警部が挑む!!
あらすじ
山陰の小さな私鉄線ホームで、名誉駅長で元俳優の田宮始が、白昼、射殺された。被害者の制服から発見されたノンフィクションライター五十嵐昭の名刺には、一畑電車への強い悪意を示す言葉があった。だが、その五十嵐は4日前、すでに東京で殺害されていた! 十津川班が島根県警の協力を得て2つの殺人捜査を進めると、やがて、意外な真相が浮上した……。
小説の目次
- 日本一長い名前の駅
- 犯人像
- 松平治郷公
- 友愛クラブ
- 過去への追跡
- 厚化粧の謎
- 祭りの終わり
冒頭の文
一畑電車は、山陰地方で唯一の私鉄である。
小説に登場した舞台
- ルイス・C・ティファニー庭園美術館前駅(現・松江イングリッシュガーデン前駅)(島根県松江市)
- 出雲市駅(島根県出雲市)
- 出雲縁結び空港(島根県出雲市)
- 出雲大社前駅(島根県出雲市)
- 一畑口駅(島根県出雲市)
- 松江しんじ湖温泉駅(島根県松江市)
- 松江市役所(島根県松江市)
- 出雲大社(島根県出雲市)
- 八重垣神社(島根県松江市)
- 館山駅(千葉県館山市)
- 城山公園(千葉県館山市)
- 祇園(京都府京都市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 田宮始:
52歳。元俳優。ルイス・C・ティファニー庭園美術館前駅の名誉駅長に採用される。同駅で何者かに射殺される。 - 田宮あずさ:
25歳。田宮始の娘。都内でOLをしている。 - 五十嵐昭:
30歳。ノンフィクションライター。中野の自宅マンションで殺される。 - 小池智朗:
65歳。友愛クラブの元理事長。 - 山崎由紀:
作家。五十嵐昭の恋人。 - 木之元勝:
68歳。島根県のマスコミを牛耳っている。 - 立木大輔:
立木運送の社長の息子。
その他の登場人物
- 横山:
島根県警捜査一課の警部。 - 白石:
島根県警の本部長。 - 有島:
日本NFクラブの事務局長。 - 若杉敬一郎:
ライター。五十嵐昭と親しくしていた。 - 塩田達郎:
50歳。友愛クラブの理事長。 - 三枝:
48歳。一畑電車の広報部長。 - 渡辺徳一:
60歳。かつて北千住の富士見アパートの大家をしていた。 - 園田:
館山市議会議員。小池智朗の親戚。 - 安立:
一畑電車の社長。 - 青木:
京都府警の警部。 - 水島潤一郎:
京都祇園のクラブ「シャングリラ」のオーナー。 - 荒木:
京都祇園のクラブ「シャングリラ」のマネージャー。 - 田口:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 大内秀雄:
45歳。長い間、木之元勝の秘書をしていた。 - 桜井修:
65歳。浅草でお飲み焼き屋を営む。かつて木之元勝の芸能プロダクションに所属していた。 - 三宅宗助:
桜井修の親戚。出雲市内で出雲そば店を営む。
印象に残った名言、名表現
(1)一畑電車の魅力。
「出雲大社、松江、宍道湖を旅する人には、最適な私鉄ローカル線が一畑電車である。宍道湖の北岸を走り、山陰の旅情に浸ることができる」
(2)出雲名物、出雲そば。
普通のそばよりも、やや、色の黒い、硬めのそばである。三段重ねになっていて、それに上から、汁をかけて食べていく。
(3)作家の無名時代。
多くの作家には、無名時代というか、作家になるまでの、雌伏の時代がある。それが短い人もいれば、長い人もいるが、その間は、作家になるための努力、原稿を書いて新人賞に、応募するとか、あるいは、出版社に持ち込んで、売り込むとか、そういうことをするものだ。
感想
正直、個人的には残念な作品だったと思う。
話がいろいろな方向に、広がりすぎて、収まりがつかない。というのが率直な感想だ。
出雲の一畑電車、松江の松平治郷公、会津若松の白虎隊の演舞、館山の老人養護施設、京都祇園のクラブの出来事、資産家が政治に打ってでる話、芸能プロダクションの話など、いろいろなトピックがあり、それぞれ、掘り下げられる。
もちろん、捜査の過程でひとつひとつ潰していく必要があるのはわかる。しかし、一つ一つの掘り下げに相応のボリュームがあるのに、事件の真相とは関係のない話も混じっているのだ。
さらに、ひとつひとつのエピソードに、関連する人物が次々と登場してくる。だから、どのエピソードが重要で、どの人物が重要なのか、そうでないのか、よくわからなくなってくるのだ。
書いているうちに、話の対象が広がりすぎて、収拾がつかなくなったのではないか?と考えざるを得ない。
そして、事件序盤における、重要な謎が最後まで解明されたなかったのも、甚だ残念である。
その謎とは、
なぜ、田宮始の遺留品にあった、五十嵐明の名刺に「くたばれ一畑電車」と、書いてあったのか??
答えは読者に委ねる、という意図なのかもしれないが。
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