初版発行日 1987年3月1日
発行出版社 文藝春秋
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
誰が?なぜ殺人は止まらないのか?十津川警部は、もつれた過去の因縁の糸を丹念に解きほぐす!
誰が?なぜ殺人は止まらないのか?十津川警部は、もつれた過去の因縁の糸を丹念に解きほぐす!
あらすじ
大学時代の同人誌仲間・阿部からの誘いに応じ、矢代と妻の由紀は原だとそのフィアンセとともに、五年ぶりに水戸を訪れた。意外にも阿部は、やはり同人だった木下みどりと結婚していた。東北の温泉巡りをかねた旅が飯坂、天童とすすむにつれ、なぜか仲間が殺されてゆく。卒業後五年の歳月はそれぞれに何をもたらしたのか?
小説の目次
- 五年の歳月
- 飯坂温泉
- 東京
- 天童温泉
- 王将風呂
- 推理合戦
- 疑惑の中で
- 帰京のあと
- 置手紙
- 解明への旅
- 逮捕状
- 日記
冒頭の文
その手紙を受け取った時、矢代はしばらく考えた末、出かけることにした。
小説に登場した舞台
- 上野駅(東京都台東区)
- 特急「ひたち23号」
- 水戸駅(茨城県水戸市)
- 偕楽園(茨城県水戸市)
- 弘道館(茨城県水戸市)
- 古徳沼(茨城県那珂市)
- 磐城石川駅(福島県・石川町)
- 郡山駅(福島県郡山市)
- 福島駅(福島県福島市)
- 飯坂温泉(福島県福島市)
- 特急「つばさ11号」
- 天童温泉(山形県天童市)
- 天童駅(山形県天童市)
- 天童公園(山形県天童市)
- 天童民芸館(山形県天童市)
- 特急「ひたち17号」
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 岡崎:
福島県警の刑事。 - 戸田:
福島県警の警部。 - 吉井:
山形県警の刑事。 - 中村:
山形県警の警部。
事件関係者
- 矢代:
銀行員。東中野のマンションに在住。大学時代、同人雑誌「東海砂丘」のメンバーだった。 - 矢代由紀:
矢代の妻。大学時代、同人雑誌「東海砂丘」のメンバーだった。飯坂温泉の十綱橋近くで死体となって発見された。 - 原田:
27歳。大学時代、同人雑誌「東海砂丘」のメンバーだった。天童温泉の王将風呂で死体となって発見された。 - 加藤敬子:
27歳。原田の婚約者。石神井に在住。北千住近くの荒川放水路で死体となって発見された。 - 田村明人:
世田谷区烏山のマンションに在住。横浜伊勢佐木町で食堂を営んでいたが失敗して店を畳んだ。大学時代、同人雑誌「東海砂丘」のメンバーだった。天童公園で死体となって発見された。 - 阿部:
水戸市内にある喫茶店「アカプルコ」を営む。大学時代、同人雑誌「東海砂丘」のメンバーだったが、傲慢な行動をとっていたため、除名された。 - 阿部みどり:
作家。阿部の妻。大学時代、同人雑誌「東海砂丘」のメンバーだった。
その他の登場人物
- 鈴木:
烏山の信用金庫に勤める男。 - 池西文子:
矢代由紀の母親。 - 金子茂:
水戸市内にある文具店の店主。「東海砂丘」メンバーたちの同級生。 - 及川ゆう子:
水戸市内に住む主婦。「東海砂丘」メンバーたちの同級生。 - 川井:
精神科医。
感想
本作は、一般的な十津川警部シリーズのタッチとは違う作品である。だが、得体の知れない恐怖と、限られた人間の中から、真犯人が誰か?と想像しながら読める、ある意味、ミステリーの王道ともいえる作品だったといえる。
7人の男女が飯坂温泉や天童温泉にでかける。この7人が次々と殺されていく。犯人は7人の中の誰かしかありえないのだから、一人減るたびに、残りのメンバーへの疑いが濃くなっていく。
残り少なくなった終盤では、残りのメンバーの誰も犯人ではなくなってしまうのではないか?という状態に陥る。
もちろん、真犯人はいるのだが、意表をつかれるし、その動機も不気味なものであった。
本作は十津川警部シリーズらしくない作品ではあるが、ミステリー作品らしい傑作であり、西村京太郎先生の幅広い才能を示した作品でもあった。
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