初版発行日 1997年11月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
関係者、全員偽物。十津川、キャリア最大の怪事件を解く!
関係者、全員偽物。十津川、キャリア最大の怪事件を解く!
あらすじ
伊豆下田の旅館から、会社社長で有田という名前の男が、五百万円入りのボストンバッグを残したまま失踪した。二日後、有田の娘を名乗る女性が旅館に現れるも、その後訪ねてきた甥は、有田に娘はいないという。しかし、この甥も実は偽者と判明。次々と偽者が現れる怪事件に、十津川はどう立ち向かうのか?
小説の目次
- 旅館の客
- ニセ刑事
- 被害者の謎
- 第二の犠牲者
- あるホステス
- 身元判明
- 三年前の火事
- 敵と味方
- 友人の死
- PPM
- 駆け引き
- 壁
- アタック
- 山泣き叫ぶ
- 暗い終章
冒頭の文
その客は、年齢五十二、三歳、物静かで、東京に本社のある有田工業株式会社の取締役社長で、有田剛と、宿帳には、記入した。
小説に登場した舞台
- 田牛海水浴場(静岡県下田市)
- 隅田公園(東京都墨田区)
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 下呂駅(岐阜県下呂市)
- 下呂温泉(岐阜県下呂市)
- 伊豆高原駅(静岡県伊東市)
- 石廊崎(静岡県・南伊豆町)
- 伊豆長岡温泉 (静岡県伊豆の国市)
- 天城温泉郷(静岡県伊豆市)
- 旧天城トンネル(静岡県伊豆市)
- 赤湯駅(山形県南陽市)
- 赤湯温泉(山形県南陽市)
- 天童温泉(山形県天童市)
- 伊豆急下田駅(静岡県下田市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 三浦:
静岡県警の警部。 - 中村:
警視庁捜査四課の警部。 - 吉田:
警視庁捜査四課の刑事。 - 小沢:
山形県警の警部。 - 田口:
科研の技官。 - 田島:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
事件関係者
- 有田剛:
「有田工業」の社長。渋谷区松濤に在住。3年前、有田徳之助の養子になる。以前は、古川という名字で米田代議士の個人秘書だった。 - 沢田:
有田剛の個人秘書。人材派遣会社「PPM」の社員。元N組の組員。 - 黒崎勇:
40歳。私立探偵。四谷三丁目のマンションに在住。元岸和田署の巡査。大阪・岸和田の生まれ。 - 有田美花:
21歳。静岡にあるM大学の三年生。渋谷区神山町のマンションに在住。隅田川に溺死体となって発見された。 - 高田匡:
31歳。N商事に勤務。有田剛の甥。 - 広沢琢二:
S証券の営業部長。有田剛の大学時代の友人。成城学園のマンションに在住。石廊崎の入江で水死体となって発見された。 - 片山かおり:
伊豆高原のマンションに在住。有田徳之助の遠い親戚。伊豆の山中で死体となって発見された。 - 吉永貞郎:
四谷に事務所をかまえる弁護士。有田工業の顧問弁護士。 - 米田:
代議士。元通産省の事務次官で元国務大臣。 - 三宅隆一郎:
53歳。かつて有田徳之助の秘書課長をしていた。阿佐ヶ谷のマンションに在住。田牛海水浴場で死体となって発見された。 - 石原亮:
有田工業の秘書課の社員をしていた。大島出身。 - 並木修:
53歳。中野でレストランを営む。三宅隆一郎の大学時代の同級生。 - 久本善一郎:
60歳。人材派遣会社「PPM」の社長。元警察官。 - 木村良:
28歳。人材派遣会社「PPM」の社員。N組の組員。 - 戸井五郎:
26歳。人材派遣会社「PPM」の社員。N組の組員。 - 加賀進:
25歳。人材派遣会社「PPM」の社員。N組の組員。 - 寺田豊:
人材派遣会社「PPM」の社員。N組の準構成員。池袋のマンションに在住。 - 笹原晋作:
N組の組長。 - 有田徳之助:
「有田工業」の前社長。3年前の火事で焼死する。 - 有田文子:
有田徳之助の妻。3年前の火事で焼死する。
その他の登場人物
- 中井きみ子:
下田にある「斉木旅館」の女将。 - 小菊:
下田温泉の芸者。 - ひな子:
下田温泉の芸者。 - 加東シゲ子:
62歳。有田剛の家政婦。黒崎勇の叔母。大阪・岸和田の生まれ。 - 山下:
下田タクシーの運転手。 - 日野ますみ:
28歳。新宿のクラブ「麗花」のホステス。 - 寺田幸夫:
寺田豊の弟。 - 佐伯まり:
16歳。病死した佐伯浩弁護士の娘。 - 牧野:
下田のO観光タクシーの運転手。
印象に残った名言、名表現
なし。
感想
本作は、企業の乗っ取りと、社長夫妻の遺産の略奪が背後にある、連続殺人事件である。
事件の前半は、”ニセモノ”と”ホンモノ”が登場し、人間関係がまったくつかめない。だから、事件の全体像が見えないのである。とにかく至極難解な状況だった。
この難事件を解決するのが十津川班ということになるが、今回ほどの難事件も珍しく、今回ばかりは十津川警部も苦戦を強いられた。
魅力的な謎、物語全体にただよう緊張感、そして、ラストの怒涛な展開。結末は、完全に解決したわけではなく、少しモヤモヤが残ってしまうものだったが、余韻を残すという意味では、この終わり方もありだと私は思う。
本作は、十津川警部シリーズ史上、最大の難事件の一つなのは間違いない。ぜひ、読んでもらいたい。
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