初版発行日 2006年1月1日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
十津川に恋人!?一通の恋文が十津川を、湯けむりの町に誘う。殺された美女の愛憎を巡って、日本一の温泉街、草津へ!
あらすじ
十津川あてに、井岡さつきと名乗る女から手紙が届いた。二人で過ごした草津温泉の思い出が綴られていたのだが、十津川は身に覚えがない。さらに二通目の手紙には、さつきが勤めているクラブのママの軽井沢の別荘で開かれた秘密パーティでホステスが失踪した事件が書かれ、彼女自身も身の危険を感じて助けを求めてきたのだ……!?
小説の目次
- ラブレター
- 井岡さつき
- 草津の風
- 井上美奈という女
- 小さな事件
- 実力行使
- 最後の賭け
冒頭の文
十津川省三様
私のことを、覚えていらっしゃいますか?
私は、井岡さつきです。
小説に登場した舞台
- 草津館(群馬県・草津町)
- 草津温泉(群馬県・草津町)
- 長野原草津口駅(群馬県・草津町)
- ベルツ記念館(群馬県・草津町)
- ホテル一井(群馬県・草津町)
- 茶房ぐーてらいぜ(群馬県・草津町)
- 草津ガラス蔵(群馬県・草津町)
- 草津温泉 大阪屋(群馬県・草津町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 井岡さつき:
24歳。六本木のクラブのホステス。京都出身。十津川警部と知り合って草津で1週間共にしたこと、助けてほしいと手紙を送ってくる。自宅マンションで毒殺される。 - 北川悦子:
井岡さつきが働いていた六本木のクラブのママ。 - 井上美奈:
22歳。N女子大学を2年で中退。美樹という名前で六本木のクラブに勤めていた。現在行方不明。 - 渡辺敬一郎:
30歳。無職。十津川警部の名前を語っていた男。井上美奈に惚れていた。 - 東山勲:
50歳。タレント。北川悦子が営むクラブの常連客。 - 若杉実:
国会議員。北川悦子が営むクラブの常連客。 - 小暮裕子:
35歳。歌手。若杉実の恋人。 - 八木沼勇:
国土交通省の政務次官。北川悦子が営むクラブの常連客。 - 弥生:
北川悦子が営むクラブのホステス。
その他の登場人物
- 安原:
草津交番の巡査長。 - 杉浦:
北川悦子のお店のマネージャー。
印象に残った名言、名表現
(1)全国津々浦々を駆け回る十津川警部だからこそ、わかる日本の良さ。
地方に行くたびに、十津川が感じるのは、どこへ行っても道路がよくなっていることである。今回も、道路はよく整備されていて、快適なドライブだった。
(2)草津は温泉だけじゃない。
十津川は、草津温泉ということ、温泉ばかりという感じで、見ていたのだが、実際に、現地に来てみると、この辺りは、温泉のほかに、雪山というリゾート地域を、持っていることが、わかった。
感想
井岡さつきという女性から、十津川警部と草津で過ごした1週間の情事を、赤裸々に語った手紙が届く、ということからスタートする面白い展開。実は、井岡さつきが過ごしたのは、十津川警部ではなく、十津川の名前を語った別の男だった。ここから物語が展開する。
この作品で、印象に残ったのは、やはり草津温泉の描写である。
湯畑から漂う硫黄の匂い、情緒あふれる湯もみと草津節、温泉街にある粋な居酒屋、肉屋の美味しいハムカツ、名物の西の河原など、艶かしくも旅情たっぷりに描かれる。さらに、人気の喫茶店「ぐーてらいぜ」、老舗旅館の草津館やホテル一井も登場するのだ。
本作は「草津温泉逃避行」というタイトルである。
この草津温泉で、殺人事件は起こらない。だが、本作に登場する登場人物たちが、安息と憩いを求める場所として、ここに何度も訪れるのである。
私も、都会の喧騒から逃れて、この草津温泉で、骨休みしたい。そう思わせてくれる作品だ。
コメント