初版発行日 2007年2月15日
発行出版社 文藝春秋
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
十津川警部と復讐鬼、息詰まる対決!現代医学の闇を衝いた傑作。
十津川警部と復讐鬼、息詰まる対決!現代医学の闇を衝いた傑作。
あらすじ
早池峰山、カッパ淵、曲り家……。岩手県遠野市の里山を散策する悠々自適の退職者に見えた被害者の足どりは、一体何を意味するのか。奥軽井沢にあるM研究所のHPの掲示板に残された批判のメッセージとは。次々と起きる殺人を被害者の娘は食い止めることができるのか。
なぜ、佐伯勇は、遠野でカッパ淵の泥をすくったり、早池峰山の高山植物を採ったりしたのか??
小説の目次
- 早池峰山
- カッパ淵
- 理想を求めて
- ホームページ
- 一人の容疑者
- 母の墓標
- 父の遺書
冒頭の文
星野製薬が、心臓病の特効薬として開発・製造し、販売したFRBが、その副作用のために、一ヶ月の間に五人の死者を出した。それが問題になり、責任を取る形で、研究室長の佐伯勇が辞職した。
小説に登場した舞台
- 花巻温泉(岩手県花巻市)
- 遠野市街(岩手県遠野市)
- 早池峰山(岩手県花巻市)
- 遠野駅(岩手県遠野市)
- 早池峰神社(岩手県花巻市)
- 道の駅 遠野風の丘(岩手県遠野市)
- カッパ淵(岩手県遠野市)
- 奥軽井沢(群馬県・嬬恋村)
- 専修院(東京都豊島区)
- 晴海埠頭(東京都中央区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 佐伯勇:
59歳。星野製薬の元研究室長。2年前、心臓病の新薬の副作用問題の責任を取り、辞任した。新宿の自宅マンションの地下駐車場で殺されていた。 - 木下可奈子:
佐伯勇の娘。結婚して大阪天王寺に住む。 - 塚原浩一:
現在の製薬会社の新薬開発方針に疑問を持ち、独自で新薬の研究をしている。奥軽井沢に在住。佐伯勇の友人。 - 木之内幸三:
佐伯勇の星野製薬時代の運転手。 - 高木:
江東区白河にある漢方K製薬の社長。
その他の登場人物
- 金田:
テレビ局のプロデューサー。佐伯勇と同じマンションに住む。 - 園田:
星野製薬の人事部長。 - 坂東:
星野製薬の重役。 - 関口:
遠野警察署の警部。 - 広田健一:
50歳。遠野市内にある印刷会社の社長。早池峰山のボランティア監視員。 - 新田慎太郎:
N大学の教授。植物学の権威。 - 小池雅信:
52歳。S薬科大学の教授。 - 塚原久美子:
塚原浩一の妻。 - 浅井健二:
星野製薬の広報部長。 - 渡辺:
星野製薬の運転手。 - 高木聡子:
50歳。高木の妻。 - 高木美代子:
28歳。高木の娘。 - 高林:
長野県警の警部。
印象に残った名言、名表現
■遠野の曲り家。
遠野地方では、昔、家の中で、馬を飼っていた。その名残が、有名な曲り家である。人間が住む家と、馬を飼う部分がくっついて、それが、九十度曲げて作られていた。それが、曲り家である。
感想
本作は、ある漢方薬の副作用で、最愛の母を失った男の、復讐劇である。最愛の母を失った哀しい男の背景を知れば知るほど、今回の犯行に対する見方、犯人に対する感情が変わってくるはずである。
この背景には、西洋医学と東洋医学の対比があり、現代の主流である、西洋医学による製薬に、疑問をもった男たちの活動があった。
本作には、現代の製薬業界の闇ともいえる部分に詳しくメスが入れられおり、漢方についての詳しい説明もある。現代の”薬”を取り巻く環境や問題のあらすじについて、ざっと学ぶことができる。
では、タイトルにある「遠野伝説」がどう関わってくるのか?それは、本作を読んでもらいたい。
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