初版発行日 2004年1月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
北京-上海 特快列車「T109」で、何かが起きるー!?東京と上海を結ぶ謎の殺人ライン!
あらすじ
東京で起きた、下着姿での連続女子大生射殺事件。彼女たちには共通点がなく、捜査本部は変質者の犯行と推定したが、十津川はその判断に引っかかるものを感じる。一方、上海の黄浦江で日本人の女性ジャズ歌手の扼殺体が発見される。中国警察の協力要請を受け、二つの事件のわずかな類似点を追い、十津川は上海へ飛ぶ。
小説の目次
- 血の幻想
- 一九三一
- 準備
- 上海
- 出発
- フジヤマ・コネクション
- 錯綜
- 特快「T一〇九」列車
冒頭の文
事件は、渋谷区代官山で起きた。代官山は、高級住宅地として有名だが、同時にしゃれた、ショッピング地区でもある。
小説に登場した舞台
- 横浜中華街(神奈川県横浜市中区)
- 伊豆高原(静岡県伊東市)
- 黄浦公園(中国・上海市)
- 上海浦東国際空港(中国・上海市)
- 済南駅(中国・山東省済南市)
- 南京駅(中国・江蘇省南京市)
- 上海駅(中国・上海市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
上海
- 李:
40歳。上海警察の刑事。 - 張:
上海警察の刑事。 - 陳:
上海警察の刑事。 - 揚:
上海警察の刑事。 - 明美麗:
上海警察の刑事。 - 劉:
上海警察の刑事。 - 王:
上海警察の刑事主任。 - 周桃花:
李刑事の妻。日本への留学経験がある。 - 何史明:
中国の経済閣僚。 - 陳明徳:
上海大学の学生。 - 木村:
上海にある日本領事館の書記官。 - 坂下由美:
32歳。上海在住のジャズ歌手。かつて新宿にある財団法人新世紀で働いていた。上海の黄浦公園の外灘で死体となって発見された。 - 佐伯亮:
24歳。上海大学に留学していた学生。坂下由美殺しの容疑で上海警察に射殺される。 - 関根隆治:
25歳。上海大学に通う留学生。フジヤマ・コネクションの会員。
事件関係者
- 早川ゆき:
22歳。K大学四年生。神戸にある早川シューズ社長の一人娘。代官山の自宅マンションで射殺される。 - 笠原弘子:
22歳。S大学の4年生。代議士の娘。南青山の自宅マンションで射殺される。 - 五十嵐進:
45歳。芸能プロダクションの社長。シンガポールで不審死する。 - 朱麗華:
24歳。早川ゆきが住んでいた部屋の前の住人。J大学の聴講生として上海から来日していた中国人女性。 - 吉田健太郎:
財団法人新世紀の会長。元総理大臣。 - 吉田正俊:
財団法人新世紀の会長秘書。吉田健太郎の息子。
その他の登場人物
- 田口:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 早川文子:
早川ゆきの母親。神戸在住。 - 井口さとる:
早川ゆきの恋人。N大学四年生。 - 沢木みどり:
女優。 - 崎田敬:
カメラマン。 - 柳下ゆかり:
N大学の3年生。早稲田のマンションに在住。自宅マンションに樋口隆に襲われたが、助かった。 - 井上美雪:
R大学4年生。中目黒の自宅マンションで樋口隆に襲われたが、非常通報装置を押して助かった。 - 樋口隆:
35歳。無職。柳下ゆかりと井上美雪の自宅マンションに侵入した罪で逮捕された。 - 高杉憲二:
40歳。三鷹市在住。J大学の聴講生。朱麗華と親しくしていた。 - 陳文明:
代官山にある中国料理点「光華亭」のオーナー。朱麗華と親しくしていた。 - 小宮誠一郎:
貿易会社「トレーディングカンパニー小宮」の社長。 - 小宮茂:
小宮誠一郎の甥。貿易会社「トレーディングカンパニー小宮」の副社長。 - 坂下麻子:
坂下由美の母親。 - 小堺祐二:
33歳。坂下由美と親しくしていた男。2年前まで財団法人新世紀で働いていた。7月に自殺している。 - 小堺綾子:
小堺祐二の姉。西船橋駅近くのマンションに夫と住んでいる。
印象に残った名言、名表現
■2000年代初頭の黄浦公園界隈。
レトロ調の建物が並び、朝は、人々が、そこでダンスや太極拳に興じ、昼は、観光客が、集まり、夜は、ライトアップされて、美しく、若者たちの、デートの場所になっていた。
感想
本作は、女子大生が連続で殺害されるという、ショッキングな事件が、発端となった。
だが、この2件の殺人事件は、本来殺すべきターゲットと間違えて殺されたことがわかり、その犯人およびターゲットが上海に結びついていく。事件の根は上海にあると踏んだ十津川と亀井が、上海へ向かう。
前半は東京での捜査。後半が上海編である。
個人的には、後半の上海編が、今ひとつだったと感じている。中国ならではの捜査の難しさが、あまり感じられないのである。もちろん、中国語を話せない十津川と亀井に、通訳がついており、現地の警察も日本語が話せるという設定である。
確かに、この設定ならば、言葉としては問題ない。だが、日本と中国では、文化も習慣も違う。考え方も違う。そのため、日本のような捜査ができないはずである。
外国ならではの難しさがあるはずである。
しかし、本作では、外国ならではの難しさや、日本人との感覚の違いといった部分がほとんど描かれていなかった。
これなら、舞台を上海にする必要がなかったのではないだろうか。
やはり、西村京太郎先生の作品は、日本を舞台としたほうがしっくりくる。そう感じた本作であった。
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