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「十津川警部 みちのくで苦悩する」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

十津川警部みちのくで苦悩する小説

初版発行日 1999年4月15日
発行出版社 講談社
スタイル 短編集

POINT】
十津川警部シリーズの中でも上位に入る「十津川警部 みちのくで苦悩する」、「北への殺人ルート」を含む、全4編のトラベル推理集。
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あらすじ

1.十津川警部 みちのくで苦悩する

山形市内でホステスが殺害された。容疑者は山形県警の警部。だが彼は、若い女性に薬物を嗅がされて気を失っていたと無実を主張。しかも、それは十津川警部に電話で呼び出され、山形駅へ向かう途中だったと言うのだ。不可解な電話の真相とは?

2.北への殺人ルート

大晦日、東京駅八重洲口から青森へ向かう高速バスに、ポルシェに乗った謎の男が現れる。男から呼び出された井崎勇は銃で射殺された。薬莢から昨年10月に発生した青葉城跡殺人事件と同一犯の可能性が浮上。その裏には悪徳金融グループと暴力団の影が。

3.蘇る過去

十津川警部宛に大学時代に交際していた女から封書が届く。そこには、彼女の写真が入っていた。その後、上野公園で身元不明の遺体が見つかる。元夫を重要参考人として捜査をしていたが、第二の事件が発生。捜査は難航を極めたが、意外な展開を迎える。

4.冬の殺人

西本刑事の大学時代の友人、本多悟が京都で行方不明になった。西本は2日間の休暇をとり、本多悟の恋人・白井みずえとともに、京都で彼の行方を探す。京都で2件の殺人事件が発生。被害者には本多悟との関係を示す物品が残されていた。捜査を続ける中、ひとりの女性が捜査線上に浮かび上がる。

小説に登場した舞台

1.十津川警部 みちのくで苦悩する

  • 霞城公園(山形県山形市)
  • 三日町(山形県山形市)
  • 宝珠山立石寺(山形県山形市)
  • 立石寺 五大堂(山形県山形市)

2.北への殺人ルート

  • 東京駅八重洲口(東京都千代田区)
  • 白河インターチェンジ(福島県・西郷村)
  • 繋温泉(岩手県盛岡市)
  • 御所湖(岩手県盛岡市)
  • 法泉寺(岩手県盛岡市)

3.蘇る過去

  • 上野公園(東京都台東区)
  • 丸子橋ゴルフ練習場(神奈川県川崎市中原区)
  • 富津海岸(千葉県富津市)
  • 館山(千葉県館山市)

4.冬の殺人

  • 京都駅(京都市下京区)
  • 渡月橋(京都市右京区)
  • 祇園(京都市東山区)
  • 鞍馬寺(京都市右京区)
  • 白川にかかる新橋(京都市東山区)
  • 石塀小路(京都市東山区)
  • 鴨川公園(京都市北区)

登場人物

1.十津川警部 みちのくで苦悩する

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 木村:
    山形県警の捜査一課長。
  • 三浦:
    山形県警の警部。45歳。広田ゆみ殺害容疑がかけられている。
  • 広田ゆみ:
    山形市内のクラブ「ミラージュ」のホステス。25歳。車の中で何者かに殺されていた。
  • 吉田:
    28歳。山形県警の刑事。
  • 黒川信介:
    2年前、警視庁と山形県警の合同捜査で逮捕された男。
  • 三木:
    宮城刑務所の副所長。
  • 野平:
    黒川信介を弁護した弁護士。
  • 黒川みどり:
    25歳。黒川信介が逮捕された後に認知した娘。
  • 近藤秀:
    黒川信介の事件で唯一殺されなかった男。山形市内に住む。
  • 沖みや子:
    26歳。山形市内のクラブのホステス。近藤秀の彼女。

2.北への殺人ルート

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 田中大輔:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。
  • 井崎勇:
    フリーター。青森に向かう高速バスに乗車中、何者かに呼び出されて射殺される。
  • 小野みゆき:
    井崎勇の彼女。現在、行方不明。
  • 片桐重次:
    去年10月の青葉城跡殺害事件の被害者。
  • 片桐しおり:
    片桐重次の妻。現在、行方不明。
  • 中村:
    警視庁捜査四課の警部。十津川の同期。
  • 堀江隆:
    42歳。井崎勇が働いていたクラブ「イエスタディ」のオーナー。
  • 佐伯宏司:
    K組の組員。
  • 林田勇一郎:
    元K組の組員。
  • 仁村信吉:
    46歳。石神井公園駅前のフランス料理店「ボンソワール」のオーナー。
  • 吉田:
    警視庁捜査四課の刑事。K組を担当している。
  • 原利夫:
    K組の組員。
  • 井上健:
    K組の組員。

3.蘇る過去

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。
  • 中村:
    警視庁初動捜査班の警部。
  • 角田美津子:
    旧姓・笹本美津子。十津川が大学時代に交際していた女性。
  • 入江:
    N銀行渋谷支店の支店長。十津川の大学時代の同級生。
  • 角田正三:
    角田美津子の元夫。銀座で建築コンサルタントをしている。
  • 木村保子:
    テレビ局のプロデューサー。十津川の同級生。
  • 井上:
    角田正三の事務所で働く設計士。
  • 八木:
    千葉県警の警部。
  • 御手洗誠也:
    60歳。自称写真家。親の莫大な遺産を得た資産家。館山に住む。
  • 古川恵理子:
    39歳。御手洗誠也の彼女。
  • 崎田:
    千葉県警の警部。
  • 林悦子:
    36歳。出版社で働いていた。
  • 有田:
    御手洗のお抱えパイロット。

4.冬の殺人

  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 本田悟:
    西本の大学時代の友人。「月刊日本」社で働いている。
  • 白井みずえ:
    本田悟の恋人。
  • 田島:
    「月刊日本」社の編集長。
  • 井上:
    京都府警の刑事。
  • 辻村喬:
    26歳。トラックの運転手。
  • 小林恵太:
    「月刊日本」社のベテラン記者。42歳。
  • 坂田健:
    15歳。若い男に頼まれて、本田悟名義口座のお金100万円をおろした。
  • 森中:
    タクシー運転手。
  • 山尾一郎:
    辻村喬と一緒にトラックの運転手をしていた。
  • 佐野可奈子:
    池袋のクラブ「たつえ」の美人ホステス。
  • 小菊:
    佐野可奈子の叔母。石塀小路のスナック「小菊」のママ。
  • 原卓夫:
    スナック「小菊」のバーテン。
  • 立花:
    京都府警捜査一課の警部。

印象に残った名言、名表現

(1)東北新幹線で東京から山形に向かう新幹線の中で、十津川警部がみた車窓からの雪景色。

眼をさますと、窓の外の闇に、白いものが、舞っていた。粉雪が降っているのだ。眼をこらすと、一面の雪景色である。東京は、春だったが、東北には、まだ、冬が、居残っていたのだ。

(2)静まり返った夜の山寺。そこにかかる月明かり。これから何かが始まることを予感させる。

すでに、とっぷりと、夜の暗さが、支配している。月明かりが、ぼんやりと、寺の姿を、浮びあがらせていた。

(3)事件の捜査で年越しする刑事の悲壮。

三上本部長の差入れの年越そばと、お餅が、運ばれてきた。誰かが、ラジオのスイッチを入れた。アナウンサーの言葉があって、浅草寺の除夜の鐘の音が、ラジオから、流れてきた。

(4)東京の人間で帰郷を経験したことがない十津川が、亀井に、年末に帰郷する気分を聞いたときの亀井の言葉。

「若い時には、甘い感じでしたね。友人にも会えるし、母親にも甘えられるし。年を取ってから、ほろ苦い感じになりましたが」

(5)冬の京都。粉雪が舞う中、パトカーがスピードを上げて走る。事態が切迫した様子が現れている。

粉雪が、風に飛ばされている。パトカーが、スピードをあげると、粉雪は、猛烈な勢いで、フロントガラスに、ぶつかってくる。

総評

本作は、4つの短編集である。

「十津川警部 みちのくで苦悩する」は、山形が舞台、2年前の事件が発端となる復讐劇である。最後は誰もが納得し感動する締めくくりとなった。

「北への殺人ルート」は、岩手、福島が舞台、悪徳金融グループの保険金目当ての殺人事件。冷酷非情な殺人犯の片すみに亡き母親への一途な愛が感じられる秀作。

「甦る過去」は、千葉の館山が舞台。十津川警部の”甘い過去”と、大学時代の彼女・角田美津子の”甘美な過去”が、同時に蘇った連続殺人事件。

「冬の殺人」は、京都が舞台。西本刑事が主役の不条理殺人である。

いずれも、人間という不可解な存在に対する深い洞察が生み出したミステリーであるが、なかでも「十津川警部 みちのくで苦悩する」と「北への殺人ルート」は、美しい情景と、愛がかさなる傑作である。

この2作品だけでも、お値段以上の価値があるだろう。

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